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道東沿岸〜沖で発生した赤潮(黒田 寛編) [fun science]

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「釧路に赴任して10年。海を見て毎日悲しい思いになったのは今回が初めて。水産関係者の悲痛な思いを背中に感じながらこの2ヶ月フルパワーで原因の解明に取り組んでいます。」今回の赤潮はカレニア・ミキモトイとカレニア・セリフォルミスを含む複数種の赤潮プランクトンが検出・報告されています。赤潮と言いますが、道東の場合は海が赤く染まるよりも濃い緑色に染まるという特徴が・・・。一般的に赤潮は海の富栄養化といい、人間活動等が影響して沿岸水が汚れる事で生じる場合も多々あるそうですが、道東はこれには当てはまらないそう。道東の海が親潮のおかげで栄養豊かな海である事が災いし赤潮の悪態に繋がっていると推察しているそうです。
カレニア・ミキモトイは、西日本や中国沿岸など北緯40度以南でしばしば漁業被害を引き起こす赤潮プランクトン。北海道では2015年秋に函館湾で初めて検出。日本海に起源があり津軽海峡を通って函館湾まで輸送されたのでは?と考えられているそうです。カレニア・セリフォルミスは日本で初めて道東赤潮から検出されました。国内ではセリフォルミスに関する知見が殆どない事が事態の把握を遅らせているそう。また、2020年9〜10月にカムチャッカ半島の東側で、カレニア・セリフォルミスが甚大な海への被害を生じた事があるそうです。道東と同じ様に様々な海の生き物が死んだことが報告され、赤潮プランクトンの様子を衛星画像を見るかぎり道東で生じた赤潮よりも大規模に赤潮が生じたことが推察されていると・・・。黒田氏は海のシミュレーションを用いて、赤潮プランクトンがどこから流れてきたかを調べました。まだバーチャルな推定なので、この結果が正しいかどうかの証拠は今後、収集・集約されるデータが鍵となる事は間違いないでしょう。もう一つ重要なポイントは、今回の道東赤潮の起源推定を難しくしているのは、道東~北方四島周辺で限定的に赤潮が生じている事。人知れず、赤潮プランクトンの種が道東~四島周辺に流されてきてそこで爆発的に増えるので、赤潮プランクトンが増える前の状態や経路が衛星画像から追跡することができないのです。さらに、今回の赤潮の引き金となっていると考えている現象が、7月中旬~8月中旬に生じた海洋熱波(海面水温の高水温化)。この海洋熱波は、データのある過去40年の中で最も大規模で、強烈な高水温化であったことを報告していて、それが終息した約1ヶ月後に赤潮プランクトンが爆発したのです。昨年、東カムチャッカで生じた赤潮でもその1〜2ヶ月前に強烈な海洋熱波が生じているそう。ただ、海洋熱波と赤潮発生までの因果関係がわかっていないと・・。海洋熱波も赤潮の大発生も、両方とも稀にしか起こらない変動。大規模な発生要因を調べることが非常に難しいという側面があるのです。「世界各地で起こった事例と道東の事例を徹底的に比較して、その要因解明に努めることが今後必要になります。まだまだ想定外の被害(二次被害)は生じるという仮定の下で今回の激甚災害と向き合う必要がありそうです。」

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