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エジプト カイロの病院のこと(黒田 理編) [varied experts]

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2000年9月から3年間、カイロ支局にいらっしゃった黒田氏、20年前のことですから、変化している点もあると思いますが、今回は病院事情について伺いました。
ご自身というよりお子様がお世話になったようです。「私の息子はカイロで生まれました。」
医療技術や設備は日本とは大きな違いがあり、医務官からは輸血が心配なので、その可能性があれば日本で産んだほうが良いと言われたそう。
でもその心配はなく、妊娠は順調だったので大丈夫だろうとカイロで出産。
カイロでは、産婦人科の病院にかかるのではなく、まず医師を選び、その医師が出産するための病院を選ぶという流れ。検査のときは選んだ先生の診療所に通うそう。
「すごいのは他のお医者さんもそうですが、なにかあれば朝でも夜でも先生の携帯電話に電話をして指示を仰げること。初産でもあり、これはかなり安心でした。」
出産は先生の勧めるまちなかの病院。今までお世話になっている医師と手伝いの医師も来て、対応してくれたそうです。
「私も立ち会ったのですが、面白かったのは息子を取り上げた後、流しの蛇口の下に体を持って行き、水道の流水で洗ったことです。そしたらわっと泣き出しました。」
病室はスイートルーム。日本でいえば特別室のような感じ。ベッドがあり、隣の部屋にはソファセットも。日本の普通のホテル1泊くらいの値段だったそうです。
その後、男性の小児科医にお世話になったそうですが、彼はJICAの関係で日本に来たことのある方で、かたことの日本語で会話ができたそう。
カイロでは、注射は医師ではなく、薬屋さんで打つそう。医師から処方箋をもらい、薬局に。日本のドラッグストアとは全然違い、薄暗い薬局で注射を打たれるのは不安だったとおっしゃっていました。
1歳にもならない息子さんは中耳炎に悩まされたそうです。寝ていても、耳が痛くなり泣き出します。季節は夏。カイロの医師は1~2ヶ月、ヨーロッパや地中海に面した
エジプトの都市等にバカンスに行きます。お世話になっている小児科医が不在時、中耳炎がひどくなり、注射を打っても治らず、代役の先生は手術をすすめたそうです。
それだけは避けたいと思ったそうですが、幸い、別の耳鼻科の医師に診てもらい、何本目かの注射を薬屋の暗い店内で打つと奇跡的に快方に向かったそうです。
「本当に奇跡だったと思います。その先生までが本当に、文字通り「ミラクル」と言ったほどですので。いま思い返しても冷や汗ものです。」
エジプトの貧富の差は、日本では想像がつかないほど。街にはものもらいの子がたくさんいるそうです。住む家がなくて、お墓に住んでいる人たちもいたと・・・。
もちろん医療費を払えない人はたくさんいるのが現実。カイロで救急車は有料。お金がなかったら、救急搬送もされません。
そこでお金のない人は、無料の医師に診てもらうのです。イスラム教の寺院、モスクがまちの至るところにあり、そこに医師が来て、無料の診察をしてくれるそうです。
生活のあらゆる面でこの様な支援の手がさしのべられていると。社会保障制度など無いに等しく、それを補っているのが宗教に基づく助け合いの精神。
善行を行えば、天国でよい思いができると信じられているのです。
この様な医師、イスラム原理主義と呼ばれる集団に属する人が多くいるそうです。「エジプトではムスリム同胞団と呼ばれています。これを政府は目の敵にしているんです。
エジプトでムスリム同胞団は非合法な組織。武力に訴えるイスラム過激派ともつながります。高度な教育を受けた人たちがあまりの不平等・不公平に義憤をたぎらせるという面もあると思います。」大多数の貧しい人たちは当然、この様な医師、組織を支持します。これは中東のどの国でも一緒だそう。
パレスチナでは、ハマスという やはりイスラム原理主義組織があり、敵対するイスラエルはもちろん、同じ仲間のはずのパレスチナ自治政府とも敵対しています。
「でもいくら攻撃されても壊滅することはないでしょう。逆に人々の支持を集める。それは本当に貧しい人にとっては自分たちの暮らしを守ってくれるからなのです。」

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