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みんなで考えよう海洋ゴミ問題 〜2(黒田 寛編) [fun science]

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03.jpg前回に引き続き、海洋ごみ問題について。小さな「海洋プラスチックゴミ」の中で、特に5mmよりも小さな
プラスチックを「マイクロプラスチック」と呼んでいます。非常に小さいので、海の生き物が間違って食べたり、あるいは、食物連鎖や生物過程により海の生態系内に取り込まれていくことが懸念されています。
日本周辺で浮遊するこのマイクロプラスチックの密度は他の海域よりも高くなっているそうです。
このマイクロプラスチックは、「一次マイクロプラスチック」と「二次マイクロプラスチック」に大別されます。
一次マイクロプラスチックは、工業的に小さい状態で生産されるプラスチックで、もともと小さく生産された
プラスチックを意味します。例えば、化粧品、歯磨き粉や洗顔剤に入っているマイクロビーズと呼ばれる
小さなプラスチックなど。化粧品だと「ラメ」、歯磨き粉であれば「研磨剤」、洗顔剤であれば「スクラブ」
として製品に入っていることがあります。マイクロビーズはマイクロプラスチックの中でも、とても小さく、
大きさは数ミクロン~数百ミクロン(0.数ミリ)ほど、目に見えないくらい小さいのが特徴。
また、一本の洗顔剤に、33万粒のマイクロビーズが入っていたという報告もあり、数も大量。これが、洗面所やバスルームから下水に流れ込み、下水処理場で除去できなかったものが川から海に流れ込む事に・・。
また、人間が作ったものなので、スクラブの一次マイクロプラスチックは、極めて球形に近く、海でも、自然界では異質なくらい「球形のゴミ」として発見されます。
私達は悪意はなくても、知らず知らずのうちに「海洋ごみ」を増やしているのです。また、国によっては、法律でマイクロビーズの製造・販売を段階的に禁止している国もありますが、まだ、業界の自主規制という国もあるそう。
次に、二次マイクロプラスチックについて。こちらは工業的にはそれなりに大きく生産され、プラスチックゴミとして海の中や周辺に放置されると長い年月をかけて環境中で小さくなるプラスチックを意味します。紫外線による効果や、波などによる物理的な力を受け、プラスチックが砕けて、どんどん小さくなります。この二次プラスチックが海の中に大量にあることがわかっているそうです。また、海の中だけではなく、陸上でもマイクロプラスチックが生まれます。例えば、化学繊維の服を洗濯機で洗うと、マイクロプラスチックファイバーが下水に流出し、これが下水処理場で処理されずに川や海に流出するとう具合いに。
では、マイクロプラスチックは、海の中で砕けてどこまで小さくなるのか?そして、最終的にはどうなるのでしょうか?
実は、ここが未だ明らかにされていないポイント。というのは、通常、マイクロプラスチックを調査する際は、ある大きさの網目をもったネットを海面付近で引っ張り、
このネットに入ったプラスチックの大きさ・形状・材質・個数・重さなどを調べます。
一般的な網目の大きさは330µm(マイクロメーター)=0.33mmになり、これよりも小さなマイクロプラスチックは網目をすり抜けてしまうため採取できないと。
網目をもっと細かくすれば、より小さなマイクロプラスチックが採取できるんではないか?と思われるかもしれません。
でも、ネットの網目を細かくすればするほど、例えば、小さな植物プランクトン等も一緒にネットに入ることになり、そうするとこの植物プランクトンが網目の
目地をふさぎ、ネットから海水が排水されずらくなり、ネットを引っ張ると抵抗が大きくなり、ネットが破けたりもするそうです。
さらに、実は海底からもマイクロプラスチックはすでに発見されているのです。もともとプラスチックは海水よりも軽く、通常は海水に浮かんでいるはずなのですが、
何らかの要因で、重くなり、海底まで沈むマイクロプラスチックもある、ということを意味しています。ということは、マイクロプラスチックは、海面だけではなく、
海面下~海底での分布や振る舞いについても調査が必要であるということが想像して頂けると思いますと黒田氏。いずれにしても、一度人為的な異物が自然界に入って
しまうと、こんなにも分布や汚染過程を調べる事が大変なのかと改めて思い知らされてしまうお話しでした。
※写真は黒田寛氏にお借りした資料です。
※音声はこちら・・・https://open.spotify.com/episode/7zppuhCPSYM1iHjwSDRxuB

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