SSブログ

道東周辺ニシンの話:2010年代以降の漁獲量増加(黒田 寛編) [fun science]

20231023-2ニシン_.jpg20231023-2ニシン2.jpg
お正月にカズノコを食べた方も多いと思いますが、今回はその親、ニシンのお話しです。明治時代、道東ではコンブ・サケ・ニシン漁が漁業の中心でした。特に、明治30年頃から道東では、春ではなくて初夏にもニシンが獲れていたという記録があり、当時、小ニシン・馬鹿ニシン・油ニシンと呼ばれていたそうです。襟裳の西側から道東に、回遊するグループがいたようです(今はいません)。
明治期以降、1970年中頃までタイムスリップすると、このニシン明治時代ほどは獲れなくなりました。温暖化の影響を指摘する人もいます。そして、これでもう北海道のニシンの時代はもう終わったのか・・・と考えていたら、実は、2010年代中頃から北海道周辺でのニシンの漁獲量は再び増えたそうです。道東で漁獲されるニシンの代表は『地域性ニシン』と呼ばれるグループで、汽水湖沼内の産卵場で産卵、その周辺海域で小さく回遊して生活史を閉じる集団になり、大回遊しないのが特徴。
例えば、近年の厚岸湾・厚岸湖では、ニシンの卵は厚岸湖東側の密集するアマモや海藻に産み付けられ、その後、孵化した仔稚魚は厚岸湖内で生息、水温が20℃を超えると厚岸湖から水温の低い厚岸湾の底層に生息場所を移動することが知られていて、さらにその後は湾外を小規模に回遊する特徴があり、成長段階に合わせて異なる海域を複合的に利用することが報告されているとおっしゃっていました。
さて、最近の北海道周辺の沿岸漁業でとられているニシンの特徴ですが、まず、厚岸湾・厚岸湖の地域性ニシンの漁獲量が2015年から突然増えました。2015と2016年には1000トン越えして、その後はいくぶん減少傾向。増えたのは2012年級群(2012年生まれ)であり、この年のニシンの生き残りが非常に良かったということが指摘されているそうです。「厚岸ニシンの専門家とも2012年級群の増大要因について話をしたことがありますが、正直予想外で、大変驚きだったことと、産卵場や初期成育場周辺の水温と関係があったのでは?ということでした。」ニシンは非常に浅い場所で産卵し、2012年当時、産卵場周辺の水温を観測していなかったため、その真意は未だ明らかではないそう。
最近年、厚岸ニシンの漁獲量は減少傾向ですが、根室海峡周辺、特に標津町や羅臼町周辺でニシンの漁獲量が増えているそうです。根室海峡周辺では風連湖の『地域性ニシン』の漁獲量が2010年代に徐々に増加しはじめ、2018年以降、特異的な豊漁状態にあるということです。特に増えているのが、風連湖の『地域性ニシン』とは異なるグループの漁獲のようで、漁獲量増加の原因は未だ不明・・・と。
また、北海道のオホーツク海沿岸(紋別など)でも2020年の前後でニシンの漁獲量は増えているそうです。でも、どの集団を漁獲しているかがわからないのが現状で、漁獲量増加の原因が特定されていないと。中には国境を越えてくるニシンもいるので、なかなか科学的に理解するのが難しいのが現状とのこと。「いずれにしても道東沿岸周辺では2010年代以降、ニシンの漁獲量が増えているので余裕があれば、輸入物(アメリカ産やカナダ産)よりも少し値段は高いですが、北海道産、特に、道東産を買って頂ければと思います。」
※写真は黒田寛氏にお借りした資料です。
※音声はこちら・・・https://open.spotify.com/episode/4aeKDmyORB6FerlhX4HBlv

Facebook コメント