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2022年、キタサンショウウオにとってどんな年だった?(照井 滋晴編) [nature treasure]

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キタサンショウウオは冬になると、ヤチボウズの中や土の中、木の根の隙間などに潜り込み、繁殖期である春が来るまでじっと動かなくなってしまうそうです。
繁殖期はだいたい4月頃からなので、彼らの活動期間は8ヶ月程度、1年の1/3は活動をしていないことになります。なので、彼らの1年はそろそろ終わってしまうそう。
2022年という年はキタサンショウウオたちにとってどんな年だったでしょう?「私はよい1年だったのではないかと思います。特に今年生まれた子たちにとって。」
その理由としてはこの夏の雨の量。今年生まれのキタサンショウウオ4月に産卵され、5月末には孵化。孵化した幼生は6月~8月を水の中で過ごし、その後手足が生えエラがなくなり、陸上生活に移行。4月から8月までの5ヶ月間は水中で生活します。ですからその間生活する水域の水量が維持されなければいけないわけです。
繁殖期である春は雪解け水によって産卵水域が作られますが、その後は降雨による影響が大きく、その年の天候に大きく左右されてしまうそうです。
繁殖期にたくさんの個体が繁殖活動に参加し、多くの卵嚢が産まれたとしても、その後雨が降らなければ産卵した水域は干上がり卵嚢や孵化した幼生は乾燥して
死んでしまいます。ただ、幼生期である6月~8月頃に十分な量の雨が降れば、産卵水域の水量が維持され、多くの幼生が成長し、変態・上陸することができるということ。
今年はまさにそういう年だったと照井氏。2020年は、6月~8月の降水量の合計は280.5mm。2021年は219mm。いずれの年も7月頃に実際にキタサンショウウオの調査を実施したところ、干上がってしまっている繁殖水域が多数あったそうです。そのような場所ではもちろん孵化した幼生も死んでしまったと思われます。
今年は6月~8月の降水量の合計は678mm、一昨年、昨年の倍以上の降水量。サンショウウオにとっては生活場所である水域に十分な水量が保たれ、多くの幼生が上陸するまで無事に成長できた年だったのではないかと。 実際に調査の際に今年生まれと考えられる小さなキタサンショウウオに出会う機会は、数年では1番多い印象だったと。
今年の様な年が何年も続けば、毎年多くのキタサンショウウオが無事に上陸することができますが、もちろん一昨年、昨年の様に雨がなかなか降らない年もあります。
「私は、その年その年で、今年はたくさん上陸できたかな、今年は残念ながらほとんど死んでしまったかもしれないなど、一喜一憂してしまうのですが、
キタサンショウウオにとってはそこまで大きな問題ではないのかもしれません。 」1年、2年厳しい年が続いても彼らがすぐに絶滅してしまうということはないそうです。
キタサンショウウオはそれなりに寿命が長い生物で、10数年は生きることができます。3歳になる頃には成熟し繁殖活動に参加できるようになり、それから死ぬまでの
約10年間は栄養状態が悪くなければ何回も繁殖活動に参加できます。単純な計算をすれば、その間に2個体以上の子孫が育てば個体群を維持することができるわけ。
1年、2年失敗しても今年のようにたくさんの幼生が上陸できそうな年があればキタサンショウウオという種を存続させることができそうです。
今年上陸した幼体も、冬を越すためにたくさんの餌を食べ、これから冬を越そうとするのだと思われます。
「次の心配は、次の繁殖期に産卵することができる水域をしっかり形成することができるくらいの雪が降ってほしいなということです。
ただ、あまりに雪が多いと人間の方がまいってしまいそうなので、ちょうどいい量がいいですね。」
※写真は照井滋晴氏からお借りしました。
※音声はこちら・・・https://open.spotify.com/episode/27wLf2SBsqVrPedQWl1Avk

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