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海の異変?!(笹森 琴絵編) [nature treasure]

1 釧路の市民ツアーで出遭ったマッコウクジラ 笹森琴絵.JPG 2 以前は、噴火湾にもトドが多く来遊していた 2000年撮影 笹森琴絵.jpg 3 釧路の前を通過していくザトウクジラ 笹森琴絵.JPG
今回は、新年早々、テレビや新聞をにぎわしていた生き物たちについて。まずはマッコウクジラ。始めて報告されたのは1月9日の朝。
その日から死亡が確認されるまで、連日、テレビや新聞で情報が流れました。当初は、体長8mという情報が独り歩きし、そこから、群れからはぐれた若い個体、
弱っているなど、様々な知見が溢れたのは記憶に新しいところ。ついに息絶えたマッコウクジラを解剖し、実際には体長15mのオトナオスと判明。
(オトナオスは平均15~20m) 死体はその後、沖に沈められ、海のサイクルの中で他の生き物の一部となるのでしょう。
実は、これが、巨大なオトナオスだったとなると、また違う話に・・・。
今回の件について、幼い、あるいは若い個体が群れとはぐれて独りぼっちになって寂しく死んだ、という見解が多かったようですが、
オトナオスだったのであれば、高緯度海域で単独で過ごしているオスが、繁殖のために温かい海で暮らすメスとコドモの群れと合流するために南下する途中で、
何らかの計算違いが起きて、あるいは体調がよくなくて、このような結果になったのかもしれないと推察もできるそうです。
なぜなら、日本沿岸で生まれ育つマッコウクジラは、子供とメスの繁殖群が和歌山県熊野灘沖や小笠原沖などを流れる黒潮に乗って生活していて、
ある程度成長したオスたちはまとまって東北以北の海域で集団生活をするそう。もっと成長したオスは、さらに高緯度海域で単独生活をし、繁殖期(秋~初春)になると、南下して低緯度で子供たちも含むメス集団と合流するとされているのです。
さて、マッコウクジラの命が尽きると、今度は東京湾にトドとザトウが現れたと連日の報道。
「実は私の目には、マッコウクジラやザトウよりトドの出現のほうが、異常な事態に映ったんですよ。東京湾は、本来トドが来遊する海域から相当に離れているから。」
本来、トドは10月~5月頃、つまり寒い時期に、より寒い海から南下して、宗谷岬や羅臼、積丹など、北海道沿岸のあちこちで越冬。
夏のエトロフや冬の羅臼の調査では沿岸でよく目にしたが、釧路沖ではみたことはないとおっしゃっていました。
50年くらい前までは、噴火湾もトドの越冬域として有名だったそうですが、過去に徹底的に駆除され、姿を消したとのこと。
次に、ザトウ。今回、東京湾に入ったという事態は珍しかったようですが、繁殖域である小笠原や沖縄、あるいは伊豆諸島あたりに回遊する、その南下の途中で
たまたま姿を捕えられたにすぎない、つまりほぼほぼ普通のことなのでは?と笹森氏はとらえているそうです。
野生動物は、種それぞれに規則に則って、一年間を過ごしています。個体によっては、迷って行くべき場所にたどり着けなかったり、ちょっと寄り道して冒険してみたり、
体調がよくなくて途中で休んだりと、事情は色々あるのでしょう。なかには命を落とすケースも少なくないはずですが、それは自然界ではあり得ることだと思うと笹森氏。
ブリの水揚げ日本一が北海道になったとか、道北の海岸に冬はいないはずのマイワシが大量に打ちあがったとか、一部のザトウの日本での越冬域が小笠原などから
伊豆諸島へ移っているとか、マッコウクジラやトドが意外なところに出現した等々、海の異変と呼ばれる情報が世間には溢れているのですが、全て異常とは限らないと
いうこと。あくまで、これまで私たちの目には映らなかった・知らなかっただけかもしれず、一つ一つの現象は慎重に背景をみなくてはならないのではないでしょうか。
「ただ、一頭のマッコウクジラ、あるいはトド、又はザトウクジラに心を寄せることで、普段は全く自分とは関係のない海の生き物の存在や命に興味や関心をもち、知りたいと思うきっかけになったとしたら、ニュースになった生き物たちは、人と海をつなぐという大切な役割を大いに果たしてくれたと思うのです。」
※写真は笹森琴絵氏からお借りしました。
※音声はこちら・・・https://open.spotify.com/episode/4Ebh9sdt8BaX1Zzb56Grdc

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