SSブログ

湖を研究する〜植物プランクトン3〜(尾山 洋一編) [nature treasure]

IMG_6380.jpgIMG_6382.jpgIMG_6381.jpg
数ある植物プランクトンのうち、今回は珪藻という植物プランクトンのことについて。
多くの植物プランクトンは緑っぽい色をしているのですが、これはクロロフィルという色素を持っているから。
クロロフィルは、光合成に必要な太陽の光から青い色と赤い色を強く吸収します。ですから吸収されにくい緑色の光が反射するので、緑色に見えるのです。
珪藻は茶色っぽい色をした植物プランクトン。その理由は、クロロフィルのほかにフコキサンチンという色素を持っているから。ちなみフコキサンチンというのは
カロチノイドという色素の一種で、野菜で言うとニンジンなど赤い野菜に含まれているカロチンという色素の一種。
フコキサンチンは太陽の光から青い色を強く吸収します。緑から赤色までの光が反射されるので、結果として黄色や茶色っぽく見えるそうです。
色のほかに珪藻が持つ大きな特徴は、表面がガラス質の殻で覆われていること。私たちが使うガラスは主にケイ素という物質からできています。
珪藻の「ケイ」というのは表面のガラス質をつくるケイ素の「ケイ」から。また、様々な形を持つことも珪藻の大きな特徴と。
珪藻の仲間には、ホシガタケイソウ、クチビルケイソウと呼ばれるものも。顕微鏡で見ると名前の通り星やクチビルのような形をしているそう。
珪藻には様々な形をした種類がいて、現在では地球上に1000を超える種類がいると言われているそうです。ただ、一つの湖に1000種類がいるわけでなく、
その湖の環境や季節に適応した種類だけがいるのです。湖の場合はだいたい数10から多い場合は100を超えることがあり、湖によっても種類が異なるそう。
ですから湖の中にどの様な種類の珪藻がいるのかを顕微鏡で調べることで、その湖に水質を理解することができるということ。
「珪藻の研究のすごいところは、環境によって珪藻の種類が変わることを利用し、大昔の湖の環境を調べることができるんです。珪藻はガラス質の殻を持つので、
死んでも殻が形を保ったまま化石の様になって湖底の泥に残るんですね。泥が深くなるほど昔に堆積した珪藻の死骸が残っていることになるので、
例えば湖底の泥を円筒状に採取して深い場所の泥の中に残っている珪藻の化石からどんな珪藻がいたのかを調べる事で、昔の湖の環境を推定することができるのです。」
約2億年前、ジュラ紀と呼ばれる時代の地層にも珪藻の化石が残されていたという記録があるそうです。
珪藻を使った研究は、現在の湖の水質評価だけでなく大昔の湖の状態を推定することにも役立つということなのです。
最後に、珪藻を使ったとても面白い取り組みついてご紹介いただきました。珪藻がガラス質の殻を持つことや、様々な形をしている特徴を利用して19世紀ごろから
ガラスアートの様な作品を作っている人が世界各地で現れ始めましたそう。珪藻の殻の中に色々な色の液体を閉じ込め、それを一つずつ顕微鏡を覗きながらプレパラートに並べる。それで人の顔、家、クリスマスツリー等を描いているそう。非常に根気のいる作業でびっくりなのですが、とても美しいそう。
「日本でも、奥修さんという方が珪藻を使ったガラスアートの写真を出版しているので、ぜひ一度ご覧になってほしいです。」書籍情報:珪藻美術館(発行:福音館書店) 
※写真は尾山洋一氏からお借りしました。
※音声はこちら・・・https://open.spotify.com/episode/7B5JURJQnbyvRgVKaGAvFD

Facebook コメント