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全国中学生人権作文コンテスト審査を経験して(久保田 裕之編) [varied experts]

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去年、釧路地方法務局からの依頼で、全国中学生人権作文コンテスト東北海道大会というコンクールの審査を行った久保田氏。第42回なので、長い歴史のある取り組みです。国が行っている人権擁護の啓発活動の一環。テーマは人権問題に関わる事柄を中学生が身近な出来事を通して考えた作文のコンクールとのこと。今回は道東地方の計58校から1102点の応募があり、事前審査を通った16点を読まれたそう。
内容的には「いじめ」問題が一番多かったと。全体の半分以上を占めていたそうです。自分自身がいじめを受けたことや、友達が被害を受けたこと等それぞれの経験を通して人権問題について考えたものが多かったとおっしゃっていました。
そんな中、部長が印象深かったのは、LGBTQの問題を取り上げた作文。初めて読んだ時、少し驚いてしまったと。作文には、自分が同性の友達に好意を寄せていることに気づいた体験が綴られていたそうです。そして、その感情に別の友達が気づき、そっと見守ってくれて、それ以降も変わらずに接してくれたことも書かれていたそうです。「そのときの会話が、非常に温かいやり取りだったのが印象的でした。作文はジェンダー平等や差別について、あるべき社会について真正面からとらえていました。」中学生がそのような問題に真正面から向き合うとはすごいことだと思います。
「文章は中学生らしいのですが、自分で悩んだ分、考え方がしっかりしているなと感じました。このコンテストで10年以上審査を担当している人権擁護委員の方によると、性自認や性的思考について取り上げる作文が応募されるようになったのは、ごく最近のことだそうです。」
また、病気で髪を失った人に医療用ウイッグを提供するヘアドネーションのため、自分の髪を伸ばしている取り組みを紹介した作文があったそうです。文中では、周囲から「偉いねー」と言われるけれど、自分では「偉いことだとは思っていない」と書かれていたとか・・・。患者が外見を気にしないで、ウイッグを着けなくても生活を送れるような、生きづらさを感じない世の中が、本来あるべき姿ではないかと主張していたそうです。すごいですね。こちらは、最近よく指摘される外見主義の問題も絡めて社会をしっかり見つめ、文章も、とても上手に書けていたとおっしゃっていました。
一方で、いじめ関連の作文がなお多いことが気がかりと久保田氏。それだけ深刻な状況が今も続いているということの表れなのでしょう。中には、<グレーゾーンいじめ>という言葉を使った作文もあったそう。第三者には見えにくいいじめという意味だそうです。また、つらいいじめ被害に遭って悩む中学生の作品も・・・。「道内でも、いじめの件数は過去最多に上っていますが、われわれ大人は、どうしても全体件数など報道をベースに状況を俯瞰して見ることが多くなりがち。学校現場は一般には目の届きにくい場所です。そこで何が起きているのか、当事者の訴えを作文によって知ることができた貴重な機会となりました。」
何年か前までは、人権作文の提出を宿題にして、学校単位で応募する例もあったそうですが、今は先生も生徒も忙しく、最近はないそうです。「中学生にとっても、日ごろなかなか機会のない人権問題を考える良い機会になると思いました。一方で、先ほどの人権擁護委員の方は、自民党国会議員がアイヌ民族や在日コリアンに関する投稿で法務局から人権侵犯と認定された例を挙げ、国会議員の方が人権について学ぶべきだと言っていました。まったく、その通りですね。」

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