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動物を愛するって・・・?(笹森 琴絵編) [nature treasure]

笹森① シャチ 尾びれ.png笹森② シャチと観察者たち.png笹森③ 観察船上.png
「私事ですが、昨夏に生後2か月ほどの子猫を拾いました。避妊手術について検討していたところ、避妊手術の是非について炎上しているコメント欄をネットでみかけたたのです。たとえば、飼い猫をうっかり外に出してしまった場合に、思いがけず妊娠したりする可能性を考えると、飼い主としてはそうならない・させない予防措置は必要と考えるのですが・・。ただ、それに対し、動物の本能をないがしろにしているという意見も。飼い猫の避妊という一つのことでも、ずいぶん異なる意見があることを改めて感じました。」・・ということで、 “動物好き”とはなんだろう?ということを鯨類ウォッチングにからめて考えてみようということに。
ただし、ペットと野生は分けなくてはならず、同じレベルで語ることはできません。
自分の生活とは離れた場所で野生動物たちと出遭う体験は、娯楽としてだけでなく、環境教育の場としても素晴らしいこと。
ただ、遭遇した鯨類を、まるで自分のペットや飼育下の動物のように扱う・接するといった過剰な干渉行為の是非を考えてみることが必要だと思うのです。
自分が好きなのは、クジラではなく、クジラと一緒にいる自分なのでは?なんて考えたことはありますか?と笹森氏。「野生動物、特にシャチやザトウの様な人間のスケールを遥かに超えた存在と間近に触れ合っている自分が好きでたまらないのでは???決して、それが悪いといっているわけではないのです。ただ、もしそうだとすれば、クジラに無関心で見にも行かない・好きでも嫌いでもない方々よりもむしろ、クジラ好きを自称する私たちこそが鯨も生活を妨害し脅かす存在になっているのでは?という疑問もわいてくる・・ということもあるのではと思うのです。」
クジラがいてこそ成立するウォッチング事業は本来、動物と生息域を保護・保全することに積極的であるはず。むしろあるべきなのに、こちらの主観や希望や事情を優先して、観察対象の生活にずかずかと踏み込み翻弄している状況がままにあるそうです。鯨類ウォッチングが、動物の「非消費的」ではなく「少消費的」利用と揶揄される原因はそこにあるとも・・・。ルールがあれば、動物へのハラスメント行為は全て防げるのでしょうか?残念ながらそうではないのです。動物の行動がいつもこちらの想定内とは限らず、また、定めたルールが現場では守られない・守りにくいという現実もあるそうです。周囲に他の船はいない、そんな場面では、船長は客により良い場面を見せたいとルールを無視して近づきすぎたり、やりすぎたりも。たとえ、接近しすぎなどに気づいた客がいたとしても、それを指摘しにくい、誰も止められないということもあると。それは想像に難くないこと。船を走らせることで海を汚し、動物にいらぬストレスを与えている可能性を考慮し、動物との色々な意味での距離感を保つことが、彼らと長く付き合っていける数少ない秘訣の一つだと笹森氏はおっしゃいます。「海を愛するなら、私たちがすべき・できることは、海は私たちの遊び場ではなく、動物たちは私たちの所有物ではないと理解し認め、せめて、その営みを邪魔しない節度を持つことはすべきこと・・・。」
野生動物たちと出遭う体験は、他に換えられない環境教育の場となりうるのはまぎれもない事実。でも、それを理由に海に足を踏み込むのであれば、自然界の秩序や掟に、可能な限り干渉すべきではないことを心すべきなのです。「動物好きなら、なおのこと。これは海を長らく活動舞台にしてきた私自身も戒めとしている事です。」
※写真は笹森琴絵氏からお借りしました。
※音声はこちら・・・https://open.spotify.com/episode/4ePPDAkXIupmjZ8TmPMQ6t

1年経ちました!!(齊藤 慶輔編)  [nature treasure]

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去年、新しくスタッフに加わったということで、スタジオにいらした清水萌花氏。
あれから1年が経って・・・どんな感じなのか。慶輔獣医がお聞きしたいとのことでお二人でスタジオイン。
とにかくこの1年、様々なことを体験なさったそうです。治療だけではなく、すでに死亡したしまった個体を観察して、どういう状態で、何が考えられるのか?等々。
厳冬期の作業はもちろん、Tシャツのデザインまで。。。
このデザインがまたすごいのです。Yはワシの足跡で、その中の模様はワシ達が関わっている問題の模様が。
Kはシマフクロウのイメージ。ですからその中に描かれているものもシマフクロウ関連のもの。
そして人の足跡。ここには人間が関わって引き起こされている様々な問題が・・・。
「実はYはゆきこ先生、Kはけいすけ先生の意味もこめたんです。」当のご本人はご存知なかったみたいです(笑)。
オールラウンダーなんですよ・・と慶輔獣医がおっしゃっていましたが、お話を伺っていると、まさに頷けることばかり。
どれが楽しいというのではなく、全てが繋がってそれが楽しい。辛いと思ったことはないそうです。常にポジティブ。そして笑顔が何より最高です。
2年目は「伝える」ということをテーマに今まで以上に果敢にチャレンジなさっていくことでしょう。
頼もしい!萌花氏でした。心細やかに人に接することができる人は、動物に対しても何に対しても優しい気持ちを持っていて、相手のことを考えることができる方なのだと・・・・・彼女を見ていて感じます。
※音声はこちら・・・https://open.spotify.com/episode/73XlTLU4jU6ySNUEnagfH3

マリモと生育地の精密調査~1(尾山 洋一編) [nature treasure]

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2年前から専門家との意見交換を通して調査計画を練り上げてきた結果、今後数年間にかけてマリモと生育地の理解に向けた精密調査を実施することに。。。
阿寒湖のマリモは、10年ほど前から割れたりひびの入ったものが目立つようになったと言われています。丸いマリモは、水深1.5mから2.5mの場所にいるのですが、ちょうど破損が目立つようになった頃に、マリモのいる場所よりももっと深いところ 水深3~4mの所に水草が繁茂しました。水深1~2mの場所には今から50年以上も前から水草がたくさん生えていたので、急にマリモ生育地に水草が入り込んだわけではないのです。
マリモが壊れるのはマリモが回転不足になっているからという仮定の下、マリモを動かす波の力が水草によって弱められているという事で、試験的に水草を刈り取り、マリモを回転させる波の力が回復するか試したところ、一定の効果が見られたそう。そのため、水草を刈り取りましょうと、ここ数年は水草の刈取除去を行ってきました。ただ、その年の気象条件などにより水草刈り取り効果のある年やない年があり、そしてマリモ自体についても目に見えるような回復は確認できていないとのこと。
現状のマリモは、破損については相変わらず。ただ、直径20cmを超えるような大型のマリモ群落は存在しているそうです。「最近ちょっと心配なのは、密度の低い(=柔らかい)マリモが増えているような感じが・・。最近の研究では、マリモの密度はその年の積算水温と関係があることが分かっています。水温が高いとマリモが痩せてしまう。夏の最高水温が24度程度にまでとどまるとマリモはそれほど痩せない、という事が分かってきました。」
このような問題を2年間にかけて議論し、これまでの対策で足りなかった点や、もっと検討すべき課題を整理してきたのです。その結果、水草だけではなく、マリモの生育に影響を与えるその他の要因(水温・光環境・湖底の泥など)をできるだけ一斉に調査して、マリモの生育を悪化させている要因を整理した上で、マリモを回復させるための効果的な対策をもう一度考えるということになったとおっしゃっていました。
一部の専門家からは、20年前と比べると生育状況が悪いと指摘を受けているそう。本来であれば、過去20年間のマリモと生育地のデータがあれば、悪化の要因を解析できるそうです。ただ、そのようなデータはないので、まずはマリモと生育地の精密調査を実施し、現状を詳細に把握することになったのです。
※写真は尾山洋一氏からお借りしました。
※音声はこちら・・・https://open.spotify.com/episode/4wlrb8WhnDBnjQ7qBRrCQZ

キタサンショウウオも光りものがお好き?(照井 滋晴編) [nature treasure]

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「先日サンショウウオの調査方法についての研究成果を札幌で発表する機会があったので、その内容をお話ししたいと思っています。」
単純にサンショウウオをどうやって捕まえるかという方法。以前は陸にいるサンショウウオを捕まえる方法として落とし穴の話をしていただきました。今回研究成果として発表したのは水の中の話。
まず、サンショウウオを含む両生類の捕獲方法には、能動的な手法と受動的な手法の2種類があり、 能動的な方法は、移動中の個体や転石・落葉などの下に隠れた個体を木や石をのぞきながら探す手法や水の中にいる個体をタモ網などの道具を使って捕獲する方法。 対して、受動的な方法は、トラップによる捕獲。 陸上でのトラップ法として落とし穴を教えていただきましたが、水の中ではどのようなトラップが考えられるでしょう?
実際に海外では、両生類の幼生や水中生活をするイモリ類の成体を捕獲する方法としてカゴ罠が使われ、その効果についてたくさんの報告がされているそうです。
でも、日本国内ではカゴ罠を使って水中で両生類を捕獲したという報告はほとんどなく・・・それならば本当に効果的なのか実際にやってみようと思い立った照井氏。
「サンショウウオを守る活動をしていると、どうしても捕獲しなければいけない場面が何度もあります。例えば公共工事などでサンショウウオの幼生がいる水たまりが埋められてしまうとなれば、できるだけ多くの幼生を捕獲して埋められない近くの水域に移すということもよくあります。 そんな時、たくさん捕獲できる方法があれば、より多くのサンショウウオを守ることができるので、試してみる価値のある研究なのです。」
実際には、サンショウウオの幼生が水の中にいる夏の時期に、たくさんいそうな水の中にカゴ罠を放り込む作業を実施。 ただカゴ罠を入れるだけではおもしろくないので、海外の研究で水中トラップでの両生類の捕獲効率を向上させるとされるグロースティックと呼ばれるものをカゴ罠に入れると、本当に効果があるのか?ということも検証することに・・・。 グロースティックは軽くバキッとおると蛍光色に光る棒のこと。今回の研究では、サンショウウオの幼生がいる水の中に、餌も何もいれていないカゴ罠と、このグロースティック1本だけをいれたカゴ罠を沈め、翌日に幼生が捕れているか確認。この実験は、3ヶ所のサンショウウオの生息地で3日間実験。どこの生息地でもグロースティックを入れたカゴ罠の方が入れていないカゴ罠よりも多くの幼生を捕獲することができたそうです。捕獲した個体数の合計は、グロースティックを入れた罠で117匹、入れていない罠で37匹。グロースティックを入れた罠の方が約3倍多く幼生を捕獲できたということ。この結果から、まず、カゴ罠はサンショウウオの幼生を捕獲する方法として使えるということが判明。さらに光る棒を入れるだけで、その効果はさらに上がるという事もわかったのです。
「今回の研究で試したカゴ罠の場合、水の中に沈めるだけなので生息環境を破壊する可能性は低いので、タモ網と同じくらい幼生を捕獲できるのであれば利点としてはとても大きいと思うので、今後普及していくと良いなと感じています。 」
※写真は照井滋晴氏からお借りしました。
※音声はこちら・・・https://open.spotify.com/episode/20YAea1bfYhlVbSULxFoqC

クジラ関連のニュースを考察!(笹森 琴絵編) [nature treasure]

笹森①2005シャチ.png笹森②マッコウ.png笹森③ミンクb.png
「今年も、一年が始まった早々、クジラのニュースが立て続いているので、ご紹介がてら考察しましょう。」
まずは、大阪湾のマッコウクジラ〜1月中旬から目撃情報があったらしく、一か月近く滞留し、2月19日に堺市の港で死んでいるのが確認された。彼らは深海のイカなどを食べています。ひと月も餌が獲れないうちに体力や免疫が落ちて命を落としたのでしょうか・・・。
昨年の1月に淀川河口付近でマッコウクジラが。その4日後に死亡が確認され、解剖後、紀伊水道沖まで運ばれ、海底に沈められました。
続いて、北海道でもクジラの座礁〜2月18日に北斗市の海岸でミンククジラの死骸見つかる。体長約7m、体重6トンほどの雄。死後1週間ほど。致命傷らしき外傷はなく、函館市が20日、埋設処分に。
さらに2月は、羅臼でシャチの群れが氷に挟まれることも・・・〜6日午前7時頃に羅臼町海岸町の沖合約1.6キロの位置で、狭い開氷面に閉じ込められているのを発見された。「スパイホップ」と呼ばれる、水面から頭を突き出して周囲を見渡すような姿勢で、かわるがわる呼吸する姿をテレビや新聞等で見て、胸を痛める人は多かったよう。7日未明に見たという情報があるが、それ以降は姿を消す。2月末までにそれらしき目撃情報も座礁や死骸をみたという情報もないので、助かったと思いたい。
さて、羅臼では、冬もシャチがみられるのでしょうか?笹森氏も羅臼で4年程に亘り、毎月周年で鯨類調査を行ったのですが、羅臼の海は釧路と違って陸からも観察可能とのこと。船が出られない時化の日や流氷が押し寄せている時期でも、やって来ていればわかる場合が多いそう。逆に言えば、5~6月のシャチのハイシーズン以外は、少なくとも羅臼側には、ほぼ来遊していないと考えてよいのではないかとおっしゃっていました。
以前、2005年にも流氷期のシャチ座礁があったそう。2005年2月、海岸近くで子供を含む群れが流氷に挟まれ死んだそう。流氷期に知床周辺に現れるシャチは、流氷上で出産と子育てをするアザラシ狙いとみていいのでは?と。当時の座礁個体の解剖結果から、氷の巻き込まれる前にアザラシを食べていたことがわかっているそうです。岸へと追いやられて命を落とした2005年と違いの一つは、現場が沖合だった点。比較的、退路を見出しやすかったのかもしれない・・・と。ただ、このようなことは私たちの目の届かない海域では想像以上に多く起きているのかもしれないのです。
ところで、流氷が薄くなって、動きも変化していることなどと関係があるのでしょうか?2005年にもその指摘はあったそう。流氷シャチに限らず、水温と相関関係がある鯨類の動きが、上昇傾向にある水温に合わせて変わるのは必然。餌生物は、鯨類よりも遥かに海水温の変化に対してセンシティブ、餌の分布などによっては育児域を変えざるを得ない種も・・。寒冷期、つまり海水温が下がる時期は南で、温暖期、つまり海水温が上がる時期には高緯度でエサ取りや子育てを行うのですから。
「シャチもマッコウも、海で起きることは自然の流れに委ねる方が良いのですが、ただ、それが人間活動に起因している、あるいは私たちの行動の歪みで起きているとはっきりしている場合は、また別の話。自分たちの行動の責任を取るという意味で、解決すべく手を尽くすという考え方は重要だと考えます。自然なことと、そうでないことの見極めは難しいのですが、闇雲に騒いだり嘆き悲しんだりといった過剰反応をせず、成り行きを見守る姿勢も必要だと思います。」
とはいえ、このような機会に野生動物や自然界に関心を持ち、知識や情報を得ようと、身近と捉えていなかった海や動物に親近感や共感を抱くことは、環境や動物保護の観点からこの上なく大切なことだと思うとおっしゃる笹森氏に同感する方は多いのではないでしょうか。
※写真は笹森琴絵氏からお借りしました。
※音声はこちら・・・https://open.spotify.com/episode/7HJtxORxcJNMBacwjWqWJk

足環と衛星送信機で・・・(齊藤 慶輔編)  [nature treasure]

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鳥インフルの続き・・・
どちらもオジロワシのお話しです。まず、2022年に鳥インフルで収容されたオジロ。今年の冬に放鳥することができたそう。
そこに衛星送信機を装着し、少しでもエサをとることができるように風蓮湖で放しました。それから3~4日、ほぼ動かず・・・その後風蓮湖に向かったそうですが、すぐにまた内陸に移動。牧場などで何をしているのか?何を食べているのか?疑問だらけですが。。。
収録の少し前には標津漁港のそばに移動したそうです。「心配なので来週くらいには現地に行ってみたいと思います。」と慶輔獣医。なぜならそこはかつて鳥インフルが発生した場所なのです。何もなければ良いのですが・・・。
そして、もう1件。こちらは2019年に放鳥したオジロ。羅臼で道路の脇をとことこ歩いていたそうで、センターに収容されました。
特に目立った外傷はなく、どうやら早くに巣立ってしまい、まだ、きちんと飛ぶこともできない状態だったそう。その子が・・・5年経って、羅臼でカメラマンの被写体になっていたそう。足環をつけているので、精度の高いカメラで撮影した写真にはその足環がしっかり写っていて、さらに標識の文字も読み取ることができたそうです。さすが時代のなせる技。カメラも素晴らしく、それを見るパソコンも拡大して見ることができるから。
そこで確認できた時にはとっても嬉しかったと教えてくださいました。
ただ、やはりこの時期はとくに人間に関与するエサを頼りにしないと生きていけないという現実が露呈された感じです。
※写真は齋藤慶輔氏からお借りしました。(なお、下段2枚の写真はA.H氏提供のものです。)
※音声はこちら・・・https://open.spotify.com/episode/4KSbszWQ4Rf6rQRnpA7Yp9

冬の阿寒湖調査(尾山 洋一編) [nature treasure]

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今年の冬は暖かく、阿寒湖でワカサギ釣りが始まったのは1月20日頃。5年ほど前までは元旦からワカサギ釣りができたとか・・。マリモへの影響については、湖が非常に冷たい時にマリモに強い光が当たるとダメージを受けて回復しにくくなることが最近の研究で分かっています。もし、温暖化の進行で湖が凍りそうで凍らないような日が長く続いた場合、マリモが受ける影響が心配されると以前にお話しなさっていたのですが、それが現実となりそうなほど最近の気候はおかしいと尾山氏。「将来、阿寒湖が凍らなくなる可能性もゼロではない気がしますね。」湖の研究者の間では、温暖化が湖に与える影響のうち、冬に凍るはずの湖が凍らなくなった場合、湖の生態系にどのような影響を与えるのかに関心が持たれているそうです。
冬の凍った湖は、凍っていない時期と比べて湖の環境が異なります。例えば水温は非常に低く、最大でも4℃。氷に閉ざされるので湖の中は暗く、風が水面を乱すことが無いので水が停滞しています。温暖化によって湖が凍らなくなると、このような冬の特徴が無くなってしまうことになるのです。
もしかしたら、こうした冬の厳しい環境の中で、ある種の生物は死んでしまうのかもしれないし、その種が死ぬことで、春になって新たな生物が繁栄するきっかけとなっているかもしれない。そのような事をこれから長期にわたって調べる場所の一つとして、阿寒湖が候補に挙がっているのです。マリモ研究室では、3年前から国の研究機関と共同で地球温暖化の調査を阿寒湖で行っているとおっしゃっていました。
今年は1月下旬に総勢8名で冬の阿寒湖調査を行ったそう。氷に穴を開けて、氷の厚さを測ったり、水温センサーを入れて深さ方向の水温分布を調査。さらに、環境DNAを想定するために湖水も採取。氷の下以外にも、湯壺と呼ばれる氷の張らない場所でも水をとったそうです。
湯壺のように湖の凍らない場所は、渡り鳥が羽を休める場所としても機能しています。
今回の調査では、鳥の専門家も同行。オオハクチョウ、マガモ、ヨシガモ、ヒドリガモ、カワアイサ、オオバン6種類の鳥類が水面を利用していて、主に河川の流入部に集まっていたそうです。「ボッケの周辺では、浅い場所でマガモが湖の底をつついていたんですね。石についた藻を食べているようでした。オオバンは冬の北海道ではあまりみられない鳥類、水中にもぐっては水草を水面に引き上げて食べている様子が見ることができました。」
湖が凍らなくなると、生態系に様々な変化が現れるのでしょうが、それは必ずしも悪いことだけではなく、水面を利用する渡り鳥のような生き物にとっては過ごしやすくなるのでしょう。「重要なのは、そうした生き物の細かい変化を見逃さないようモニタリングを続けて、未来の人たちに向けて記録を残すことだと思いました。」
※写真は尾山洋一氏からお借りしました。
※音声はこちら・・・https://open.spotify.com/episode/75ufrMYOYhVGhtdctm1btM

about talk event 〜special version〜(齊藤 慶輔編) [nature treasure]

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今回はスペシャルになるはずだったのですが・・・
お話しが行ったり来たり・・・???
ゆる〜い感じの内容です。
※※写真はHTBドキュメンタリー映画監督 沼田博光氏からお借りしました。
※音声はこちら・・・

寒い冬に春からの調査研究を考える(照井 滋晴編) [nature treasure]

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この時期は、春からの調査に向けて、一緒に研究をしている研究者の方々と共に春からどのような調査・研究に取り組むかを相談したりしているそう。 打合せでは、まずこれまでの調査研究でわかったこと、そして次に明らかにしたい課題を整理。 要するに、キタサンショウウオの何がわかっていないのか?どんなことを明らかにしたいのか?ということを話す感じと。 よくわかっていないことと言えば、キタサンショウウオはどこで冬を越すのか?ということが一つ。また、越冬に限らず、繁殖期以外の時期にどんな場所を生活の場として利用しているのか?そして、どれくらいの範囲を生活圏にしているのか? そのようなこともまだまだデータが少なくてわかっていないのです。 そのように課題を挙げ、次にその課題を解決するためには、どのような調査をすれば良いか?ということについて話し合いをするそうです。
例えば、越冬場所や行動圏といった課題を解決するためには、どうすれば良いでしょうか? 最も確実なのはキタサンショウウオをストーカーのように追いかけること。 これができれば、越冬場所も行動圏も好きな環境もすべて明らかにできます。その方法の一つに、標識再捕獲法というものがあるそう。捕まえたサンショウウオに標識を着け、捕まえた場所に返し、後日もう一度捕獲することで、同じサンショウウオがどれくらい移動するのかを推定。「この方法だともう2回以上同じサンショウウオを捕獲しなければならないので、たくさんのデータを得ることがなかなか難しかったりします。 もちろん不可能というわけではなく、過去の研究ではこの方法でキタサンショウウオが繁殖池から100mくらい離れたトラップで捕獲されたことがあり、キタサンショウウオが少なくても繁殖池から100mは移動することが明らかになっています。 これはとても大事なデータで、このデータからキタサンショウウオを守るためには繁殖池から少なくても100mの範囲は生活圏になっているので守った方が良いということが言えるようになります。」ただ、この方法では行動圏を推定することはできても、移動のルートや好みの環境など詳細なことはわかりません。この様な問題を解決するためにはリアルタイムで居場所を特定する方法にしなければいけません。そのための方法の一つに発信機調査というものがあると・・・。 ラジオのような電波を発信する発信機をサンショウウオにとりつけ、そこから出る電波を受信器の音の強弱を頼りに追跡するという調査。
「でも、1個あたり数万円と高額なうえに、始めてしまうと電池が切れるまで毎日調査に行かなければならず、労力もかなりかかります。 キタサンショウウオでも過去に実施され、それなりの日数と距離を追跡できていたのですが、あと一歩で越冬場所などを完全に明らかにするまではできず、悔しい思いをした記憶があります。」
それ以降、予算や時間の関係で進めることができていなかったそうですが、次年度は再び発信機による追跡調査にチャレンジしてみようかという話も出たそう。何かもっと効率的にできる方法が見つかれば良いのですが・・・。
※写真は照井滋晴氏からお借りしました。
※音声はこちら・・・https://open.spotify.com/episode/6Bg8VKn0alDM67rjxZXIL9

海の生き物たちの今は、私たちが招いたもの・・・(笹森 琴絵編) [nature treasure]

1  アホウドリの仲間 コアホウ 笹森.png2  コアホウとアホウドリ 笹森.png3  アホウドリの仲間 クロアシアホウドリ 笹森.png
4 ザトウの頭上を舞うコアホウドリ釧路沖 笹森.png「海を見続ける者として伝えたいことは素晴らしさや美しさなど多々あるが、残念ながらそれだけではない。
今では、汚染や水温上昇、中でもプラスチックごみの内容を外すことはできない。」
去年、12月18日付け北海道新聞の一面に大きく掲載されたコアホウドリの記事を読んだ方もいらっしゃるはず・・・北大などの研究チームが2014~18年に小笠原諸島周辺で回収したコアホウドリ約100羽の死骸のうち、9割の胃からプラスチック片が見つかったという内容。
実は釧路市沿岸でも、ゴム手袋を飲み込んだコアホウドリが発見され、別途報道されています。
道内への海洋ごみの漂着量は国内で最も多く、専門家は「北海道を含む日本近海でも海洋ごみの問題は深刻化している」と指摘しているそうです。
コアホウドリは、アホウドリの仲間。小さいアホウドリという名がついているが、翼を広げると2mほどになる巨鳥。繁殖期以外は海上で生活し、北緯20~60度の北太平洋、ベーリング海に分布。
羽毛採取のための乱獲や、繁殖地の消失、延縄漁などの漁業による混獲でアホウドリと同様、絶滅すれすれなのだとか・・・。
実は釧路沖は、アホウドリ、コアホウ、クロアシと、アホウドリの仲間3種全てが集う海なのだそう。
中でもコアホウとは、私たちの秋の釧路沖調査では毎回、出遭ったとおっしゃっていました。
「海面を軽やかに走って風を掴み、ふわりと風に乗ってグライダーのように滑空する優雅な姿を見せてくれる。一見カモメ風だが、目の周りにサングラスをかけたような模様があり、何より体の大きさがカモメとは全く違います。」
餌は海面に浮いている小魚など。そのためレジ袋やプラスチック片、たばこのフィルター、ゴム手袋の破片などが浮いていれば、イカや小魚と間違えて呑み込んでしまうのです。コアホウドリなどの海鳥と同様に小魚などを餌とする鯨類や鰭脚類、さらには餌となる生物もまた、同じ状況に巻き込まれているということ。海では全てがつながり巡るのです。
私たちは今、自然な状態の千倍もの速さで絶滅が進み、生物多様性が急速に失われる、第六の絶滅期を生きているといわれているそうです。その原因は、温暖化やゴミ問題、各種汚染などの人間活動。「私などは、私たちは人間だけの地球にしようとしているのだろうか?と疑ってしまう時があるんです。でも、人間と他の生き物とは一蓮托生。同じ地球で、自然界や生物から恩恵を頂き続ける人類の一人勝ちなどということはありえないのです。」
ゴミの漂着量は国内最多。また、温暖化が原因とみられる気象の激甚化、食べなれた魚が食卓から消えるなどの異常事態がすでに身近で起きています。さらに、ゲリラ豪雨、どか雪、猛暑なども皆さんご存知の通り。海を取り巻く問題は科学者らの予想を遥か超えたスピードで進んでいると言っているそう。これに対する社会の動きが後手後手に回っているのは、素人目にも明らかです。「激変する現実に手をこまねき、そこから目を背けて、これまでと同じ価値観で同じ生活を続けようと、過去にしがみついている私たちを置き去りにして、時間と事態はどんどん進んでいきます。海の変化を目にしている私としては、ひたひたと押し寄せる激動を感じ、身がすくむ思いがします。」
※写真は笹森琴絵氏からお借りしました。
※音声はこちら・・・https://open.spotify.com/episode/2MJ7ulpFr65FBcgFuu9MZA
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