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過去の津波が教えてくれること(満澤 巨彦編) [varied experts]

1OrphanTsunamiの表紙.JPG 2ゴーストフォレスト.JPG 3地震の発生と津波到達の時刻.JPG
今回は過去の津波について。まずは津波はどうして起こるの?というお話しから。津波は地震で海底の断層が動くことや、火山噴火で山体崩壊が発生し、海に流れ込むことで津波が発生します。また、最近の研究では海底の斜面崩壊でも津波が発生することが分かってきたそうです。津波の伝わる速度は沖合ではジェット機並みの速さと言われていますが、海底が浅くなると波高が高くなり、その分速度は遅くなるという特性があります。
さて、現代の様に情報網が発達する前に、遠いところで発生した地震による津波についての興味深いお話ですが・・。
満澤氏がシアトルに滞在していた時にアメリカ地質調査所の研究者からお聞きになった江戸時代のこと。
日本時間1700年、1月27日の夜中から28日明け方にかけて、日本の太平洋沿岸の和歌山県から岩手県のいくつかの港で津波の被害が発生したことが、
各地の役場や港の記録から確認されています。ところが、その津波がどこで起きた地震によるものなのか当時は現在の様な観測体制はなかったことから
発生元となる親がわからない、つまり原因のわからない津波として「みなしご元禄津波」と呼ばれていたそうです。
英語ではthe Orphan Tsunamiと表現されていました。Orphanとは孤児という意味です。
その研究者によると、約300年前に北米のパシフィックノースウエストと呼ばれる北西部、カナダプリティッシュコロンビア州から、アメリカのワシントン州、オレゴン州、カリフォルニア州の北部にかけてかなり広い範囲で津波の痕跡が地層から確認されていて、さらにゴーストフォレストと呼ばれる立ち枯れの森が各地で確認されているそう。
野付半島のトドワラをイメージしていただくとわかりやすいかと思います。その地震の津波堆積物やゴーストフォレストで立ち枯れた木の年代測定から1700年頃
発生していることは確認できていました。また、インディアンには伝説の鳥サンダーバードとクジラ、熊が大喧嘩して天と地がひっくり返ったという様な
伝承や絵が残されているそう。様々な記録を日米の研究者が協力して詳細に調べ、被害の発生した時刻や範囲から逆算して、この地震は現地の時刻で1700年1月26日21:00頃に発生し、その規模がマグニチュード9前後であったことを推測することができたそうです。
シアトル沖、パシフィックノースウエストのカスカディア沈み込み帯ではプレート境界型の地震が300~500年くらいの間隔で発生しているのです。
先の地震からすでに300年が経過していることから2011年の東北地方太平洋沖地震のような巨大地震、地元ではBig Oneと呼ばれ、その発生が心配されているとのこと。
「この機会に釧路周辺の災害碑や展示施設など過去の地震や津波についての痕跡を確認し、発生時の行動について再確認してみてはいかがでしょう。」
※尚、写真は JAMSTEC 満澤巨彦氏からお借りしました。
・写真左上はOrphanTsunamiの表紙
・写真中央はゴーストフォレスト
・写真右上は地震の発生と津波到達の時刻

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