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前ジテ・後ジテの関係 ~二場物の能~(中西 紗織編) [varied experts]

1井筒.jpg2船弁慶.jpg3.jpg
どうして能では主人公が入れ替わることがあるのでしょう?とても疑問に感じてお聞きしました。
「これが正解というものはなささそうですが、おそらく面白い!から・・ということではないでしょうか。」と中西氏。
世阿弥の時代からこの形式(前場・後場で主人公が入れ替わる)はあり、世阿弥は伝書の中で、様々な意味において「面白し」とか
「見所の批判」(観客の目や評価)ということをとても重視していたそうです。
能の(演劇的)構成に注目すると、二場物・一場物という分類ができるそう。
主人公が入れ替わる能は「二場物(にばもの)」、つまり二つの場面がある能。
入れ替わらない能は「一場物(いちばもの)」ということになるそうです。
ただ、二場物でも、前ジテ・後ジテが化身・本体ではなく、全くの同一人物というものもあるそうで・・・。明確には分類し難いものもあるのが現実。
その中で、二場物の典型として複式夢幻能と現在能というものがあります。夢幻能とは、亡霊等の超現実的な存在をシテ(主人公)とするものです。
世阿弥が確立した作劇法では多くは二場物なのだとか。対して現在能とは、この世に生きている人物をシテ(主人公)とします。
上の左の写真は、井筒。これは前ジテが里の女で、後ジテが紀有常の娘の霊。
そして真ん中の写真は、船弁慶。前ジテが静御前で、後ジテが平知盛の怨霊。こちらは前ジテと後ジテが全く別個の役柄を演じます。
ちなみに船弁慶は仇同士という設定です。同じ人が一つの舞台で全く別の人格を演じる・・何と無く聞いただけだととても難しそうな感じがするのですが。。
この他には、前ジテ・後ジテが単に全くの同一人物ということもあるそうです。
例えば、狂女物や斬組物によくある一旦退場したシテが扮装を変えて再登場することが多いそう。
シテが入れ替わる能、ちょっと気になってきませんか・・・?

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