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ストーリーからおう〜春の羽衣(中西 紗織編) [varied experts]

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「初めて能を観る人にすすめたい能ランキング」というのがあるなら、必ず上位に入る能。
物語には色々なバージョンがあり、天界から降りてきた天女が人間と結婚するという内容もありますが、能では、地上に降りてきた天女が三保の松原の美しい風景にひかれて、羽衣を松の木にかけて水浴びをしていると、漁師が家宝にしようとその衣を持って帰ろうとする。天女は「その衣がなければ私は天界に帰ることができません」と言って泣くので、漁師が衣を返すと、天女は羽衣をまとい、有名な天女の舞を見せながら空高く舞い上がり「霞に紛れて失せにけり」という結末です。
富士山を背景とした春の三保の松原の美しい風景の中に、この世のものとは思えない美しい天女が天の羽衣をまとって現れ、人間たちとほんのひと時会話を交わし、天女の舞を舞いながら天上世界へ帰っていくという物語。空と海と富士山という壮大なスケールの絶景の中に、天女が舞い飛び、やがて見えなくなってしまう。。。春のこの時期に観たい能。

能《羽衣》 作者不詳
登場人物・・・シテ:天女 ワキ:白龍という名の漁師 ワキツレ:白龍の仲間の漁師
場所・・・・・駿河の国 三保の松原(現在の静岡県静岡市清水区三保)
     「富士山世界文化遺産構成資産」(ユネスコ世界遺産2013年登録)の一つ 
季節・・・・・三月
曲柄・・・・・三番目
作り物・・・・松の木 松の枝に美しい衣(長絹という装束)がかけてある
●雨があがった朝霞の浦、白龍たちが漁を終えて陸にあがると、「虚空に花降り、音楽きこえ、霊香四方に薫ず」と詞章にあるので、空から花が降り、音楽が聴こえ、
よい香りが辺り一面に香っているという。天人が現れる時によくこのような描写がされる。それで、白龍が、ふと松の枝を見るとこの世のものとは思えない、
輝くような美しい衣がかけてある。白龍は持ち帰って家の宝にしようと思うと、
●「なう、その衣は此方のにて候」それは私の衣ですと呼びかける声がする。白龍は、これは拾った衣だと言う。水浴びをしていた女が、それはたやすく人間に与えるようなものではないので元の通りに戻すように言うので、白龍は、なんとこれは天女の衣かと気づき、返そうとしない。天女が、それがなければ飛ぶこともできず、天上界に帰ることもできないと泣くので、白龍はかわいそうに思い返すことにする。
●白龍は、衣を返すかわりに有名な天人の舞楽を所望する。天女が喜ぶ姿を見て、白龍は、この衣を返したら舞を舞わずに天に帰ってしまうのではないかと疑う。
すると「いや疑いは人間にあり。天に偽りなきものを」白龍は疑ったことを恥じ、衣を天女に返す。
●「春霞たなびきにけり久方の 月の桂の花や咲く」 詞章にも美しい言葉がたくさんちりばめられている。四季折々の景色の美しいこの三保の松原でもとりわけ美しく
のどかな春の浦に、天の羽衣をまとった天女が舞うと、「笙笛琴箜篌(しょうちゃくきんくご)」による音楽があたりに響きわたり、「落日の紅は蘇命路の山をうつして」夕陽が富士の高嶺を染めて、辺りはますます美しく妙なる空気に満ち満ちる。
●最後の見せ場 シテの序ノ舞 天女の願い・祝福・視点の面白さ
天女は地上にたくさんの宝を降らし、国土安穏と人々の幸せを願いつつ、富士の高嶺のさらに遠くの空高く昇っていく。だんだんとその姿がかすかになり、ついに空の霞に紛れて見えなくなった。地上からは、白龍たちはずっと空を眺めていつまでも見送っていた。
「最後の場面で、天女はまたたく間に富士の高嶺までビューっと飛び上がり、そこから地上を見ている、そういうスケールというか、空間の感覚・距離感のようなものが
ある・・という様なことを私の能の師匠がおっしゃっていました。人間の力では及ばない、人間の感覚を超越した時空間というのか、そんな面白さもこの能にはあるのではないかと思います。そしてまた、「天に偽りなきものを」と天女が言う。人間界には「偽り」があります。人間は嘘もつくし、人をだましたり、ねたんだり憎んだりする面もあるけれど、どこまでも純粋で嘘偽りのない、天人の様な曇りない、美しい心を持って生きたいものだ、という願いのようなものも・・この能から感じるのです。」


2022.0513 O.A 「釧路のファーストインプレッション」 [varied stories]

逸見光寿さん(写真家)
https://coju.info/

この春、釧路に引越していらした逸見氏。今まで全国のいろいろなところで暮らしてきたそうで、今回でご自身19か所目の生活拠点になるそうです。
「家はシービュー。海が見える幸せを毎日感じています。」と嬉しそう。
「旅するように暮らす」がコンセプトということで、よそ者の視点が大事とおっしゃいます。
釧路は道東一円のアクセスがとても良く、十勝やオホーツクにも行きやすく、根室にも2時間ほどで行けると喜んでいらっしゃいました。
「引越し疲れを癒すために、足寄町にある秘湯、芽登温泉に行ったのですが、2時間ぐらいで行けたんです。最高ですね。」
根室から来ると、お店の多さ、営業時間の長さを感じ、選択肢の多さも気に入っているみたいです。
根室にいらっしゃった時はほぼ徒歩で暮らすことが多く、釧路にいらしてからは移動の基本が車になったので、健康のため朝夕に散歩をするコースを開拓しているそう。
今歩いているのは、幣舞橋周辺と、米町~釧路港あたり。幣舞橋周辺は歩道が広く、信号がないので歩きやすく、
末広に脱線して、お店をチェックして歩くのも楽しいと・・・。
「釧路川沿いの街灯は、オレンジ色の光を放つ従来のナトリウム灯なのが良いですね。川の流れるヨーロッパの街の雰囲気があるし・・・。
夜になってもカモメがいて、根室と違い近付いてもすぐには逃げないんですよ。」また、釧路の霧も素晴らしく見たくないものが隠れる良さもあると。
よそ者目線で見た釧路をどう切り取られるのか・・今から楽しみです。
※写真は逸見光寿氏からお借りしました。
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