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ザトウクジラにまつわるあれこれ(笹森 琴絵編) [nature treasure]

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夏を餌場の高緯度で過ごし、冬は低緯度で繁殖活動するザトウクジラは、体長13~15m、長い胸びれと派手なパフォーマンスで鯨類界随一の有名種。
野生動物は、思いつきで適当にあちこちで過ごしているわけではなく、ちゃんと訳あってそこにいます。
ザトウクジラが釧路沖に現れる理由は季節移動の通過海域になっているためなのです。ちなみに目的地は、日本沿岸だと沖縄、小笠原、南九州以南あたりが中心。
笹森氏は2015年冬に、ザトウクジラの越冬海域で有名な沖縄県慶良間諸島の座間味で釧路を通るザトウを沖縄でみつけようと題して、地元の子供や観光客対象のイベントを行いました。さかまた組は、釧路でやっていたこととほぼ同じ様に写真展や地元のウォッチング協会と合同で講演会、親子対象の見学ツアーなどを実施。
参加者が喜び、釧路の海についても興味を持ってくれたことが一番の成果ですが、釧路を通過していく個体数頭が座間味にも来遊していたことが、双方のカタログ照合で
実際にわかったというのも大きい成果。通過点あるいは回遊目的地点という、点と点がつながり、回遊コースの一部が線になったから。
ところで、近年、このザトウという種が、回遊の到達地点をこれまでの南の海より北上させていることがわかってきたそうです。
冬を過ごす海というのは、彼らにとって繁殖や子育てなど種を維持するために必要な海域でとても重要。温暖で穏やかであることが最重視されます。その海域を伊豆諸島の八丈、御蔵、三宅周辺あたりへ変更するグループが出てきているのです。
そもそも高緯度の夏の餌場でしか食事せず、繁殖域や回遊の途中では断食している彼らにとって、もっとも大切なのは繁殖や子育てに適した水温。
「伊豆諸島あたりで大丈夫、という事は、単純に考えれば、冬のこの海域が小笠原や沖縄に匹敵する水温まで上がってきていることがわかるのです。
いつも話している通り、プランクトンや小さな魚、あるいは水温といった目につきにくく、なかなか定期的な観測対象とされない“物や事”より陸からも船からでもその存在の有無が比較的わかりやすい鯨類の行動は、海の変化に気づく格好の指標となりうるので、伊豆諸島のザトウはその良い例かもしれないですね。」
さて、この冬、東京都伊豆諸島三宅島で、ザトウクジラの調査が始まるそうです。ドローンを飛ばして、噴気を取り、DNAを調べるというものです。
実は、さかまた組でも2016年にシャチをターゲットにやってみたことがあります。でも、ドローンで噴気を取るのは意外と難しかったと。噴気の量や勢い、風向き、
ドローンの接近角度や高度、サンプル確保後は汚染されないよう事前に様々な段取りが必要等、考慮しなくてはならないことが結構あったそうです。
それより何より、想定以上にシャチがドローンを意識したことが最大の懸念事項で。結局、ドローン作戦は成功する前に中断したそう。
「今、まさに私たちが目にしている野生動物の行動生態は、私たちの時間間隔では想像もできないような、ずっと大きな流れの中で定着したもの。
例えば、数十年とか数百年とか。それが変わっていくのを目にする、その時代の潮目にいるという事の意味を私たちはもっと深刻に捉えた方が良いと思います。
私達の行動が、自然界という壮大な大舞台で連綿と築き上げられたバランスや連携、つながりといったあらゆる秩序をぶち壊しにしているかもしれないから。
私自身は、今の状況をとても恐ろしいことだと感じているんです。」
※写真は笹森琴絵氏からお借りしました。
※音声はこちら・・・https://open.spotify.com/episode/28q8XCa6Dn4ddLLZ8U3tIk

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