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温泉を科学する2〜釧路市内の温泉(尾山 洋一編) [nature treasure]

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釧路でも市内と阿寒湖地域では温泉のタイプが大きく異なり、結論から言うと、市内の温泉は主に海水が起源の非火山性温泉、阿寒湖地域は雨水が起源の火山性温泉。
雨水が起源か、海水が起源かを区別するのに最も簡単な方法は塩の成分である「ナトリウムイオン(Na+)」と「塩化物イオン(Cl-)」をみること(塩はNaCl)というのがあるそう。海水は塩の濃度が高いので「ナトリウムイオン(Na+)」と「塩化物イオン(Cl-)」の濃度が雨水と比べてとても高いのです。
市内の温泉の塩化物イオン濃度は約2000〜4000mg/l、海水の1/5から1/10程度。これに対して阿寒湖温泉の塩化物イオン濃度は100mg/lに満たないと。
市内の温泉は化石海水なのか、現在の海水なのか、プレートに引きずり込まれた海水のどれかということなのですが、化石海水ではないかと尾山氏は考えています。
化石海水の特徴はカルシウムイオン(Ca2+)の濃度が高いこと。現在の海水のカルシウムイオン濃度は約400mg/l, これに対して市内の温泉のカルシウムイオン濃度は大体2000から4000mg/lと5倍以上高いそう。どうしてカルシウムイオンが高くなるかというと、化石海水は非常に長い時間、地中に閉じ込められているので、周辺の地質と海水との接触で、カルシウムイオンを徐々に溶かし出だしているから。実際、市内の温泉は地下1000mより深い所から採取しているそうです。
市内の温泉が化石海水ということから、実は現在の北海道の成因まで話が広がるのです。北海道はユーラシア大陸側にあるプレートとオホーツク海側にある北米プレートが衝突することで出来上がっているので、市内の温泉は、北米プレートがユーラシアプレートにぶつかって道東地域を作り出す際に地中に閉じ込められた海水なのではと想像することができると尾山氏。他には、市内の温泉でもちょっと変わった化石海水起源の温泉があると。山花温泉は市内の他の温泉と違いヨウ素イオンの濃度が高いので、茶色っぽい色をしています。なぜヨウ素が高いのかについては詳しく分かっていないそうですが、他の地域のヨウ素の濃度が高い温泉の研究を見ると、ワカメやコンブがヨウ素の起源であるという結果が示されているとおっしゃっていました。この様に他の地域の研究例から大昔の道東地域の海で海藻が豊かに生育していた様子が想像することができるのです。海水起源の温泉は溶けているイオンの濃度が高いので温浴効果が高いこと、そして、タラソテラピーと呼ばれる海洋療法に代表される美容やリラックス効果が期待される温泉でもあるのです。
※写真は尾山洋一氏からお借りしました。

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