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漂流者は海嶺を越えて(満澤 巨彦編) [varied experts]

1JAMSTEC横浜研の地球を模した半球スクリーン(海流を投影).jpg2本州から離れる黒潮の様子(黄色の筋).jpg3「海嶺」文庫本(上、中、下).jpg
日本の周辺の代表的な海流は、暖流として黒潮、寒流として親潮があります。
日本の南側を流れる黒潮は房総半島を超えたあたりで東に向かって流れますが、その勢いは徐々に弱くなります。
また、釧路沖を南西に流れる親潮も宮城県沖あたりで黒潮とぶつかり、東に向きをかえます。
東に向きをかえた黒潮、その北側を流れる親潮はその後無くなるのではなく、特に黒潮は最終的にはアメリカ西海岸まで続いているのです。
黒潮続流と呼ばれ、蛇行を繰り返し、沢山の渦を形成し、東に流れていることが衛星観測やスパコンによるシミュレーションで確認されています。
東日本大震災で発生した津波による流失物が北米の西海岸に多量に漂着したというニュースもありました。
さて、三浦綾子さんの小説「海嶺」。「海嶺」とは海の嶺、つまり海底山脈の事を言います。海溝は溝でプレートが沈み込む場所で形成されます。
海嶺は海底の山脈で、地球科学では海底が拡大し、プレートが生まれる場所のことをいうそうです。
小説の題名が「海嶺」なのは、漂流者が海の嶺を超えて漂流するという事、そして、助けられた後も様々な試練があり、それを乗り越えるという事からきているそうです。
小説では、静岡県沖の遠州灘で遭難した千石船が黒潮系の流れに乗って1年2ヶ月かけて北米西海岸のカナダに近いオリンピック半島に漂着し、
生き残った3人の若者がその後日本に帰ろうとするのですが、鎖国により帰ることができなかったという史実をもとに描かれています。
満澤氏はカナダの海洋研究所にいらした時にこの小説を知り、米国のワシントン州南のオレゴン州との州境にあるバンクーバーに行き、記念碑を見てきたそう。
さて、日本では巨大地震に備えて・・という話題が報道されています。「南海トラフの巨大地震が発生した時の海洋流失物の対策も重要な課題だと言えると思いますが、
私が知る限りでは、十分な対策がなされている状況ではないと思います。地球温暖化同様、今後対策が求められる重要な課題だと思います。
私たち個人でできることは小さいですが、SDGs的には少しでも環境に優しい生活を心がけるということが必要でしょう。」と満澤氏。
※尚、写真は JAMSTEC 満澤巨彦氏からお借りしました。
・写真左上はJAMSTEC横浜研の地球を模した半球スクリーン(海流を投影)
・写真中央は本州から離れる黒潮の様子(黄色の筋)
・写真右上は海嶺」文庫本(上、中、下)

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