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2024.0327 O.A 杉元内科医院 院長 杉元重治氏 [close to you <dr.編>]

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土曜日の午後と日曜、祝祭日の医療体制がかわる・・と以前からお話しを伺っていましたが、具体的に8月からという数字が新聞に載っていたので、
お話しを伺いました。
現在は、内科・小児科が輪番制で行なっている土曜日の午後と休日等の二中の医療体制。それを維持することが難しくなってきたのです。
もちろん他の業界でも言われているスタッフ不足が大きくその背景にはあるそうですが、他にも開業医の高齢化、医療関係者の働き方改革等・・・。
50年以上も前から釧路ではこのような医療体制を行ってきたのですが、それも市民の方々の医療を守るために作られた釧路のルールだったのです。
私たち市民はそれが当たり前と思っていたのですが、様々な方の思いや努力等があってのことだったのです。それを忘れてはならないと感じました。
8月以降の件ですが、現在、住吉2丁目にある夜間急病センターに集約されるそうです。
「本当に具合の悪い方をトリアージする場所になると思います。急ぐ必要があるのか?ないのか?それを見極めるということ。今までのように休日しか病院にいけないから・・・とか、証明書が欲しいのでという方はお断りすることになるのだと思います。」
日中の診療は土曜日が午後2時から午後5時まで(現状より1時間早くなります。)
日曜・祝日は午前9時から午後5時まで。
「僕たちも人間なので、高齢の先生が休日診療で夜遅くまで診るということが続くとやはり人間なので疲弊するのです。」
先生が倒れてしまっては元も子もありません。
本来の意味、原点回帰と言われていましたが、本当に調子の悪い方、具合の悪い方を救うためにも必要なことだと思いました。

2024.0320 O.A 釧路保健所 所長 石井安彦氏 [close to you <dr.編>]

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最近、テレビ・新聞等で話題になっている「はしか(麻疹)」のこと。釧路ではどんな感じなのでしょう?気になってお応えいただきました。
厚労省のhpには、はしか(麻疹)は麻疹ウイルスによって引き起こされる急性の全身感染症と。
感染経路は空気感染・飛沫感染・接触感染。その感染力は非常に強いようです。
感染すると、それから約10日後くらいに、最初は風邪の症状が続くそう。発熱やせき、鼻水といった感じです。
2~3日、熱が続き、その後39度以上の高熱と発疹が現れるとのこと。
感染力が強いので、例えによってはインフルエンザの10倍と言われることもあるそうです。
合併症を引き起こすこともあり、稀にですが、死亡することもある、決して侮ることのできない病気なのです。
やはり感染しないためにはワクチンが有効とのこと。年代によって1回打ったとか、2回終わったとか、1回も打っていないという方がいらっしゃると思います。
基本的には現在は1歳と6歳の時に1回ずつワクチン接種をすることが良いとおっしゃっていました。
自分がワクチンを打ったかどうかわからないという方は母子手帳を見てくださいと・・・。
そこに記入している場合があります。もしくは親に聞いてみてとも。
それでもわからない場合は血液検査で抗体検査もできるそうです。本当に気になったらそのような方法もあるそうです。
さて、もしかしたら自分が感染したかもしれない・・・いつもの風邪と違う・・・と思ったら、すぐに病院には行かずに、まずは電話でかかりつけ医に相談するのが良いようです。万が一、麻疹にかかっていたら病院に行くことで他の方にもうつしてしまう可能性があるからです。
ちなみにインフルエンザやcovid19のような薬はなく、麻疹は対症療法しかないそうです。
「ワクチンは愛なんです。感染対策は愛です。」とおっしゃっていたのですが、確かに誰かにうつさない、ウイルスから守るためにはワクチンを接種するのが唯一の方法なのだと思います。

2024.0313 O.A 釧路労災病院 院長代理 小笠原和宏氏 [close to you <dr.編>]

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毎年、年に一度開催される患者満足度調査。全国にある30くらいの労災病院関連施設で行われるそうですが、結果が良くなかった・・・と。
約60くらいの質問を200~300人を対象に実施。その結果、去年と比べると接遇面の評価が良くなかったそう。「労災病院の接遇が悪くなったというよりは、忙しくて一時的に患者さんに申し訳ないことをしたのかな?という風に感じて、そうであってほしいと願っています。」と。ほかの高い技術で安心できる医療していますか?というような質問では結構高い評価を受けていたようだとおっしゃっていました。医療の質そのものは決しておとさない。良質な医療を地域の患者さんに提供しているという自信はあるのですが、そのためにはもちろん人も大事ですが、設備投資も大事。
小笠原氏が計画して実行したその中の一つにHCU(ハイ・ケア・ユニット)があります。ICUは集中治療室、HCUは高度治療室。ICUほど生命に関わる危険な患者さんを診るのではなく、手術直後の患者さんやより慎重に観察しなければならない患者さんを診る感じと・・・。そして自分の足で歩けるようになったら一般病棟に戻るという、そのような一時的に重傷の患者さんを診る治療室がHCU。今まではなかったので、手術が終わった患者さんは麻酔から醒めてまだボーッとしている状態で一般病棟に帰ってきて、ナースステーションの近くにある個室に入ってもらっていたそうです。
大きな病院の中にはICUもHCUもある病院もあるそうです。その労災病院のHCUは5月初旬には動き出しそうな感じとおっしゃっていました。
そして、もう一つ、構想から実際に運営開始したのが緩和ケア病棟。まず、入れ物があることによって働く人たちの意識も変わったそうです。
緩和ケア病棟をつくったことは非常に有意義だったと・・・。
緩和ケアはチームで動きます。「この数年間で小田先生のおかげで看護師も薬剤師もリハビリも栄養士も・・・皆、数段スキルが上がっていると思います。
それは何よりも・・病院の財産だと思います。」と嬉しそうに教えてくださいました。

2024.0306 O.A 市立釧路総合病院 DMAT隊 [close to you <dr.編>]

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「令和6年能登半島地震」にDMATとして市立釧路総合病院からは3班が出動なさいました。
現地でどんなことをなさってきたのか?現地で感じたこと、釧路にどう還元することができるのか・・・等々お話しを伺ってきました。
救急科 豊原 隆氏(1班・3班)、救急外来看護師 齊 勝敏氏(3班)、循環器外来看護師 本間 渉氏(3班)、薬剤師 菅野 雄太氏(1班・3班)の4人の方のお話しです。
DMAT、災害医療チームとも言われます。実際に病院や救護所で患者さんの診療をしたりするのがイメージですが、彼らの役割は、病院や避難所等に派遣されるDMATをどう運用していくのかという本部活動をメインになさったそうです。「活動中に被災者の方と触れ合ったりというのはないのですが、そこがうまく機能していないと、実施に病院や避難所とか、被災者の方に生であって行う活動がうまく行かなくなるので、そちらを調整する役割です。」と豊原氏。
DMATは、医師、看護師、業務調整員の3つの職種に分かれていて、それぞれ1〜2人。最低4人くらいで、人数が多い7人くらいで行った班もあるそうです。基本的に医師1人、看護師2人、業務調整員1人というパターンが多いとおっしゃっていました。
震度7の地震だったので、道路の破損状況がひどかったり、建物も倒壊、水道も使えず、被災者の方はそんな大変な中で生活されているんだと思ったそうです。
釧路でも大きな地震と津波がくるリスクが高いと言われているので、能登半島よりもひどい状態になっている可能性があると感じたとおっしゃっていました。
本部はいろいろな地域のいろいろな職種の方、 DMAT、医師会、JMAT、保健師会、日赤等々がいらっしゃったそう。その方たちと話していた中で、意外と津波の被害がそこまででなかったのは、日常的に海辺にいる人たちは津波が来たら高い所にすぐ逃げるという訓練をしていたらしい・・・と。釧路でも津波が来たらどこに逃げるのか・・等、考えるだけではなく、実際に訓練として市民がやっていくのは重要なことだと感じたそう。子供たちだけはなく大人も。街として根付いて習慣化していく事が必要と。釧路の場合、想定されている死者数のほぼ全てが津波なので。
齊氏は、医療従事者のほかに電気会社、水道会社、道路を直している人たち・・・色々な人たちの支援があり現地に到着できたので、そのような人たちの力って偉大だと感じたと。DMATだけではなく、あらゆる職種の人たちが協力して復興・支援を目指しているんだと力強くもあり、驚きもあったと教えてくださいました。
そして、東日本大震災の時にも救護班で活躍なさった本間氏は、災害の怖さをあらためて感じたと。家も潰れていたり、電柱も倒れかけていたり、土砂崩れもあり・・・。普段の生活では皆管理されていて、ここは大丈夫とか危ないとか教えてもらえる。でもそれが手付かずのところがとても多かったので、行くだけでも自分たちは命がけだと体感したとおっしゃっていました。
東日本大震災、胆振東部地震、今回で3回目という菅野氏。東日本大震災の時はDMATが250隊しか派遣されていなかったが、今回は1000隊くらい出ている感じだったと。かなりDMATが活躍する場が広がってきたと感じるそうです。救援に行き、代わりのDMATも来てくれる。北海道の地震の場合は、代わりが来てくれるかどうか・・・。期間がいつまでとわからない状況であれば自分たちの気持ちも落ちていたかもしれないと教えてくださいました。
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印象に残ったのが、トイレが足りない・・水洗トイレがない。一番はそれかな?
そして、トイレカーがすごいと思ったそう。QOLには絶対必要だと。あれは貴重だったとおっしゃっていました。あっても不衛生だったりするので、感染症問題とか様々な健康問題が生じる、行ってみてそれが実はそれがすごく重要なことだと実感したそうです。それから・・・自衛隊のお風呂を体験、すごく良かった。入ってみたら有り難みがすごかったと笑顔で語っていただきました。
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彼らからのメッセージです。
まさか自分が・・・とは思わず、ちゃんと避難すること。自分たちでどこに逃げる等、やった方が絶対によい。あまりに規模が大きすぎて自分のものとして捉えられずに思考停止してしまいがち。でも実際に現実に起こるものとして日頃から避難訓練や災害に備えたグッズ等を準備する。それを浸水するようなところに置かない、とにかく日頃から考えておくのが一番大事。
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そして、それぞれに自分が震災した場合の問題、課題をお聞きしました。
「釧路では発災から10日〜1ヶ月くらいに起こりうることはDMATで今までやってこなかった。でもこの地域では自分たちが関係しなければと感じた。」
「釧路でのイメージがつかない。ただ、道路も大事。橋も多い。どういう道が使えるか。道がないと患者さんも運べない。病院までもアクセス法が課題。」
「医療従事者でありながら被災者という立場で、体調を管理しながら医療に従事する難しさを感じた。」
「市立釧路総合病院は高台にあるので、釧路全体から押し寄せたら全部を診ることができない。それが課題。」
※写真左から、本間氏、菅野氏、齊氏、豊原氏。

2024.0228 O.A 釧路労災病院 緩和ケア内科 小田浩之氏 [close to you <dr.編>]

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釧路にいらして4年半ほど。緩和ケア病棟を小笠原院長代理とともに立ち上げ、ホスピタルアートにも力を入れていらっしゃいました。
このほど労災病院を退職することになり、あらためてですが、緩和ケアについてお話しを伺いました。
釧路労災病院が緩和ケア病棟<れぽふる>で取り組もうとなさってきたことは大きく3つ。
一つは入院期間が長くなっても追い出さない。何かあったらいつでも戻ってくることができる。療養型の病院への転院はさせない。治療が必要であればいつまでいても良い。体調が落ち着き、自宅や施設に戻っても何かあったら365日24時間いつでもベッドを用意する。ターミナル(終着駅)ではなく、ガソリンスタンド。
二つ目は、入院が必要ながん患者さんなら誰でも受け入れる。労災病院にかかっている患者さんでなくても、まだがん治療の半ばの患者さんであっても、痛みや気持ちの辛さなど、入院加療を通じてできることがあれば、できる限り受け入れる。(ただし、ホテル代わり、施設代わりではなく、あくまで病気で入院が必要な場合)
そして、三つ目は、「ありがとう」と言える関係をつくる。実際に運営していくうちにそう感じたとおっしゃっていました。症状が重くなって人の手を借りなければならない状況になっても、「迷惑だから」「こんな風になっては生きている意味がない」ではなく、手を貸す側も借りる側も「お互いさま」「ありがとう」と言い合える平等な立場での治療・療養にあたる。
緩和ケア病棟<れぽふる>の特色は・・・リハビリテーションを全患者で実施したそう。これは専用リハピリスペースは全国でも珍しいそうです。
また、口腔ケアを全患者で実施。そして、ホスピタルアートの実施などがあげられます・。
どの業界でも人材不足が叫ばれますが、緩和ケアの世界も同じとのこと。
北海道の現状としては、日本緩和医療学会専門医・認定医の数は、全国で1367名、うち北海道は54名。
北海道専門医・認定医の所属ですが、がん診療連携拠点病院 8/21施設(専門には3人のみ)緩和ケア病棟 14/25施設。
最近は緩和医療の専門医が育っていないのが現状とのこと。道東緩和ケア人材不足の深刻化には、そもそも全道的な緩和医療医の不足と高齢化があるそうです。
他の業界の人材不足と同じです。「多分、それぞれの病院で、道内の緩和ケア医を取り合っても解決策にはならないと思います。育てることを考える、あるいは人材がいなくても回るシステムを考える時期なのだと思います。」
さて、10月12日&13日に札幌コンベンションセンターで「第47回日本 死の臨床研究会 年次大会」が開催されます。こちらに関わっていらっしゃる小田氏。学会ではないので、一般の方も参加し、いろいろな話を聞いたり、お話ししたりできるそうです。ホスピタルアートもなさるそうです。
テーマは<つらさやかなしさを持つ人々と共に歩む>近くなりましたら、またお話しを伺うことを約束し今回の結びとなりました。

2024.0221 O.A 杉元内科医院 院長 杉元重治氏 [close to you <dr.編>]

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まずは先月、十勝で在宅医療に関する講演会をなさったということで、そのお話しから。帯広で在宅医療をなさっている酒井氏の主催で、富山から佐藤氏、そして釧路から杉元氏が呼ばれ「とかち帯広の在宅医療と街づくり」というテーマで開催されたそうです。その中で気になったタイトルが「街づくりと医療介護は繋がるか?」という佐藤氏の講演。昔から在宅医療のことに取り組まれ、実際に現在、富山県砺波市でご自身のものがたり診療所という診療所を取り囲むように一つのマチを、コミュニティを自ら作られ、実践なさっている方だそうです。その中で畑を耕したり、お店をやったり。「10年前にやるっておっしゃっていて、それを実現なさったので、一度視察に行かなくては・・・と思っています。」そこで暮らしている方は高齢者が圧倒的に多いそう。そこに住んでいる方々、それぞれに役割があったり、マチを盛り上げるための何かがあったり・・・もう少しお聞きしたいと感じた内容だったそうです。実は佐藤氏は救急医療をなさっていたそうで、高齢者人口が多くなる中で、救える命と救えない命があると感じた時に、命は救えないけれど、いのちを紡ぐ、後世に想いとして残すというのがありではないかと考えたそうです。
さて、3月2日、釧路ではCCLが市民公開講座を開催するとのことで、詳しいお話しをしていただきました。
「ACP」と聞くと?と思う方もいらっしゃるのではないでしょうか。人生の最期まで尊厳を尊重した生き方を支えるACP。いつ訪れるかわからない人生の最終段階に備え、本人を主人公として、家族や近しい人、医療・ケアチーム等が繰り返し話し合うことを言います。自分らしく生きることを支える取り組みでもあります。
ですから年齢関係なく、様々な方にお聞きいただきたいと杉元氏はおっしゃっていました。
※なお、撮影のため Dr.MaayaのTシャツを着てスタジオに入ってくださいました。
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市民公開講座「幸せな人生とACP」
講師:金城隆展氏(琉球大学病院 臨床倫理士)
2024年3月2日(土)15:30〜17:30 入場無料(定員200名)
釧路市生涯学習センター まなぼっと幣舞 2F多目的ホール
入場無料・事前申し込み(二次元バーコードから・・)
問い合わせ:ccl.20180906@gmail.com

2024.0214 O.A 市立釧路総合病院 院長 森田研氏 [close to you <dr.編>]

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今回はいよいよ始まる新病院の建築予定についてのお話しです。
今年の夏以降に、現在の正面駐車場に病院が建築開始されます。完成予定は3年後。ですからその頃の医療受給を目指した細かな計画の修正が必要になる可能性があるとのこと。お話しはあくまで現時点での予定です。
・救急外来で全ての検査が完了出来るよう現在のCTだけでなく、MRIや血管造影も配備(重症患者に対するハイブリッドERの計画)
・入院が予定される方の外来手続きや薬の管理・事前準備や検査・事前説明・文書作成が1箇所で完結。(総合患者支援センターの設置)
・外来の診療科間の区別を無くし混雑する科に臨機応変にスタッフ移動を可能に。(外来フリーアドレス化)
・外来の点滴ベッドや観察室を全科共用とし安全性を確保(処置室・待機ベッドの共有化)
・救急外来からの体調不良者を随時診療科に関係なく入院管理する専用病棟を新設(救急科病棟:コロナ5類移行後に既に現病院で開始)
・臓器別入院病棟として診療科の垣根を低くする。
・感染病棟は患者数の増減に合わせて陰圧隔離壁を適宜変更できる仕組み(いつでもパンデミックに対応可能に。)
・売店やアメニティ、資料室などを充実させたアメニティスペースの確保(春採モールを設置)
さらに、手術室はかなり広くなるそう。部屋数も増え、新設されるハイブリッド手術室も設計されているそう。また、市民講演会やイベントが出来るような可変分割式の会議室・講堂も新設。
2027年の新病院完成後に古い建物を解体した跡地が広大な駐車場になる予定です。それまでの間、新築する建物を現在の正面患者駐車場の場所に建築するため、建築中は駐車場のエリアが狭くなるとのこと。ですから立体駐車場の利用がメインになるそうです。
一軒家を建てるのにも建築コストや燃料費の高騰が問題になっていますが・・・そのあたりはどうなのでしょう?最終的な建築費用の目標額は昨年の設計段階と変わらず、建築設計・実施会社と相談しつつ建築方法の効率化や建材の選択を行って価格高騰に対応していく予定と・・・。病床数を現在の643床から599床に減らして病院を運用。現時点では新築病院の病床数は535床に減らし、将来の地域医療に合わせていく計画とおっしゃっていました。また、より経済的な建築を目指し、調整を逐一行うとともに、ゼロカーボンに配慮した建築や使用開始後のライフサイクルコスト(40-50年と言われる新たな建築物の寿命を考慮した運用経費)も考慮してエネルギー供給を行うことを考えているそうです。
「実際に2027年の病院使用開始時には、今より人口が自然減少していく中で、安定した地域医療を供給するために計画を変更する可能性もあると思います。地域医療の維持ということを最低限実現するつもりで計画を進めていきます。」と教えていただきました。

2024.0207 O.A 市立釧路総合病院 院長 森田研氏 [close to you <dr.編>]

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釧路は以前から地震の多い地域として知られ、1990年代の釧路沖地震から定期的に災害に見舞われています。市立釧路総合病院は昭和59年に建築された当時の建築基準で、比較的新しい「耐震建築」の基準を満たしていて、大規模な損壊は1993年釧路沖地震・2003年の十勝沖地震でも経験していないそうです。
災害により病院の機能が一部でも影響を受けたのは、最近の5年間では・・・
・2018年9月6日 北海道胆振東部地震のブラックアウト(全道停電)
・2020年6月5日 送電線の落雷による瞬電による影響
・2021年9月6日 近隣の高圧電線の断裂による病院停電
ブラックアウトは全道で停電したので、釧路では地震などの直接被害が無い状態で電力だけが止まり、生活上もガソリンのくみ上げが出来なかったり、通信機器の障害が起きました。発災が早朝4時、病院の使用電力が少なく、この時は自家発電装置が無事動き、かつ消費電力が少ない状態から稼働を始めたため、当日の外来や入院・手術を延期できるものは延期し、緊急で必要な医療のみに電力使用を限定することで乗り切ったそうです。
また、2020年6月5日は地震ではなく、大雨・天候不良に伴い、十勝地方で釧路への送電ケーブルが落雷により瞬電(電力の急激な変動により停電はしないものの医療機器に影響が出る)を起こすということが・・・。これも時間帯が早朝で5時頃、通常診療には影響が少なく、維持電力で通電していたMRI装置の電磁ブレーカーが故障したため、そのMRI装置が使用できなくなるという被害だったと。MRI装置は電力使用量が最も大きい医療機器の代表格、強力な磁場を作るために大量の電力を必要とします。ブレーカー自体も修繕に多額の経費と時間を要したとおっしゃっていました。現在の病院は電子カルテをはじめ多くのIT機器が常時動いていて、停電や瞬電で影響を受けます。大きな電力を必要とする医療機器を如何に把握して停電時に休止するかがカギに・・。病院ではその他に、CTや手術室、検査室、エレベーターなどで電力を使っています。自家発電装置は、重油や軽油を用いて発電を行い、48時間から72時間継続して電力を供給出来ますが。連続運転すると一旦止めたりして再起動する必要が。「幸いこれまではその間に電力供給が復旧しましたが、自家発電を一時停止するときにまた停電になるため、その時には人工呼吸器などが止まらないように、そのような生命維持装置には内臓バッテリーで30分から数時間の間は稼働が継続するような仕組みになっています。」
実際の病院の電力使用量は、夜間や早朝では、500kW以下の電力使用量なので、自家発電装置1台700kWの電力で賄えるそう。朝から外来や手術、検査MRIなどが稼働し始めると電力使用量が増加し、平日日中ピークの1400kWを迎えると、1台の自家発電装置では賄えないのです。
また、2021年9月6日、近隣の高圧電線の断裂による病院停電。月曜日の10:02という時間。直ちに自家発電装置を稼働させたものの、再開時の電力が自家発電装置の最大発電量より多かったため、再開直後にまた停電。この時、エレベーターやMRI、CTといった大容量電力装置を全て停止させ、スイッチを切り、もう一回自家発電装置を起動させ、事なきを得たそうです。その間、22分あまり、電子カルテも使用できず、外来はそのまま重症の方を除いて診療がキャンセル。
このような場合に大きな消費電力の医療機器のスイッチを止めてから電力再開を行うことが必要であることを学ぶ貴重な機会になったとおっしゃっていました。
電力以外に、現在の病院は隣の熱供給公社から蒸気ガスの供給を受けていて、これが止まると冬期間の暖房や滅菌装置、高圧ガス装置の駆動が出来なくなるそう。また、透析など大量の水を使用する医療機器の維持は水道の供給が止まるような大地震・津波被害があると、病院自体は水没しない高さにはあるものの病院機能は止まります。「自家発電装置による電力供給により緊急処置や入院中の治療を継続しながら、災害時の医療をどう展開するかについて、防災計画を立てておく必要があると実感しました。」発災時間帯が平日・休日の何時なのか、ということは診療密度にも影響するのですが、重要なのは病院を動かす人材が居るかどうかにも関係します。「今回の能登半島地震で得られた教訓を是非とも釧路でも生かしていくために、災害対策訓練を重ねていく予定です。」

2024.0131 O.A 市立釧路総合病院 院長 森田研氏  [close to you <dr.編>]

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バスやタクシー運転手、建設業、学校関係、農業・漁業関係者などで専門職の成り手が減っているという話を耳にすることが増えました。専門的な技術を身に着けるために訓練する期間が技術の進歩で長期間になる傾向があり、数年・数十年のスパンでかかります。特殊技能になればなるほど、養成には時間が必要。どの職種も高度化・専門化してきているので、多くの特殊技能者の養成が必要になるのです。そんな中、4月から働き方改革が始まります。超過勤務時間は具体的に何時間になれば致死的かという定義があります。勤務時間を1日8時間として、週5日で40時間、月に合計した超過時間勤務が100時間を越えないように残業を認めるかどうかという契約を労使で結ぶ必要が・・・。これは運送業や建設業、医療従事者等、どうしても業務のニーズで超過してしまう職種にも共通に当てはめられ、超過時間勤務で睡眠不足になり健康被害を生じる場合の報道された例では毎月120〜140時間を超える超過勤務をしているケースが殆どだったそう。よって、超過勤務になりつつある人には、交代要員を設けて休ませる等の対応を職場では検討しなければならないのです。その専門職の不在、人材不足のある職場では、例えば長距離トラックの運送業で荷物の到着を遅らせてでも過剰労働を避けるという工夫が必要。ただ、建築が間に合わないのでどうしても超過勤務を要したり、医療現場では患者さんを救うためにはある程度の残業をやむを得ない範囲として、特例が認められる場合があるそうです。これを、医療分野では「暫定特例水準」として研修中の医療スタッフや教育機関の職員、救命救急部門の職員に設けているとのこと。医療では、時間外にどうしても超過勤務で宿直医が働いたり、呼び出されて手術をしたり・・ということが多く、なかなか時間外勤務を削減出来きないというのが現実。「従って、病院にかかる側の意識も今後変えて頂いて、もし翌日の時間内に診察を延期しても大丈夫なケースはできるだけそうしていただき、救急受診や救急車の使用を控える工夫が必要です。消防署の隊員の疲労軽減や救急車の効率的使用にも繋がります。いわゆるコンビニ受診を出来るだけ減らす工夫を皆さんにご協力頂きたいのです。」最近では、その判断がわからない場合、電話で受診をどうしたら良いか病院に相談をすることで、緊急受診の判断を医療従事者に相談したり、他の方法や自宅での観察注意点を連絡したりという事が行われているそうです。単純に医師や看護師をはじめとする専門職の業務を分担し、一般職でも代行できるような業務を分け、専門職にしか出来ない仕事を集中することで多くの患者さんに対応出来るようにする。また、スーパーのレジで電子会計をするようなデジタル化・自動化で、専門職の業務負担を軽減して超過時間勤務を少なくする試みが増えていると・・・。様々な工夫や、業務分担を職場で推進することで、過労死ラインの超過時間(月に140時間以上)となる職員の数は最近2年間の業務改善でかなり減ってきたとおっしゃっていました。「多くの職場で許容範囲とされる月100時間以内に調整できつつあります。それでも特定の職場ではどうしても超過時間が出るんですよね。」一方で、急激な勤務制限を厳格に行いすぎると、必要な方に医療サービスが提供できなかったり、地域医療に支障が出ては困るので、超過勤務負担が生じやすい分野や特定の専門職・個人に、連続勤務が28時間を越えたら18時間を強制的に休ませたり、毎日の睡眠を確保する休息時間が9時間確保できなかった場合は、1週間以内に休息日を追加する等の規制が今年の4月から法制化。「さらに4年後をめどに、必要な人材確保や業務負担整理、病院間の協力や人員配置を進めていくことで、全ての地域で超過時間勤務が許容範囲になることを目指して現在動いている状態です。」

2024.0124 O.A 林田クリニック 院長 林田賢聖氏&新潟大学 医歯学総合研究科 榛沢和彦氏~2 [close to you <dr.編>]

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先週の続編です。まずはそもそもなぜ医学の道に榛沢氏がすすまれたのか・・・から伺いました。実は子供の頃、交通事故にあい入院生活を送り、そこから病院というものに興味を覚えたそうです。専門は心臓血管外科。最初は心臓移植や人工心臓等に興味があったそうです。現在もそのような関係のこともなさっているそうです。
榛沢氏は大変お忙しい毎日を送られているのですが、モチベーションはどう保たれているのでしょう?と林田氏。「一つのことをやっていると飽きちゃうというか・・・色々なことをやっている方が良いというか・・・。知っちゃったことは広めなくてはならないというのがあって、災害についても避難所に皆がいけるわけではないし、そこで知ったことはみなさんが経験できるわけでもないので、そこを分かったことを還元していかないとダメかなって。それは医学でも同じだと思うのですが、自分が知ってしまったこと、自分で研究したり、経験したことで判明したことが皆のためになるのであれば、周知していかなくてはならないと思うんですよ。」
収録後、榛沢氏よりメールを頂きました。ここでご紹介させていただきます。
〜10月22日に十日町、11月12日に小千谷でエコー検査したところ、417人中82人に足の静脈に血栓が見つかりました。中には治療が必要な方もおられました。さらに足の血栓による軽度の脳梗塞が疑われる人も見つかり、まだまだ震災直後の車中泊の影響が残っており、今後も継続的な被災地での検診が必要と考えられます。〜ということで、エコノミークラス症候群を発症した方の中には現在も治っていない方、悪化している方もいらっしゃるとのこと。
災害から10年以上経っても、当時の車中泊が原因でカラダに問題が出ている・・・そうならないためにも
まずは、自分たちがその知識を知ることが大事です。
榛沢氏のクラファンhpから(前回の続きです)・・・・・・・・・
私たちの研究アプローチは、災害被災地でDVT検診を行ってデータを検討する現地調査の方法です。新潟県中越地震及び中越沖地震被災地の小千谷市、十日町市、長岡市、柏崎市では20年近く毎年検査を行っており、200人以上の被験者を集めることが可能になっています。また東日本大震災被災地の陸前高田市、大槌町でも100人程度の被験者を集めることが可能です。また災害後のDVTは長く残存するため、災害から時間が経っても発災当時の避難環境を推測することが可能です。地震発災8年後の聞き取り調査結果では、DVTを検診で指摘されたことがある被災者では、脳梗塞は4倍、虚血性心疾患は2倍、肺塞栓症は73倍多いという結果が出ています。またDVTの発症には、環境だけではなく血液が固まりやすい遺伝的素因が関係している可能性があります。そこで複数の被災地の地域住民を対象に血栓症や健康被害についての調査を行いたいと考えています。またDVTが見つかった方には、弾性ストッキングの着用を勧め、重症な場合は病院受診を勧めます。また収集した大規模データをもとに、避難所環境に関連する健康被害を予防することを目指して、災害対策に貢献します。

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