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カマイルカの真実(笹森 琴絵編) [nature treasure]

①笹森カマイルカ.jpg ②笹森カマイルカ.jpg ③笹森カマイルカ.jpg
北海道沿岸には一年を通して、様々な生き物、もちろん鯨類も来遊します。初夏にはカマイルカたちが大群となって押し寄せて晩夏や秋口までなど一定期間滞在します。
春に冬の棲み処を出て日本海側を北上しそのまま道北に向かうグループもいれば、津軽海峡を抜けて太平洋沿岸各海域に向かうグループもいるそう。
また、日本海側だけでなく太平洋側にも同様に北上してくるグループも存在するそうです。カマイルカは夏の北海道の海を代表する鯨種で、函館、小樽、室蘭、苫小牧、
釧路、根室周辺、北方四島、知床半島周辺等いたるところで観察されています。彼らの来遊目的は餌と繁殖。夏の餌場として、また子育ての場として利用しているのです。
「自らの命を次代につなぐため、ひたむきにひたすらに、生まれ育った海を目指してやって来ると思うと、あまりに愛しくて目頭が潤むのです。」と笹森氏。
ところで、昨年末、そのカマイルカにまつわる面白い報告があったそう。日本大学の生物資源学部などの研究チームによれば、全国の水族館で飼育される野生由来の
カマイルカの遺伝子を解析した結果、日本沿岸のあちこちで観察されているこの種が実は2系統に分かれることがわかったという事なのです。以前から日本沿岸でみられるこの種には少なくとも2つの系群がああると言われてきたそう。一方は日本海側の一部に、他方は広く太平洋と日本海の両方にそれぞれ分布し外観も異なると。
両タイプの比較写真をみると、確かにどちらもカマイルカだそうですが、一方は彼女が見慣れたオンザ眉毛の前髪ぱっつんに口紅をべったりでくどめの模様の存在自体が
濃い印象。もう一方は全体的に体色が薄く、丸顔で子供のような顔つきでさっぱり系の印象だったと。生態などで相互の違いが更に明らかになれば、これまでずっと
“カマイルカ”と呼ばれてきたものの一部に別名がつけられて、新種として登録されるかもしれないということなのです。
実は、鯨類界では2019年にも、“ツチクジラ“という種が、ツチとクロツチの2種に分けられたばかり。羅臼海域では以前から地元の漁師さんや観光船のスタッフから
「全体が真っ黒にみえてしかも小型のツチがいる」と報告が上がっていて、“マルタ”や“カラス”等とツチクジラとは別名で呼ばれていたそうです。
今回、漂着個体の遺伝子データを蓄積し分析した結果、それまでツチと呼ばれていた通常のツチとは別種であるとわかったということなのです。
「羅臼のツチクジラのケースは、まさに科学の進歩に加え、地元でデータを集めた方々の努力のなせる成果だと思います。姿や骨からの分類では同種、あるいは少し違う、程度の識別しかできず、それに応じた種判定がなされていたのですが、形態だけでなく遺伝子からもアプローチできるようになり、見かけで分類や判別をしていた
過去の結果を覆すケースが出てきたのです。」実際に噴火湾や釧路沿岸の来遊する個体からDNAを取れない限り断定は難しいのですが、噴火湾近海には太平洋と日本海の
双方に広く分布するタイプが来ているらしいと。たぶん釧路沿岸で見られるカマイルカについても、噴火湾と同様のタイプの可能性があるそうです。
今回のカマイルカの調査研究は、座礁したり捕獲された個体のDNAに限定したもので、今まさに生きて海を泳いでいる個体から得た情報ではないそう。
確かに、野生のイルカの遺伝子採取はハードルが高いと言う事なのです。「私自身、何十年も関わってきたカマイルカのことを実は何も知らないのかもしれないのです。
鯨類について私たちが知っているのは、まだほんのひとかけらの真実にすぎないのです。まして彼らの棲み処=海という謎に満ちた領域について私たちが学ぶべきことは、無限にあるのだろうと思います。」
※写真は笹森琴絵氏からお借りしました。
※音声はこちら・・・https://open.spotify.com/episode/3VsPQHDyCI09BnaAeqI6OH

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