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道東〜三陸〜常磐沖の高水温化:南下しない親潮・北上する黒潮続流(黒田 寛編) [fun science]

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今年の夏、釧路沿岸の海面水温は高いと言い続けてもう10年ほどが経ちました。実は、昨年6月以降は、冬(昨年12月~今年2月)を除き、ずっと釧路沿岸の海面水温が高い状態が続いているそう。「特にこの夏の高い海面水温の分布は私も初めて見るようなパターンで、自然変動の複雑さや予想や予報の難しさを感じています。」
現在の高い海面水温の原因となる海の特徴は2つ。一つは、北の海から冷たい海水を運んでくるはずの親潮が道東よりも南側に流れ込まないという事。もう一つは、黒潮(正確には黒潮続流)が北緯40度近くまで極端に北上している事。現在、千島列島~北方四島に沿って流れる親潮は、北方四島の色丹島付近までは元気に流れています。千島列島付近では親潮は強い状況。ただし、色丹島付近で親潮は南東方向に流れの方向を変え、その後、北東方向にUターンしてしまうので、道東よりも南には差し込んできません。その原因は親潮の駆動力である「海上風」。道東より南側への親潮の南下を弱めていると推察されています。さらに、この道東以南への親潮の南下を弱めるような海上風のパターンは、2017年以降の冬、毎年のように見られていて、長期的に親潮を弱める原因になっていると。ただし、2017年以降の冬に毎年のようにみられている海上風のパターンは、1900年以降のデータを解析すると、珍しいパターンであることがわかっていて、最近年の気候変動に伴うような自然のゆがみを感じているとおっしゃっていました。
次に、本来、北緯37度を超えては北上しない黒潮(正確には黒潮続流)が、現在、三陸沖付近(北緯40度付近)にまで極端に北上しているのはなぜなのか?原因は、日本南岸沖、正確に言うと紀伊半島沖で黒潮が大きく蛇行していることと関連しているそう。黒潮は二つの流路に分かれます。一つは日本南岸沖で大きく蛇行して流れる「大蛇行流路」と、もう一つは日本南岸に沿って大きく蛇行せずに直線的に流れる「非大蛇行流路」。一度、黒潮が大蛇行すると1年から5年くらいは継続すると考えられているそうです。1970年以降では、計6回の大蛇行期間があり、現在の大蛇行は2017年8月から始まったので、もう6年が経過していて、1970年以降では最も長い大蛇行期間になっていると。さらに、この黒潮大蛇行、1970年以降6回発生したそうですが、その形状はさらに2種類に大別される。「典型的な大蛇行」と「典型的ではない大蛇行」。現在の大蛇行は、1970年代の後半に見られた「典型的ではない大蛇行」の形状とよく似ているそうです。現在の流路形状の特徴は、紀伊半島沖の大蛇行が典型的な大蛇行よりも西側で発達、さらに典型的な蛇行よりも南に大きく垂れ下がり、さらに、その一方で、房総半島よりも東側の黒潮(正確には黒潮続流)は極端に大きく北上。また、黒潮大蛇行は黒潮の流量が少ない時に発生する傾向があり、現在、黒潮の流量が少ないことも観測に基づき報告されているとか。黒潮の流量が少なくなると黒潮がまっすぐに流れずに蛇行して流れが撓む、そんなイメージ。ちなみに、黒潮の駆動力も海上風。ですから、海上風が原因となり、黒潮の流量が減り、その流路がたわんで大きく蛇行することで、釧路沖のかなり近いところまで黒潮が北上してきているという状況。また、親潮の駆動力も海上風で、北緯40~42度付近の海上風が原因となり、「極端に北上する黒潮」も「道東以南に南下しない親潮」も北太平洋の海上風分布で説明できる可能性があるとおっしゃっていました。
さて、1970年代後半の「典型的ではない黒潮大蛇行の形状」が、現在の大蛇行形状と似ているという話ですが、実は、1970年代後半も現在と同じように、黒潮が北緯37度を超えて、大きく極端に北上していたそう。その一方で、当時の親潮は、徐々に南下が強まっていた期間であったことが知られているので、現在の道東沖の弱い親潮とは対照的。「したがって強調したい事は現在みられるような「極端な黒潮の北上」と「親潮の弱化」が同時に発生したのは1970年以降初めてということです。」
今後どうなるのか?正直、分からないと。過去の知見や経験則が使えないので、引き続き現況の推移を注視するしかないという状況。地球温暖化や気候変動の難しさは過去の経験が成り立たないことであり、それを感じていると・・・。いずれにしても、現行の海上風のパターンがいつ大きく変わるのか?これが、今後、黒潮、親潮、道東の海を変化させる鍵となるはずと黒田氏はおっしゃっていました。
※写真は黒田寛氏にお借りした資料です。
※音声はこちら・・・https://open.spotify.com/episode/3fujtGdhzHyMMp1TQ1nG7Z

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