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黒潮と親潮の海洋学〜入門編〜(黒田 寛編) [fun science]

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黒潮・親潮は、英語ではなんと呼ばれているかご存知でしょうか?
答えは、「Kuroshio」「Oyashio」そのままで、日本だけでなく世界の研究者をも魅了する二大海流なのだそうです。
黒潮・親潮の「潮」には『流れ』という意味があるので、黒潮は「黒い流れ」、親潮は「母なる流れ」という意味に・・・。
というのも、黒潮付近の海水は暖かく、プランクトンが少なく透明度が高いので、海に光が入ると吸収されてしまうため、船上からは海水が黒く見えます。
一方、親潮は、冷たくて栄養豊富な水を運び、これが多くの生き物を育むゆりかごの様な役割を果たしています。
なぜ、黒潮や親潮が世界中の研究者から注目されるのでしょう?一つには、太平洋や大西洋では、西側の境界に沿って強い流れができます。
海のどこにでも強い流れができるわけではないので、この「強い流れ」に研究者が魅了されてしまうそう。
例えば、北太平洋・・。東側にアメリカ大陸、西側には日本列島があり、日本列島に沿って黒潮と親潮が流れます。
北大西洋・・。東側にアフリカ大陸やヨーロッパ、西側にアメリカ大陸。北大西洋の西側に沿って黒潮と親潮に対応する「メキシコ湾流」と「ラブラドル海流」。
では、なぜ、黒潮や親潮が常に流れているのでしょう?それは、北太平洋の海上風が黒潮や親潮を動かす「駆動力」であり、この海上風が止むことがないから。
ですから、北太平洋の海上風が変動すると、それに伴い黒潮や親潮の流量や流速、流路等が変化します。
それが、黒潮や親潮周辺で住む魚の生息環境に影響を変え、稚魚の輸送や生残にも影響し、最終的には、私たちの食卓にも影響を及ぼすことになるのです。
この黒潮ですが、どれくらいの幅で、その速度はどのくらいなのか・・・。流れの幅はおおよそ100km位、平均的には1m毎秒位の速さ。
1m毎秒は時速に換算すると3.6km程。ゆっくりの様にも思えますが、1日では86.4km、1カ月では約2600kmにもなるという事。
そして、この黒潮、流れに対して右側の水面が左側の水面よりも高くなっているそうです。流れに直交する方向の水位差が維持されることで、黒潮の強い流れが維持されていると。実際、流れの幅を100kmとすると、流れに対して右側が左側よりも1m高い状態になるそうです。
「幅100kmでたった1mの水位差が維持されるだけで、黒潮という世界有数の強い流れが維持されるという事実には海洋学を学び始めた頃は、本当に驚きでした。」
流れの右側の水面が左側よりも高くなるのは、流れの右側では、左側よりも、暖かい水が厚く輸送され、熱膨張の効果で水面が盛り上がりるという事の様です。
また、同じ様に、親潮についても流れの右側の水面が左側よりも高くなります。ただし、親潮の場合、水温よりも塩分の効果が重要になり、流れの右側で左側よりも、
塩分の低い水が厚く輸送されるので、水面が盛り上がることに・・・。さらに、流れの右側と左側の水位差は、親潮の方が黒潮よりも小さくなるとのこと。
これは、海面付近において、親潮は黒潮よりもゆっくりと流れていることを意味しているそうです。
「黒潮も親潮も北太平洋の西側に作られる強い海流で、両者は海上風が駆動力で、流れの右側の水面が高くなることなどの共通点はありますが、一方で、流れの強さや、
流れの深さ、運ぶ水の水温、塩分、栄養も異なるので、北太平洋の海上風が変化しても、両海流が同じように変化するわけではないことになります。
そのため両者の変動やその関連性は非常に複雑になりますが、実は、そこが面白いところであり、私も、その動的な振る舞いに魅了された研究者の一人なんですよ〜。」
※写真は黒田寛氏にお借りした資料です。
※音声はこちら・・・https://open.spotify.com/episode/04KIkclvoTXmcuuwMaHYER

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