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日本海溝の深海の流れの新発見はナマコから(満澤 巨彦編) [varied experts]

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深海の流れ第2弾。深海、特に海溝内の流れについてのお話しです。日本の太平洋側にはたくさんの海溝が連なっていますが、その総延長はざっくりと1万km弱。
海溝の流れについては水深が深いということから、なかなか研究観測が進んでいなかったそうです。
一方で、北大西洋では比較的早くから深海の流れについての研究が行われていて、北米沖のカナダ東海岸のニューファンドランド沖からアメリカのフロリダ沖にかけては、
深層西岸境界流という南向きの深海の流れが定常的に存在することが知られていたそうです。
北太平洋は北大西洋よりも深かったこともあり、理論的には証明がされていなかったのですが、1994年の三陸沖で起きた地震の後に海底の環境の変化を調べるために
地震計や流速計を設置したところ、水深4000mの海溝の陸側斜面で南向きの定常的な流れが存在していることを確認。
ほかの場所、アリューシャン海溝や伊豆・小笠原海溝でも類似の流れがあり、深層西岸境界流が太平洋にも存在することが確認されたそう。
深層境界流が存在している事は、海溝の海側の斜面には深層西岸境界流とは逆の北向きの定常的な流れがある事がその数年前からわかっていたと。
やっとここでナマコの登場です。実は深海カメラで日本海溝の地形地質生物の調査を行った時に、海底のウシナマコがいつも同じ向きを向いていることに気づいたのです。
このウシナマコは流れていく方向に頭を向ける性質があるそう。そこで日本海溝の海側斜面上の底層流が北向きの流れであることを発見したのです。
水深6000mで海溝の大陸側で南向き、海側で北向きの流れが定常的に存在していることが観測機器により確認されたそうです。
例えばの話ですが・・・釧路川に捨てたレジ袋が、仮に釧路海底谷に沿って沈んでいき、千島カムチャツカ海溝の陸側斜面まで流れたとしたら、
その後10年から数10年かけて最終的にはマリアナ海溝まで深海を流れていいくことになるのです。もちろん仮定の話ですが、可能性としてはゼロではないのです。
※尚、写真は JAMSTEC 満澤巨彦氏からお借りしました。
・写真は全てウシナマコ(ⒸJAMSTEC)

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