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bold and subtle [close to you <art編>]

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生まれ故郷の釧路を長く拠点とした彫刻家 中江紀洋氏。自然や人間、時や祈り等のテーマのもと、優れた造形世界を展開しました。
また、今日の北海道の彫刻界を代表する存在としても活躍なさった方です。今回は追悼展として、芸術館のコレクションから彼の世界をあらためて振り返る内容です。
大きな作品が目につきます。あまりにもインパクトがある作品が目の前に広がります。
「魂の安息日」というタイトルがついた作品には1500人以上の歯型が使われています。歯医者さんでよく見るアレです。その集合体となると相当な迫力。
さらにその全面には4体のトルソー。木の流れる感じが人体の柔らかいイメージを掻き立てます。
歯型が黒に塗られていて、それが遠くからみるとただの黒のバック、でも近づくとなにやら奇妙な造形に見えてくるから不思議です。
そして、今回のパンフレットにも出ている「回帰 (終章)」どれだけの鮭がここにはいるのでしょう?まるで婚姻色に染まったかの様な色とそこに描かれた細かい模様。
ステンレスの光が鮭や自然の流木を形作る木材とは対照的に冷たいイメージなのですが、これがまた、水を感じさせるのです。
そして・・・本邦初公開!中江紀洋氏の自画像。サラサラっと書かれた感じがあるのですが、今まで展示されたことはないはずの作品。
立体以外の作品も見逃せません。湿原をテーマにした春を感じる作品と秋を感じる作品。どちらにも丸いモチーフが描かれています。
ダーツの的の様な、卵の様な、目玉の様な・・・いったいこれは何を意味するのか?
アトリエには立体で作れられた同じ様なモチーフがそこここに置かれていたそうです。湿原に関する作品の構想がおそらく頭の中にはあったのでしょう。。。
「豪快であり、かつ繊細」とおっしゃった福地氏が思う中江像。まさに作品からもそれが伝わります。
そして、一つの作品の中には抽象的表現と具象的表現がともにあるのです。
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10.jpg すべてが融合した中江ワールド。
抽象と具象。
個と集合。
自然の中の人間。
時間軸のイメージ。
人の営み、そして祈り。
不思議な造形の美しさを感じる中江氏。

私にはアトリエで愛犬と戯れていた中江氏のイメージが忘れられず。
木材に囲まれ、常に前を見て突き進まれていたあの姿が
とても懐かしく思い出されました。
(追悼 彫刻家・中江紀洋は4/9まで北海道立釧路芸術館で開催中です。)

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