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キタサンショウウオはどうなったの?(照井 滋晴編) [nature treasure]

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今年の春は例年になく早い産卵開始、その後も雨が降ったので、繁殖期の間は水域の水が枯れる様なことなく、無事に繁殖期を終える事ができただろうというところまではお聞きしていました。 その後どうなったのでしょう?
実は6月末~7月初め頃に改めてキタサンショウウオの生息地を見て回ったそうですが、大変ショックなことに、十分にあった繁殖水域の水がほとんどなくなっていたと。場所によっては干上がって底の土が見えている場所もあったそう。 今年の4月は昨年と比べて約5倍にもなるたくさんの雨が降りました(148.0mm)。ただ、5月は昨年の3分の1程度しか(38.5mm)雨が降らず、6月も昨年の半分程度(77.0mm)の降水量。さらに7月、8月も昨年の半分程度の降水量しかなかったそうです。 その結果、キタサンショウウオの繁殖水域の水はすっかりなくなってしまったみたい。 6月~7月頃は、卵から孵化した幼生が繁殖水域の中で生活する時期。 そのため、この時期に雨が降らず繁殖水域が干上がってしまうとせっかく孵った幼生が死んでしまうことに・・・。「まさに今年は、幼生の時期に繁殖水域に行ってみたところ全然水がなく、幼生がほとんど見当たらなかったので、多くの幼生が死んでしまったのではないかと心配していました。」
本来であれば、8月頃には幼生はエラがなくなり、上陸し陸上生活を始めているはず。この時期以降にトラップによる捕獲調査を実施すれば少なからずその年に産まれた幼体が捕獲できるそう。 そこで、9月にトラップによる捕獲調査を実施し幼体が無事に上陸できているのか調査。 結果は・・・幼体は1個体も捕獲できなかったとおっしゃっていました。 ただ、幼体以外、例年になく多くの個体を捕獲することができたそうで、キタサンショウウオにとっては動きやすい気象条件だったのは間違いないのかなと照井氏。 「そんな良い条件が揃っていたにも関わらず、幼体の捕獲がゼロだったという事は、今年は卵から孵化した幼生があまり上陸することができなかったのだと想像できます。 もちろんその様な年は度々あり、今年の状況が悲惨だったから来年以降個体数が激減するということはないとは思います。」
10年以上寿命があり、繁殖できるほど成熟してからも何年も生き、何回も産卵するチャンスはあるので、何年かに1回繁殖が成功すれば個体群を維持できるそうです。
「上陸したばかりの幼体っていうのは頭が少し大きくて、とにかく可愛いんですよ。来年はたくさんの幼体を見たいなと願うばかりです。 」
実は調査前は他にも心配事があったそうです。今年はとにかく暑かった事。 冷涼な環境を好むキタサンショウウオにとってはあまりよくない気候だったのでは?と。湿原の中に入ってしまえば、植物もたくさんあるので炎天下にさらされる様なことはないのですが、例年以上に暑かったのは間違いないので、調査で個体が捕獲できるまでは本当に心配していたそうです。結果としては、例年以上の個体を確認することができたので一安心。「キタサンショウウオは越冬前にあたるこの時期が、餌もたくさん食べていて1番栄養状態が良くむちむちしているのですが、今年の秋に捕獲した成体もとてもいい感じにむちむちしてました。来年の春も元気に産卵してくれるだろうと期待しています。まずは、来年の繁殖時期に繁殖水域に十分な水が溜まる様、適度に雪と雨が降ってくれるよう願っています。」
※写真は照井滋晴氏からお借りしました。
※音声はこちら・・・https://open.spotify.com/episode/0ipMELvBXDXorL0Kjim5hd

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