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最近起きた不思議な津波(満澤 巨彦編) [varied experts]

写真1広帯域地震計の投入準備.JPG写真2短周期地震計の投入作業.JPG写真3孀婦岩(「かいめい」から撮影).JPG
今回は最近起きた不思議な津波について。
規模は小さいのですが、原因のはっきりしない津波が最近日本近海で起きています。
10月5日に伊豆諸島の八丈島で0.2mの津波が10月9日には同じ八丈島で0.7mの津波が確認されました。
伊豆諸島は東京のほぼ真南に点在する火山島。有名なのは伊豆大島や八丈島。伊豆諸島最南端の孀婦岩は東京から約650km離れているそう。その孀婦岩の南側が小笠原諸島。今回は、孀婦岩が重要な場所。孀婦岩は高さが99mの岩の柱で、無人島。にょきっと岩の柱が海面から突き出ていて、周囲は360度、海原で他の島はまったく見えないそうです。この岩はマグマが固まってできており活火山という位置づけになっているとおっしゃっていました。
さて、10月の津波が起きた時の経緯ですが・・・。
10月5日11時7分頃気象庁から津波注意報が伊豆諸島に出されたのですが、11時15分ごろに、10時59分に鳥島近海で発生したM6.5の地震によるということが発表されました。この時は12時すぎに八丈島で0.2mの津波が観測されました。その後10月9日の午前5時25分に鳥島近海で地震が発生し、10月5日と同様に伊豆諸島に津波が到達する可能性があるということで、津波注意報がだされました。この時は0.7mの津波が八丈島で観測され、日本の太平洋側各地で弱い津波が観測されました。この時の地震については、地震の規模を示すマグニチュードと正確な震源はわからなくて、また津波を発生させるような規模の地震ではなかったことから、この地震と津波の関係については今もはっきりとはわかっていないそうです。その後、観測データの解析で、海底火山の噴火など海底で発生する振動が音波に変化して遠くまで伝わる「T波」という波動が午前4時ごろから6時台までの間に14回発生したことが判明。この「T波」について満澤氏の所属している海底地震火山部門の研究者らによる解析の結果、発生源は孀婦岩の西側にある孀婦海山周辺の可能性が高いことがわかったそうです。海底火山の噴火などがあると、海面が変色したり、時には噴煙がみられたりするそうですが、今回はそのような現象は観測されなかったと。
解析を進めている間の10月20日に鳥島の西側の海域で軽石が帯状に漂流しているのが確認され、気象庁が採取して解析した結果、軽石の中には専門用語では「伊豆弧火山フロント」だったと。この伊豆諸島火山列の西側にある火山帯の火山活動に起因した新しい軽石の可能性があることがわかったそうですが、今回の地震活動との関係は今のところわかっていないのです。このため、JAMSTECでは、11月に海底広域研究船「かいめい」で、もともと計画されていた伊豆・小笠原諸島の海底火山調査に急遽、今回の津波を起こした「T波」の波源域である孀婦海山を含めた鳥島近海の調査を追加して行うことになったとおっしゃっていました。鳥島近海では「かいめい」の持つマルチビーム音響測深機による海底地形調査を行い、また観測する振動の帯域の異なる「広帯域地震計」「短周期地震計」と呼ばれる2種類の自己記録型の海底地震計を各3台、計6台設置。海底地形調査の結果は、11月21日にプレス発表。「T波」の発生源として推測した孀婦海山の中央付近にカルデラ状の海底地形が確認されたそうです。カルデラ状地形の外輪の直径は約6km、カルデラ状地形の北側には中央火口丘がありその直径は約2kmで中央火口丘の一番浅い場所で、水深900mぐらい。「今のところ、このカルデラと津波を発生させた火山活動、地震活動の関係はわかっていません。「かいめい」の航海で設置した2種類の海底地震計を回収することで、カルデラ周辺の地震活動や火山活動の詳細が把握できるものと期待しています。特に10月9日は、津波が発生するような規模の地震ではなかったにもかかわらず津波が発生していることから、海底地すべりや火山活動による地形の変化について過去の海底地形図と比較して読み取れるかがカギになるのではないかと思います。またカルデラからの岩石採取などを今後行うことで、漂流した軽石との関係も明確になるのではないかと思います。探偵が事件の解明に努力しているような話ですが、この件については、続報がでたらまた取り上げたいと思います。」
ーーーーーーー※尚、写真は JAMSTEC 満澤巨彦氏からお借りしました。
写真(左):広帯域海底地震計(BBOBS)の投入準備
写真(中):短周期海底地震計(SPOBS)の投入作業
写真(右):孀婦岩 「かいめい」から撮影
※写真は「かいれい」KM23-14航海の首席研究者吉田健太氏(JAMSTEC海域地震火山部門火山・地球内部研究センター固体地球データ科学研究グループ)より提供いただきました。
・孀婦岩の場所など、鳥島近海の地震活動:https://www.jamstec.go.jp/j/pr/topics/column-20231030/
・「かいめい」KM23-14調査速報:https://www.jamstec.go.jp/j/about/press_release/20231121/
・地震調査研究推進本部 鳥島近海の地震活動の評価 (令和5年11月10日公表)https://www.static.jishin.go.jp/resource/monthly/2023/2023_torishima_2.pdf
・(参考)地震調査研究推進本部HP:https://www.jishin.go.jp/

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