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千島海溝の地震観測(満澤 巨彦編) [varied experts]

写真1_ホカケダラ属_千島海溝南部.jpg 写真2_シロウリガイ.jpg 写真3_リップルマーク.jpg
千島海溝は、千島・カムチャツカ海溝とも言うそうですが、カムチャツカ半島から千島列島、そして北海道の南東にかけて北東・南西方向に連なっている海溝。
釧路の沖がほぼ南西の端になるそうです。「今回少し調べてわかったのですが、世界で6番目に深い海溝で、一番深い水深は9550m。
長さについては2200kmで、こちらは私の方で調べたのですが6番目に長い海溝でした。日本周辺の海溝では一番長い海溝になります。」
深さについては釧路の沖では水深7000mを超える位。もし、海水がなければ7000mの深さの谷が南側にひろがっていることになるということ。
地震観測について。東海沖から四国沖にかけて続いている南海トラフには、DONETと呼ばれる海底ケーブルを使ったノードと呼ばれるコンセントの様なものを
海底に設置した観測システムが敷設されていて、ノードを起点に装置を追加したり交換したり、また海底地震計を埋設し高感度な観測を実現しています。
一方で、釧路沖の千島海溝、具体的には千島海溝の南部から日本海溝の房総沖にかけては、S-netと呼ばれるこちらも海底ケーブルを使った海底地震計、水圧計が
敷設されています。S-netの海底地震計は海底ケーブルに組み込まれているタイプで海底に置かれている状態で観測をしています。これは従来の方法で、地震が発生した際にいち早く沖合で観測することで、緊急地震速報や津波警報等に活用することに重点が置かれて敷設され、活用されていいます。
いずれのシステムもつくばにある防災科学技術研究所が運用し、観測データは気象庁に送られ緊急地震速報等に活用されているのです。
ところが、千島海溝、日本海溝は、南海トラフに比べ、広域で、水深が深いということで、DONETの海域とは異なり、海底での作業については
特に水深による制約を受けることになるそう。南海トラフの水深は深いところでは4000mから4500mぐらいなのに対して、千島海溝の南部、日本海溝は深いところで
7000mから8000mほどあるそうです。現在、日本ではJAMSTECを含めて海底で作業ができる無人探査機の潜航能力は水深4500mまでで、それより深い場所での作業を
行う無人探査機はがないのです。以前は10000m級の無人探査機があったそうですが現状は4500mまでと以前に比べて後退してしまったとおっしゃっていました。
有人調査船の「しんかい6500」は現役で活躍中ですが、研究目的の試料採取や観察が中心で、海底で大型の機器を設置したり接続したりする作業は無人探査機が主流。
深海へのアクセス能力についてネガティブな話でしたが、一方で、千島海溝域において、調査船による調査についてここ数年は従来に増して重点的に行われているそう。
これから夏にかけて、釧路沖の千島海溝から日本海溝にかけて海底下構造を調査する構造探査が「かいめい」で計画されているそうです。
海底の微細な動きを長期的に測定する海底音響測距と呼ばれる観測も予定されていとか・・・。海底下の構造探査は、地震が発生した際の震源がどのような場所なのか、
断層のようなものがあるのかなどを把握することや、今後どのような地震が発生するのかを予測するためのモデルに必要なデータになります。
このため今年はすでに4月に釧路沖200kmから200kmの千島海溝南部の主には陸側の斜面に約100台の海底地震計を設置していて、5月末から6月にかけて
「かいめい」による構造探査が予定されていると。また、海底の地殻変動を長期的に測ることを目的とした海底音響測距という観測が
釧路沖の千島海溝南部から茨城沖の日本海溝にかけて5月以降に予定されているそうです。
※尚、写真は JAMSTEC 満澤巨彦氏からお借りしました。
・写真は、千島海溝南部の深海で「しんかい6500」の潜航で撮影された生物等(ホカケダラ属・シロウリガイ・リップルマーク)

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