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cheers to the poster. [close to you <art編>]

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北海道立帯広美術館の収蔵品の中から、お酒をテーマにした1800年代終わりから1940年代までのヨーロッパのポスターを取り上げた展覧会。
全部で13点。どれも同時の街を彩った大型のポスターで、デザインの面からみてもとても興味深いポスターばかりと・・・。
ポスターは、何か情報を伝達するもの。今回展示のポスターはほとんどが商品としてのお酒を扱ったものです。お酒の宣伝のためというのがが目的ですが、その時代のデザインの傾向を反映した多様な表現を見ることができるそうです。


敷田学芸員がが気になった作品を数点ご紹介いただきました。
1つは、ジョルジュ・ファーヴルによる「ティタン」というビールのポスター。白色とグラデーションのない赤、青、黄色という色の三原色を用いて、明快な形と色で構成された画面を作っています。画面の真ん中には赤い巨人(ティタン)。この巨人がビールジョッキを担いでいて、そのジョッキの側面にはポスターと同じ図柄がそのままラベルのように描かれていて、その中のジョッキにも同じように図柄が描かれ・・・と入れ子のようになっているのが、目を楽しませてくれると。
2つめは、クロード・ガドゥーの「ローマ軍」というワインのポスター。1920年代から30年代にかけてヨーロッパで非常に人気のあったアール・デコの様式で描かれています。ローマ軍とおぼしき3人の兵士が、直線と曲線によってシルエットのように簡略化され、ワインボトルを掲げた同じ姿で重なって描かれ、その3人はワインの3つの種類―赤、ロゼ、白の3種類の色でそれぞれ配色されており、その色がつくるグラデーションと相まって、非常にリズミカルな構成になっているそう。
3つめは、カッサンドルの「ボナル」というキナ酒の一種のポスター。中央にお酒を瓶から飲む人物が、直線と曲線でシルエットとして描かれています。その直線と曲線が非常によい形を作っていて、ストライプにグラデーションの掛かった背景に対して、画面にはっきりとしたリズム感と整然さを与えています。ポスターは、モティーフと文字のバランスも重要ですが、このポスターは、人物が文字の上に立つように配置され、さらにその影が文字に重なることで、画面に奥行きまで出しているとおっしゃっていました。
「お酒という嗜好品を宣伝するために、ただずばりお酒を描くのではなく、お酒を連想させるモティーフを選んだり、ユーモアあふれる図柄にしたり、色彩の効果を十分に活かしたり、画面を時に繊細に、時に大胆に構成したり・・・。その様な造形の感性は、いつみてもデザイン豊かさを示してくれると思います。ポスターの多様で多彩な表現をご覧いただくと同時に、日本では聞き慣れないものもあったりする、ヨーロッパのお酒の文化にも触れていただける展覧会だと思います。」
※尚、写真は北海道立帯広美術館 敷田弘子氏からお借りしました。
(ポスターに乾杯!は6/11まで北海道立帯広美術館で開催中です。)

2023.0531 O.A 市立釧路総合病院 院長 森田研氏&循環器内科 認定看護師 本間渉氏 [close to you <dr.編>]

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今後、増加すると予測される慢性心不全の管理、循環器疾患治療についてのお話しです。
心不全とは心臓の機能が低下し、むくみや息切れが起こり、生命を縮める病気です。その原因は、高血圧、心筋梗塞、弁膜症、不整脈など様々とのこと。
その治療法とは・・・利尿薬や心臓保護薬の内服。そして、塩分制限を中心とした食事治療。さらに筋力低下や体力維持の為の運動療法等を組み合わせて実施。
心不全は、1年以内の再入院率の高さが問題なのだそう。それが特徴とも言えるそうです。
一度弱くなった心臓はなかなか戻らないので再入院の要因を予防する事が大事なのです。家に戻り、内服を怠る事と減塩の不徹底が4割ほどあるとのこと。ですから、その部分を徹底し、入院することなく自宅で過ごせる様にサポートなさっています。
もし、万が一自分が心不全になってしまったらどうすれば良いのでしょう?やはり、内服薬をしっかり飲むこと、減塩を意識した食事をすること、早期に病院に相談することが大切とおっしゃっていました。
「 心不全は治る病気では無いという事をしっかり理解して、自分が出来そうなことから始めるのが良いです。 減塩食は、1週間頑張ったら1日だけご褒美に少し塩分が高いものを食べるなど、ダイエットと同じように長続きするような方法を一緒に考えています。」
心不全患者は今後ますます増えていくようです。2025年には後期高齢者が増加し、心不全患者も増え「心不全パンデミック」時代になると。 釧路では全国と比べ高齢化率が高く、すでに心不全患者さんが多い現実があるそうです。
具体的に市立病院で取り組んでいる事・・・として。医師、病棟看護師、慢性心不全認定看護師、栄養士、リハビリ、連携室スタッフで心臓カンファレンスをしているそう。 何回も再入院を繰り返している患者さんや心不全初回の人を対象に、生活面や悩みなどの聞き取り 独居の方や家族のサポートが難しく再入院を繰り返したり、リスクがある人を対象に訪問看護を適応 実際に患者さんの生活の場を見ることで、より患者さんに合ったアドバイスが行え、再入院予防につながると。
「私も患者さんの家に行き、通常どのような生活をしているのか?それをきちんと把握した上で、アドバイスをすることがあります。なので、<市立病院とつながっていて安心>と言って下さる事が多く、安心感にもつながっていると実感しました。」
心不全は地域でケアをしていく時代。そうおっしゃっていました。ですから、市立病院と他の病院や施設とが混合した心不全チームを作り、道東地区の心不全患者さんが安心して暮らしていけるような地域にしたいと・・・。 今後の動きに注目ですね。


厚岸4牡蠣ブランド、それぞれの特徴(中嶋 均編) [varied experts]

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今回は、厚岸のブランド牡蠣、4種類のそれぞれの特徴や違いについて教えて頂きました。
・マルえもん (上左写真):現在、厚岸で一番多い、メインとなる牡蠣。
宮城の牡蠣種苗をホタテに付着させたカルチ盤をブドウの房のような状態で育てる垂下式という養殖技術を用いる。通常成貝になった時点でばらして出荷される。
また海水温の低いところに移動することで実入りをコントロールし、通年出荷する事が可能。 味は比較的濃厚、磯の香り強く、ワイルド感あり。
・カキえもん(上右写真):厚岸種を使い、厚岸で育てた純厚岸産の牡蠣。シングルシードという養殖技術を用い、生まれた時から一つ一つバラバラの状態にして
カゴで育てる。殻がきれいで実入りが良く、他の牡蠣に比べて小振りだが旨味が凝縮され、臭みのないあっさりとした塩味が特徴。
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・弁天カキ (上左写真):2016年に販売開始した新しい牡蠣。
ホタテの貝殻に厚岸で生まれた稚貝を数十個付着させ、1年程度養殖した後、ホタテから外し、カゴで養殖。どちらかというと味はカキえもんに近い。
・ナガえもん (上右写真)
三陸の海で生まれ育ったあと、ある程度大きくしたものを厚岸で育成された牡蠣。殻は平たく長い形が特徴。大ぶりな牡蠣。
1年以上違うところで育つので、その場所の味もあり。それが徐々に厚岸の味に変化していく。
※写真は中嶋均氏からお借りしました。

2023.0526 O.A 「難波再開発の道路の真ん中から・・・」 [varied stories]

田伏伸次さん(レコーディングスタジオクーパー代表)
https://studio-cooper.jp/

今回は外での収録。繁華街にいらっしゃるというのにとても静か、そこは難波の繁華街でした。
実は再開発のため、車道が歩行者天国になっているとの事。大阪万博にむけて着々と準備が進められている様です。
丸井や高島屋等の百貨店があるランドマーク的な場所が変わるそう。まるでパリの様なオープンカフェが立ち並ぶのでしょうか。
秋にはある程度完成するそうですが、現在は空きビルも目立つので、もしかするとそれも壊されてしまうのかもしれません。
また、万博の後にはIRも控えています。大阪の繁華街も相当様変わりしそうです。
全ては観光客を呼び込むためなのでしょうか。。。地元にいらっしゃる方の憩いの場所的な感じになれば嬉しいですね。
さて、観光といえば、今年の大型連休はものすごい観光客が戻ってきたそうです。特に外国からの観光客が目立ったと田伏氏。
「どうしてなのか不思議だったので、調べてみたんですよ。日本からたくさんの方が海外に出かけますよね。ということはその逆もあり、海外から安く日本に来ることができるんです。だから連休が終わったらパッタリとその姿はなくなりました。」
台湾、ベトナム、タイ、韓国、東南アジアから、また、欧米からの方もたくさんいらっしゃったとおっしゃっていました。
大阪のB級グルメに舌鼓といった方が多かったみたいです。
※写真は田伏伸次氏からお借りしました。下段の2枚の写真は完成予想図。
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2023.0525 O.A アイドル [chord 5]

・危険なふたり / 沢田研二
・恋する夏の日 / 天地真理
・赤い風船 / 浅田美代子
・わたしの彼は左きき / 麻丘めぐみ
・草原の輝き / アグネス・チャン
・個人授業 / フィンガー5
~今回は邦楽アイドル編。今から50年前1973年アイドルhits特集です。
セレクトは齋藤氏。出演 齋藤氏&midoriでお送りします。

海からみる湿原の役割:道東の海を潤す湿原河川(黒田 寛編) [fun science]

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釧路から根室へ広がる海岸線のすぐ近くには、いくつもの湿原が広がっています。釧路湿原、別寒辺牛湿原、霧多布湿原、風連湖や春国岱、根室半島湿原群等々・・・。
自然科学的にも本当に稀で貴重な地域であり、様々なタイプの湿原が点在していて、湿原を研究する専門家にとっても、釧路から根室までの国道44号線は興奮の連続だと。
また、湿原という保水性の高い土壌に希少な動植物が生息していたり、渡り鳥の飛来地や中継地になっていたり、面積はそれほど広大ではなくても、湿原は陸上生態系に
重要な役割を果たしていると考えられています。さらに、湿原は海の生態系にも影響を及ぼしています。
例えば、海水や汽水の湿原域は、アサリやシジミなどの二枚貝の重要な生育場所であることが知られている一方、この様な貴重な干潟域が人工的な埋め立て等により
どんどん日本から失われている現実があります。ただ、わかっていないこともたくさんあるそうです。
例えば、釧路川や別寒辺牛川のような湿原河川を通じて海に流れ出た淡水やその中に入っている栄養物質が、海、特に沿岸域の海洋生態系にどのような影響を、あるいは、どれほどの影響を与えているか?これは定量的に理解されていないとおっしゃっていました。
釧路湿原や別寒辺牛湿原が道東沿岸の海の生産性に影響しているのかどうかすら、確かな数値として未だ誰も示せないということ。
将来、この様な事がわかれば、湿原の新たな価値を海の生産性からも裏付けることができ、湿原を保全するための重要な方策や提言ができると期待をもっていると黒田氏。
そこで、2010年代の中頃から彼は道東湿原域が海に与える影響を調べるため、北海道大学をはじめとする全国の研究者と共同研究を始めているそう。
ほぼ手弁当で始めたそうですが、昨年度から比較的大きなプロジェクトが始まり、本格的に調査を開始。今までに分かっていることを概説していただきました。
まず、湿原を流れる河川の窒素やリンなどの栄養濃度はその他の河川に比べて決して高いわけではないという事。
窒素やリンは、海の植物プランクトンや海藻が増殖・成長するためには欠かせない栄養。窒素関連の栄養で硝酸塩という栄養物質があるのですが、その濃度は十勝川が90だとすると釧路川は20ほど。これは湿原河川の栄養濃度が低すぎるというのではなく、海の生産には十分な量。むしろ十勝川の栄養が十分すぎるという理解が正しいと。
一方、湿原河川で圧倒的に高いのが溶存鉄の濃度。湿原の周辺を散策すると、赤茶けた錆の様な油膜のような水たまりをご覧になった方もいらっしゃるかもしれません。
これは湿原からは大量の鉄が溶けだしている証拠で、このため湿原河川の溶存鉄濃度は非常に高くなるそう。
別寒辺牛川の河川水には、世界の河川平均の30~80倍の溶存鉄が含まれていることがわかっていると。ただ、この大量の溶存鉄は川から海に出て、塩分のある海水と
触れたとたんに海水から一旦消えるそう。これで鉄の運命は終わりではなく、海底に落ちた後じわりじわり堆積物から海水に鉄が溶け出るような過程を経て、
海の植物プランクトンや海藻に使われると考えられているそうです。
さて、道東沿岸域に影響を与えている湿原は道東の湿原だけではありません。道東沿岸にはアムール川の影響を受けた海水もやってきます。
アムール川はロシアと中国の国境付近を流れる大きな川、オホーツク海の北西部に河口があります。アムール川から流れ出た水や栄養物質が一旦オホーツク海に流出し、
その後サハリン東岸に沿って南下し、さらに北海道沿岸まで南下した後、北方四島や千島列島の海峡を通じて太平洋に漏れ出した海水の一部が道東沿岸までやってきます。
ですから、道東沿岸での海の生態系と湿原河川の影響を調べる際は、道東周辺の湿原河川だけではなくアムール川を含んだ『湿原河川と海のつながり』を調べる必要があるということなのだと。「湿原河川と海のつながりを明らかにする新しいプロジェクトは始まったばかりで、これから4年続きます。」
※写真は黒田寛氏にお借りした資料です。
※音声はこちら・・・https://open.spotify.com/episode/2Qb1RNUgxCdgOenmmJJJ2w

今年のキタサンショウウオの繁殖期(照井 滋晴編) [nature treasure]

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今年の春のキタサンショウウオの様子について。 今時期は、もう彼らの繁殖期も終わり、非繁殖期に突入しています。非繁殖期は、主に陸上で生活していて、鳴きもせず、活発に動きもしない時期なのでその姿を見ることはほぼ不可能な時期。 キタサンショウウオの姿を見ようと思うと、やはりオスもメスも繁殖水域に集まり活発に活動する繁殖期が一番。その時期が調査をするにも忙しい時期になると照井氏。
今年の繁殖期はいつ頃からいつ頃までだったのかというと、始まりは3月20日前後。「例年と比べ早いスタートで、私が把握している範囲では、これまでで最も早い繁殖期のスタートでした。単純に地球温暖化の影響だとは言えませんが、だんだんスタートが早くなってきている印象はあります。 この春に、30年以上前に精力的にキタサンショウウオの調査研究をされていた方が釧路市にきて、生息地の案内などをさせてもらったのですが、昔と比べて繁殖期の開始が1週間以上早くなっていて本当に驚かれていました。」今年は、釧路湿原も広いので場所によって差があるのですが4月上旬までに多くの生息地で繁殖期が始まり、4月の下旬頃にはほとんど新しく産卵された卵嚢を見ることがなくなったと。 ただ、今年は繁殖期中にも繁殖期後にもそれなりの降水量の雨天があったため、産卵された卵嚢が日照り続きで干からびてしまったという問題が発生した生息地は少なかったという印象とおっしゃっていました。
孵化した幼生が変態し上陸するのが8月頃なのでまだまだ試練の時間は長いのです、まだ、油断はできません。 ちなみに今年の繁殖期は、2019年以来コロナ禍の影響で実施できていなかったキタサンショウウオの観察会を実施したそう。 実は開催日まで心配事があり、当日まで本当にドキドキだったと。観察会の当日にキタサンショウウオを観察できるのかどうか・・・。 生きものを相手にしているので、見ることができないということも十分にあり得るのですが、できるだけ観察できる可能性が高い日や場所で実施したい。 観察会は4月22日に開催することに一か月以上前に決定していたので、タイミングが悪そうだからといってずらすことはできません。今年はキタサンショウウオの繁殖期のスタートが早かったので、観察会の当日まで1か月ほどあり、繁殖期が終わってしまっている可能性が十分にあったのです。 結果的には、繁殖期のピークは越えてしまっていたものの、観察会に参加してくれた子どもたちにはキタサンショウウオの成体と青白く光る卵嚢を観察してもらうことができたそうです。産卵されたばかりの卵嚢があったり、多くの個体が水中で確認できるわけではなかったので、本当にギリギリだったなという感じだったとおっしゃっていました。
「観察会では、一つだけ悔しかったことがあり、キタサンショウウオを見ることができた瞬間の子どもたちの盛り上がりもすごかったのですが、同じ水域の中を鳴きながら泳いでいるエゾアカガエルがとても人気者で、もしかするとキタサンショウウオよりもカエルを見たり触れたりする方が盛り上がったのではないかという点です。」 キタサンショウウオを未来の子どもたちにも見てもらえるような環境を守っていくには、キタサンショウウオという生きものについて、たくさんの人たちに知っていただくことが大切だと思うので、知ってもらう機会になる観察会は来年以降も続けていきたいと照井氏。
※写真は照井滋晴氏からお借りしました。
※音声はこちら・・・https://open.spotify.com/episode/6uQ6kqC2EP63tGE9jJ77xB

attraction of trick books~1 [close to you <art編>]

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仕掛け絵本というと、一度は触った、見たことがあるという方が結構いらっしゃると思います。
一番メジャーなのは飛び出すものでしょうか。。。
でもそれだけではないのです。折り方、切り方の変わったもの、紙の材質が通常のものとは違う感じのもの等々。
これは一体どうなるの?と思う仕掛けの数々。一体どうなっているの?と頭を悩ますものもあるのですが、全てはアート作品の集まりなのです。
このしかけ絵本は、登場したのが18世紀の中頃とされているそうです。ただ、仕掛けを施した本自体の歴史はさらに古く、13世紀にまで遡るそうです。当初は医学や天文学等実用的なものだったそう。現在の仕掛け絵本の技法自体は19世紀後半に大半が確立されたとの事です。
沼前氏のおすすめは・・・ドイツ メッゲンドルファーの「都市公園」。
今回の展示はぐるぐると螺旋状になっているのですが、そのほかにも組み方があるそう。組み方によって空間の見え方が異なるのです。
そこに現れるストーリーもまた変わってくるのかもしれません。
また、ブルーノムナーリの「きりのなかのサーカス」こちらは切ったり飛び出したりというものではないのですが、霧がかかった街を表現するためにトレーシングペーパーを用いています。霧がかかる街の雰囲気がよく伝わってくる作品です。
(美術館で体験!しかけ絵本の世界は7/2まで釧路市立美術館で開催中です。)

2023.0524 O.A 市立釧路総合病院 院長 森田研氏 [close to you <dr.編>]

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今回は人口減に関わる医療従事者の人材育成・確保について・・のお話しです。
合計特殊出生率(15~49歳までの女性の年齢別出生率を合計したもの)という数値があり、この数値が2を切ると、人口減少に転じると言われているそうです。
世界で最もこの値が高いのはイスラエル。政策として働く女性が安心して出産できる環境を整えている背景で、日本の5倍以上もあり、6以上。日本は1.3くらいとのこと。
世界最低なのが韓国で0.8台、どんどん人口が減っていくため、国家プロジェクトとしてロボットを増やして人員不足に対応しているそうです。
また、欧米諸国は1.6〜1.8くらいですが、それでも人口減少の可能性があるそうです。
出生率が下がると何が問題かというと、自動的に高齢社会になる、そして、若手の働き手がどんどん減るので地域格差もあり、日本全体では北海道の人口流出・減少が
大きくなるということ。40年前は10人の労働力で1人の高齢者を支えれば福祉は大丈夫でしたが、現在は2人に1人の割合で高齢者を経済的に支える必要があり、
ますます生産年齢への圧迫が大きくなっています。
病院も同じく、医療従事者はこの生産年齢層の人口によって支えられています。韓国では、社会で働く生産年齢人口が必要数を明らかに下回る状態になっていて、
生産年齢による労働力が慢性的に不足しているので、ロボットの導入でそれを補うことが通常となっているそう。ですから世界で最もロボット化が進んでいる国に
なっています。日本もそれに準ずる形で先進国の中では比較的ロボット化が進んでいる国になっているそうです。
「医療従事者は、他の業種と同様に、今後ロボットの導入を進めていき、不足する労働力を補っていかねばなりません。ただ、問題は、各専門職が細分化されていて、ロボット化が難しい専門職も結構るのです。技術が進み、自動化・ロボット化・デジタル化が待たれるところです。
市立釧路総合病院は比較的、他の病院に比べて、まだ医療従事者が多い施設ではあるのですが、全国各地域の同様な大きさの医療機関と比較した各専門職種の人員充足率は、2020年の最新統計によると、医師48.9%、看護師95.7%、薬剤師64.9%、医療事務60.8%、検査技師77.8%という状況でした。
特徴的なのは釧路は薬剤師と医師の数が圧倒的に他の地域よりも少ないということでした。」
地域に安心・安全な医療を提供するためには、各職種まんべんなくバランスの取れた人材供給をすることだと思います。
今後ますます生産年齢人口が減少し、対象となる高齢者・患者層が増大していくのはまぎれもない目の前にある現実。
「自動化・ロボット・デジタルによって業務を移管していくことと同時に、人材教育・発掘もしていかねばならないのです。」と最後におっしゃっていました。

深海の嵐〜海底乱泥流(満澤 巨彦編) [varied experts]

写真1:The Face of The Deep表紙.jpg写真2:ヘーゼン先生(上)とホリスター先生(下).jpg写真3:「深海の嵐」の発生エリアと海底ケーブルの切断の状況.jpg
前回、日本の3大深海湾の共通した特徴として、湾の中央に海底乱泥流の通り道、トラフと呼ばれる谷、があることを教えていただきました。
「大分前になりますが、海底乱泥流を「深海の嵐」と紹介した科学誌のコラムを読んだことがあります。そのコラムの基となった米国の海洋地質学者の著書は、アメリカの古本屋で見つけて手元にあります。『The Face of The Deep』直訳すると「深海の顔」。米国コロンビア大学の海洋地質学者のへーゼン先生とその弟子でウッズホール海洋研究所のホリスター先生の著書になります。」
「深海の嵐」については、1929年に北米東海岸、ニューファンドランド沖のグランドバンクと呼ばれる場所を震源とする地震が発生し、海底で大規模な斜面崩壊・海底地崩れが発生し、それがもとで海底乱泥流が発生。複数の海底ケーブルが浅い方から深い方に順番に切断されたという事故が<海底谷の大惨事>として紹介されているそう。
当時、大西洋にはすでに複数の通信用の海底ケーブルが斜面に沿って敷設されていて、浅い側から深い側に順々に障害が発生。つまりケーブルが切断され、その切断された時刻から海底乱泥流の速度を推定。その結果、震源域の斜面が急な場所では秒速28mほど、時速では90~100kmという驚きの事実が記載されていたそうです。「海底では秒速1mを超えるとかなり早い流れですので、驚異的な現象が震源域の斜面で起きていたことになります。風速30mというと外出は危険なレベルですが、それが風ではなく土砂が混ざった海水で流速毎秒28mですから海底ではまさに大惨事だったのではないかと思います。」
ただ、震源域で傾斜も急だったことから、乱泥流というより斜面崩壊で一瞬のうちにこのエリアの海底が動いた可能性があるそうですが、斜面が緩やかになるにつれ乱泥流の速度も徐々に遅くなり、最後の方は秒速6m位までに落ちているそう。また乱泥流の流れた距離は約750kmにおよんだことも確認されているそうです。
発生原因としては、地震というより大雨による土砂の河川からの流入によると考えられているとのこと。土砂を含ん泥流は密度が海水よりも重くなっていることから、海中でも長い距離を流れると考えられると。「深海の嵐」は、深海に囲まれた日本周辺でも発生しているそうです。
満澤氏が最初に「深海の嵐」の痕跡を見たのは、1993年奥尻島沖で起きた「北海道南西沖地震」直後の海底の調査。奥尻島の西側、日本海側の斜面で、海底で地崩れの痕跡があり、ヤギ類と呼ばれる海底からはえている生物(イソギンチャクの仲間)がなぎ倒され、カニが土砂に半分埋まって死んでいる様子を見ているそう。
その10年後、2003年の十勝沖地震では、JAMSTECが釧路沖の水深約2500mの海底に設置している海底地震総合観測システムで秒速2mほどの速い流れを観測。
北米の大規模な「深海の嵐」と比べると規模は小さいそうですが、この様な現象は地震の多い日本では頻繁に発生していると。
釧路沖と同様に、相模湾の初島沖の水深1170mの海底に設置している深海観測ステーションでは、近くで発生した伊豆半島東方沖群発地震の時に、小規模な乱泥流による濁りがゆっくりと迫ってくる様子が映像で観察され、エゾイバラガニと呼ばれる大きなカニが濁りから必死で逃げている様子も映っていたそうです。
4月に黄砂のニュースで砂嵐が雲のように迫ってくる映像をTVでご覧になった方も多いと思いますが、初島沖の深海では、規模は小さいですがまさに黄砂のよう濁りが迫ってきて、最後は周りが全く見えなくなるという一連の現象が記録されているそうです。
また、東日本大震災の時も、日本海溝の房総半島から宮城沖の本州側斜面で海底ケーブルが複数個所で切断されたことから、斜面崩壊や海底乱泥流が複数個所で発生していたことが確認されていると。「深海の嵐」は地震だけではなく、河川からの土砂の流入によっても発生し、相模湾や駿河湾でも、大雨の後に、深海で強流やひどい濁りが観測されているとおっしゃっていました。
「ホリスター先生からは、大西洋の深海では海底乱泥流とは異なり、陸上の低気圧のような渦が深海で発生している可能性があるという話を聞きました。その後、北米沖大西洋の深海では100kmを超える規模の渦が不定期に発生することが確認されていますが、この渦についてはまだわからないことがあり研究途上です。この現象はまさに「深海の嵐」と言って良いのではないかと思います。」
※尚、写真は JAMSTEC 満澤巨彦氏からお借りしました。
・写真上(左)はThe Face of The Deep表紙
・写真上(真ん中)はヘーゼン先生(上)とホリスター先生(下)
・写真上(右)は「深海の嵐」の発生エリアと海底ケーブルの切断の状況。黒い線が海底ケーブルで、海底乱泥流により途切れている様子が描かれています。