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3.11「ちきゅう」での出来事(満澤 巨彦編) [varied experts]

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東北地方太平洋沖地震が起きた3.11の時、満澤氏は広報課長だったので、JAMSTEC調査船の一般公開や見学について受け入れ担当者として現場対応をしていたそうです。
3月11日午後、「ちきゅう」は八戸港に着岸中で地元の小学5年生48人と校長先生や担任の先生4人、52人の見学が行われていました。
いくつかの班に分かれ、JAMSTEC職員数名が引率して船内見学をしていたそうです。
満澤班は研究ラボの見学中、ホワイトボードの前で研究者の説明を聞いていた時に、急に船体が「がたがた」と振動し始めました。
船の揺れとは違う振動で、一瞬なんの振動かわかりませんでしたが、すぐに地震による振動だと思ったそうです。
午後2時46分過ぎ、振動は2分位続いたと記憶していると。子供たちにしゃがんでじっとするように指示。このまま、震動が治まらないのではないかと、不安に感じたとも。
震動がおさまりしばらく子供たちと一緒にその場で待機し、船内放送で船内の集合場所の指示が出たため、子供たちを連れてその部屋に移動。
班によっては船の上部にあるヘリポート見学中の班もあり、その中央に集まって震動をやり過ごしたそうですが、とても怖かったのではないかとおっしゃっていました。
子供たちを不安にさせないように地震が発生してからずっと子供たちと一緒にいたので、実際に外がどのようになっているかは知るすべがなかったと。
幸い子供たちの付き添いで、校長先生、担任の先生3人も一緒だったので、皆、落ち着いていて、私たちと一緒にきっと降りれることを期待して待っていました。
地震発生後1時間位で津波がきたのですが、「ちきゅう」は5万トン級の大型の船。
部屋の中では揺れというより、スラスター(プロペラ型の推進器)の音が普段と違いかなり船内に響いていたそうです。「私の経験から、スラスターを使い、
岸壁から離岸して沖に出ようとしている?と思っていたのですが、実際は八戸港の中で津波に翻弄され船の位置保持ができなくなっていたんです。」
船が津波で流されないように、船の先の左右、両舷のアンカーを降ろして位置保持しようとした状態で1回転以上したため、左右のアンカーが絡んでしまったり、
船底についている6台のスラスター1台が岸壁に接触し脱落したりと「ちきゅう」自体も相当なダメージを受けていたのです。
船長以下船員も必死で操船して対処したことで、ダメージはあったものの岸壁に乗り上げるという最悪の事態はさけることはできましたが、「ちきゅう」は八戸港の中で、着岸することも動くこともできない状態となってしまったのです。結局、地震が発生した11日は、子供たちは降りることはできず、船で一泊することに。
「ちきゅう」にはヘリポートがあるので、それを知っていた八戸市議や八戸市、青森県が海上自衛隊に依頼し、急遽12日の昼過ぎに海上自衛隊の救難ヘリコプターが来る
ことになり子供たちと先生を無事におろしてもらったそう。子供たちの学校は内陸にあったので、津波の影響もなくご両親ご家族も無事であったと後で聞いたそうです。
「私たちも、その後14日に、連絡船で下船することができました。その時、八戸港の岸壁の上に大型の漁船数隻が横倒しでうちあげられているのは衝撃でした。」
乗船していた子どもたちとは、その後、何度か会う機会があり、彼らが高校3年生になった時には八戸市の協力で「ちきゅう」の一般公開に招待したそうです。
「子供たちの中には船の機関士になりたいと言っていた子もいて、その子ら数人を「ちきゅう」の機関室に特別に案内したりもしました。
その子は今、機関士になって船に乗っていると聞いています。」
「ちきゅう」はその後修理され震災の翌2012年、東北地方太平洋沖地震調査掘削、JFASTというプロジェクトで、地震の原因となった断層帯の掘削を行い、
まさに滑った境界部分の試料採取に成功し、また地震時に動いた断層の摩擦熱を計測するため高精度温度センサーで構成された長期孔内観測装置を設置するなどを実施。
この時、長期孔内計測で設置した温度センサーは2013年に「かいれい/かいこう」で回収しているとのことでした。
○「ちきゅう」船内の小学生に関する情報(発信情報の履歴の3/11、3/12参照)https://www.jamstec.go.jp/j/jamstec_news/earthquake201103/
○東北地方太平洋沖地震調査掘削の解説(ジュニア向け、大人の方もどうぞ)https://www.jamstec.go.jp/j/kids/press_release/20131206/
※尚、写真は JAMSTEC 満澤巨彦氏からお借りしました。
・写真は2017年9月16日 6年後の再会(八戸港)

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