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年のはじめの翁(中西 紗織編) [varied experts]

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IMG_3768.jpg今回はお正月によく演じられる「翁」について。
流派によっても異なるそうですが、新年以外にも大切な折に上演するそう。天下泰平、国土安穏、五穀豊穣を願う神事能。
私たちは新年を新たな清々しい気持ちで迎え、「おめでとうございます」と挨拶を交わし、初詣に行き新しい年に家族皆が
健康で幸せである様祈ります。
能における「翁」には人間誰もが心に強く思う、その様な願いも込められているのではないかと。
「翁」は「能にして能にあらず」「能にありて能にあらざる曲」などと言われるのですが、
どのような特徴が普段演じられる能と異なるのでしょう。
能であって能ではない曲と言われるように、他のどの能とも異なる特徴をもちます。
現在演じられている能は五つに分類されるそうですが、「翁」はそのどれにも属しません。
能の源流を伝えるとも言われているのが「翁」なのです。
この能は開演前の準備から通常の能とは違います。
・能舞台の上のほうに、舞台を囲むように注連縄・・・一種の結界
・別火(精進潔斎)・・・翁を演じる役者は、7日間精進潔斎、つまり肉食や飲酒をせず、家族とは別の火で煮炊きした食べ物をとる「別火」という習慣がある。
・鏡の間に祭壇・・・「翁飾り」と呼ばれる。舞台で使う面(翁の白式尉と三番叟の黒式尉)を収めた面箱、使用する扇、洗米、お神酒、粗塩などを飾る。
 観客からは見えないが、神事としての「翁」上演にとって欠かせない大切な儀式。楽屋や鏡の間にも神聖な厳粛な空気が満ちる。
・開演前に「切り火」火打石によるお清めをする。後見という役が出演者全員に切り火のお清めをした後、後見が見所(客席)に向かっても「カチカチ」とお清めをする。
・翁以外の出立・・・翁や三番叟など主要な役以外の演者、つまり地謡や囃子方も侍烏帽子・裃・長袴という出立。
・翁の出立・・・翁烏帽子、青色・浅葱色系の狩衣、指貫(裾を紐で絞る感じの袴)、翁扇(中国古代の伝説 不老不死の千人が住む霊山と言われる蓬莱山図を描いた扇)
そして、開演。通常の能と大きく違うのは、舞台で礼をすること。決してお客に向かってしているものではないそう。
さらに、登場する人たちの場所が違ったり、楽器の数が違ったり・・・。両手を張ったカマエをすることも通常の能との大きな違いです。
「翁」は物語性はほとんどなく、あくまで神事的な意味合いが強いのです。演じている中で「翁」を素謡として演じる場合は「神歌」と呼ぶことからも想像できます。
翁:とうとうたらりたらりら たらりあがりららりとう 地謡:ちりやたらりたらりら たらりあがりららりとう これは呪文的なものと言われるそう。
「翁」は世阿弥の時代から演じられているもの、『猿楽談義』で世阿弥は「申楽の舞の根本は翁の舞、謡の根本は翁の神楽歌」と述べているそうです。

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