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陸上での海氷実験・・・その後(中山 雅茂編) [fun science]

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2~3月の冬の間に行った「陸上での海氷実験についてご報告」について。「私自身は海氷の研究を約30年ほど続けています。海水が凍ってできる氷のことですね。普段の会話では、流氷ということが多いですね。」
北極や南極の海に広がる海氷を人工衛星によって日々継続的に観測し始めたのは、アメリカが1978年10月に打ち上げたNimbus7という人工衛星。極域に広がる海氷の面積を日々、知ることができます。
気象庁の発表によると、北極域の海氷域面積は、1979年以降長期的に減少しています。
特に、年最小値は減少が顕著で、1年当たりの現象量は北海道の面積に匹敵します。  
一方、南極域の海氷域面積は、1979年以降年最大値に長期的な増加傾向がみられます。と。
https://www.data.jma.go.jp/gmd/kaiyou/shindan/a_1/series_global/series_global.html
面積の変化でみると、北極では明らかに減っていて、南極では増えているようなのだとか。
北極域の傾向は、年最大面積も年最小面積も減少している事が明らか。一方南極は、年最大面積がわずかに増加傾向に・・。
ただ、よくよく見ると、年最小面積は、1995年頃から変動が大きく、減っているとも増えているとも言えない変化を示しているそう。
現在は、北極では明らかに海氷の面積が減少していることに加え、船舶や係留ソナーという機械を海底に設置して氷の厚さを調べ、氷の厚さも薄くなっていることが
わかっているそうです。でも、この氷の厚さを人工衛星で調べるのがとっても難しい。そこで、中山氏のグループでは、陸上で海氷の実験を行っているのです。
この研究を始めた頃は、サロマ湖で実施していました。サロマ湖は海水が入り込んだ湖なので、冬に凍ると海氷。周りは陸で囲まれているので、海の流氷のように
沖合に流れていく心配もないので、テントを張って数日観測したこともあるそう。でも、大変なのが、天候。低気圧が来ると雪が降り、翌朝には雪が積もり、調べたい氷の条件とはまるっきり変わってしまって、もう一度、やり直し・・・という事が何年も続いたそうです。
そこで、2013年の2月に初めて、陸上にプールを作って実験にチャレンジ。毎年、このプールを改良しながら、実験設備を作り上げています。
3年前の実験では、氷の厚さを45㎝まで成長させることができる様になり、いよいよ人工衛星で海氷の厚さを調べるためのデータが取れるというところでした。
という事で・・・今冬の成果はどうだったのでしょう?「実はですね、そう簡単に海氷の厚さを測ることができないことが、よくよくわかってきました。」
1980年代にアメリカの研究グループが取り組んだ研究成果があり、それを参考にしているそう。40年ほど前にアメリカの研究グループがなぜ海氷の厚さを調べる段階に
進まなかったのがよくわかるという段階にたどり着いたと。
「例えば、この冬の実験で試してみたことを一つご紹介しますね。3年前の実験で、海氷の厚さを45㎝まで成長させることができるようになりました。
この時は、冷却機の設定温度を-20℃など、できるだけ低めに設定していました。海氷をできるだけ厚く成長させ、その時の実験結果を調べたかったんですよ。
今年の冬は、あまり急がずに、ゆっくり海氷を成長させる実験をしてみたんですね。実は、海氷は成長するスピードによって、海水の中の塩分を排出する量が変わるのです。この塩分の量をコントロールしてみたわけです。今年得られた結果を見ていくと、海氷の中に残った塩分の量が人工衛星での観測結果に大きく影響しそうだ、という事が
わかってきました。海氷と人工衛星、それぞれの分野ではわかっていた情報を、実際に実験で繋ぎ合わせる作業を行っています。」

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