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最新の赤潮研究情報(黒田 寛編) [fun science]

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昨年9月中旬に道東沿岸で前代未聞の大規模な赤潮が発見されてから約半年が経ちました。
昨年11月に赤潮の状況や、赤潮プランクトンがどこから流れてきたのか?なぜ発生したのか?といったお話しを伺いました。
その後、昨年12月には赤潮が終息したことが北海道立総合研究機構から発表され、その後、赤潮の再発は確認されていません。
さて、この半年に3つの研究が学術論文に掲載されています。 そのうち2つが黒田氏の実施・執筆した研究で、もう一つが東大の岩滝准教授が実施・執筆された研究です。
まず、岩滝氏の研究に基づくと、赤潮プランクトンの優占種はカレニア・セリフォルミス(Kr. selliformis)です。ただし、赤潮の構成種は1種類ではなく、
Kr. mikimotoi(カレニア・ミキモトイ)/ Kr. longicanalis(カレニア・ロンギカナリス)/ Karlodinium sp.(カルロジニウム)/
Takayama cf. acrotrocha (タカヤマ cf. アクロトロカ)/ Takayama tuberculata (タカヤマ ツベルクラタ)/ Takayama sp.(タカヤマ sp.)
※cf.:特定の種または亜種に同定したものの、さまざまな理由によりタイプ標本を直接参照することができなかった。  ※sp.:種名が特定できない1種
さらに、カレニア・セリフォルミス、顕微鏡下で形態が異なるのです。まるで七変化。新聞でお馴染みの緑の葉緑体が目立つものから透明の個体まであり、
全く同じ種の生物とは思えません。現在、遺伝子等の情報を使い顕微鏡下での形態判別以外からカレニア・セリフォルミスを特定する為の技術開発が実施されているそう。
もう一つの研究が、黒田氏のチームで実施した研究結果。昨年の10月~11月に、新聞やテレビでは空から赤潮を撮影して赤潮の発生海域で、海の色が明らかに違うことが
報道されていました。赤潮の発生した海域は、黄褐色、あるいは、赤褐色のビールが濁った様な海の色をしていました。
最近、黒田氏の研究チームで、人工衛星の海色センサーから海面付近にカレニア属がどれくらい居たのか?ということを定量的に推定することに成功したのです。
「人工衛星はそれぞれの色を波長別に分け、海から出てくる光の強さを認識。カレニアの細胞数を推定する際、私は人工衛星が観測した赤に近い波長帯を利用しました。」
カレニア赤潮の中心は、水深が200mよりも浅い大陸棚域にあり、道東一帯の大陸棚域で典型的なカレニアの細胞数が1mLあたり数千細胞にもなったそう。
大陸棚域でのカレニア分布の中心付近では、小さじ1/5杯の中に、数千細胞のカレニアがいたということ。かなり濃密です。
さらにカレニアは、いくつもの筋の様な構造で分布していたことも人工衛星からの推定で明らかになったのです。
さらに、驚きは、筋状に伸びる一つの筋の中で、カレニアが特に濃密に分布する場所が点在していて、その様な場所では、カレニアは1mLあたり数万細胞を越えていたと。
この様にカレニア密度のマップが人工衛星から推定できるようになった事で、いつ?どこで?どれほどのカレニアがいたのか?という基礎的なことを知る事ができる様になったのです。次のステップは、人工衛星から推定したカレニアマップと実際の漁業被害を重ね合わせることで、漁業被害を引き起こしたカレニア赤潮の動態をより詳しく理解する必要があると黒田氏。今後も赤潮の研究は続いていきます。
※なお、写真は黒田寛氏にお借りした資料です。

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