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湖を研究する〜植物プランクトン5〜(尾山 洋一編) [nature treasure]

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シリーズの最後に紹介するのは、渦鞭毛藻という植物プランクトン。湖ではあまり出現しないそうですが、とても変わった特徴をもっている生き物。
この植物プランクトンは鞭毛という細長いひげの様なものが数本生えていて、この鞭毛を使って自由に泳ぎ回ることができるそうです。
鞭毛を使い渦の様に回転しながら泳ぐ性質から渦鞭毛藻と名付けられました。赤色がかった茶色。ペリディニンという渦鞭毛藻特有の光合成色素を持っている為とか。
ペリディニンは、太陽の光のうち青と緑の光を強く吸収する色素。黄色や赤色の太陽光が吸収されにくく、一部が反射されるため、赤色がかった茶色に見えるのです。
また、渦鞭毛藻の中には触手のような器官をもつものもいて、触手で餌を捕まえて栄養をとったりするそうです。
湖ではマイナーな渦鞭毛藻ですが、海ではあまり好ましくない形でメジャーな植物プランクトン。渦鞭毛藻が異常増殖すると、海が赤茶色く変色して見えるようになり、
これが皆さんご存じの「赤潮」という状況です。植物プランクトンは日中は光合成と呼吸をしていますが、夜は光合成できないので呼吸だけしています。
ですから、赤潮のような異常増殖状態になると、呼吸によって海の中の酸素がたくさん使われ、海が酸欠状態になるのです。
魚は呼吸しかできないので、海の中の酸素が少なくなると生きていけません。それで魚の窒息死などの漁業被害を引き起こすということ。
因みにヤコウチュウは、夜になると波打ち際で青白く光ってとても綺麗ですが、ヤコウチュウも渦鞭毛藻の仲間。ヤコウチュウは発光するので、夜に光って見えるのです。
他に渦鞭毛藻の様に赤潮をつくりだす原因となる植物プランクトンの中には、毒素を作り出すものがいます。
植物プランクトンは貝類の餌にもなるので、毒を持つ植物プランクトンをたくさん捕食することで、体内に毒素が蓄積されます。いわゆる貝毒の原因となるのです。
貝毒には、主に麻痺性,下痢性,神経性の3種類あり、これらの多くは毒素を持つ渦鞭毛藻が原因となっているそうです。
渦鞭毛藻は人間にとって困った生き物だと思ってしまいますが、中には毒を持たない渦鞭毛藻もいて、魚や貝の餌として食物連鎖を支えているとのこと。
さらに、南国の海を彩るサンゴ礁、あのサンゴの色は渦鞭毛藻が作り出しているそうです。渦鞭毛藻がサンゴに寄生したり、共生したりしているそう。
この様な渦鞭毛藻の仲間は「褐藻虫」と呼ばれているそうです。サンゴの中で生活している褐虫藻が、光合成によって炭素を作り出し、サンゴに供給しているのです。
サンゴは炭素の一部を粘液として海に出しているのですが、この粘液がバクテリアや海底で暮らす生き物に利用されているそうです。
つまり、サンゴと褐虫藻が海の生態系の一部を支えているということなのです。
最近は、地球温暖化の影響でサンゴが白くなったというニュースを耳にします。これはサンゴの中から褐虫藻が出て行ってしまうためなのです。
「自然は様々な生き物が互いに関係しながら作り出されています。サンゴは南国の生き物ですが、このような事例を教訓に・・・
私たちが暮らす釧路でも、周辺の生き物の変化を見逃さずに、自然環境がどのように変わっているのか注視していく必要があると思っています。」
※写真は尾山洋一氏からお借りしました。なお、渦鞭毛藻の写真はwikipediaから。CC BY-SA 3.0 NL
※音声はこちら・・・https://open.spotify.com/episode/2Undyql0BkGoC8Cz1X4ZQJ

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