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潮目と魚〜果てしない自然への挑戦(黒田 寛編) [fun science]

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潮目のお話しです。まずは、海の中で魚はどこに集まるのかについて。海底付近に生息している魚(いわゆる底魚)は、岩礁、砂の上、あるいは泥の中が好きな魚もいます。
一方、海面付近で生活する魚(いわゆる浮魚)は、底魚の様に底質を選んで生活しているわけではなく、いつも風景の変わらない水面近くで生活しています。
ただ、浮魚は海の中に均一に分布しているわけではなく、何か都合の良い条件の場所があるとそこを選んで生活、または、集合する、その一つの条件が潮目であると
考えられているそう。潮目は、海の不連続線と考えられていると。その線を境に海の性質(海水の温度や塩分、海流など)が急変する場所というイメージです。
潮目は、例えば、温かい海水と冷たい海水が水平的に接してる場所などに現れると。ですから、黒潮を起源とする暖かい海水と親潮を起源とする冷たい海水が到来する
三陸や道東沖などでは、たくさんの潮目が分布し、日々、その場所や強さが変化しているのです。
海の中にたくさんの潮目があり、魚がそこに集まり良い漁場になることは、昔から漁業者は経験的に知っていたようです。それを世界に先駆けて科学的に調べたのは日本人の宇田道隆先生。今から約100年程前に始まった研究テーマとのこと。そして、現在でも、世界の海で、世界の研究者が「魚と潮目」について調べているそうです。
この100年間で潮目と魚の関係について様々なことがわかりつつあるそうですが、一方で、未だによくわからないこともたくさん残されていると。
「調べれば調べるほど「わからないことがたくさん溢れ出てきた」という方が正しいかもしれませんね。」
黒田氏も『釧路沖の潮目と漁業の関係』について調べているそう。特に、注目しているのは秋の道東沖 大陸棚域に分布する潮目。
この道東沖の潮目周辺では、近年、旋網船団がマイワシ狙いの操業をしています。宇田先生の「海と魚」という本にも潮目とマイワシ魚群の航空写真が載せられているそうですが、なぜ、道東沖のマイワシは潮目周辺に分布するのか?ということを説明できる定量的、科学的な答えがないと・・・。
彼は道東沖大陸棚域での潮目の性質を調べる事から始めました。Landsat-8(人工衛星)による水温画像と船舶観測を組み合わせ潮目の長さや幅等の形状を調べました。
例えば、2016年10月13日の潮目を可視化すると道東の大陸棚に沿って、100km以上の長さの潮目が分布していました。
潮目の沿岸側には低温の海水、潮目の沖側には高温の海水が分布。ただ、潮目は単純に1本ではなく、場所によっては2本(潮目が2重に)分布する場所もあり、
潮目が波のようにウネウネと蛇行していることが特徴と。また、潮目の幅は、長さ100km以上に対して僅か100m~1km程度という細さで、これについては驚きだったと。
まさに、潮目が海の不連続線と言われる特徴。さらに、わかったことは、この様な潮目はじっと止まっているわけではなく、数十cm/s以上の速さで陸棚に沿って海水と
ともに流されているということ。ですから、たった数時間前に観測船で横切った潮目が数時間後には海流に流されて場所が変わる、あるいは、消えてなくなるような潮目もある、そんな急速な変化が生じていることもわかってきたのです。
そして、重要な事実として最新鋭の観測機器を用いても、この変化の大きな潮目の四次元構造を観測データのみから捉えることは恐らく不可能に近いということ。
「ですから、鍵となる断片的な観測データを取得する戦略と、シミュレーションを使ってバーチャルに四次元構造を研究するという戦略を組み合わせて潮目の全体像を
明らかにする、そんな戦略を立てながら研究を進めています。」
※写真は黒田寛氏にお借りした資料です。
※音声はこちら・・・https://open.spotify.com/episode/4xzzAEnm0k9ExLRr41NurX

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