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水の年齢を測る(尾山 洋一編) [nature treasure]

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04.jpg今回は私達が飲み水などに利用している水が一体どの位の年月をかけて地上に出てきたものなのか、
また、どうやってそれを調べるのかについてのお話しです。
雨が降って、地中を通って、私達に利用されるまでの年数を水の年齢とした場合、日本だと大体3歳から150歳位の水を使っています。
世界の水の平均年齢は600歳と言われているので、日本の水は若い、そして軟水である事がわかります。
ではどうやって水の年齢を調べるのか・・・色々な方法があるのですが、水の中に含まれる「放射性物質」の濃度を調べる方法が
広く使われていて、中でも、トリチウムという放射性物質が、大体50歳位までの比較的若い水の年齢の把握に使われているそう。
トリチウムというのは、水素の仲間。三重水素とも呼ばれます。水素の原子核は1個の陽子でできているのですが、トリチウムの原子核は1個の陽子と2個の中性子からできています。トリチウムは水素と非常に似ています。例えば水。水素と酸素でできていますが、
水素の代わりにトリチウムが酸素とくっついて水ができる場合があります。
トリチウムなどの放射性物質には「半減期」があります。半減期とは、放射性物質が半分に減るまでの時間のこと。
トリチウムの半減期は約12年。例えばトリチウムが10あった場合、12年後には5になるということです。
この半減期を利用して、例えば湧き水のトリチウム濃度を測ることで、何年前に降った雨かというのが分かるのです。
雨に含まれるトリチウム濃度が最も高かった年は1950年頃。この時代に何が起こっていたかというと、先進国が水爆実験を相次いで
行っていたのです。そのため、大気中に大量の放射性物質が拡散して、地上に降り注ぎました。
1950年代から雨に含まれるトリチウムの濃度は徐々に減っていきます。これは大気中のトリチウムが雨で除去されたためです。
1952年の雨のトリチウム濃度を1000とすると、現在は2〜4位。これを利用して、例えば、今年湧き水のトリチウム濃度を測定したとすると、
トリチウム濃度が高い場合は水爆実験の名残があるという事になり、古い水ということが分かります。
逆にトリチウム濃度が低かった場合、最近の雨を反映しているという事で、若い水ということが分かります。さらに詳細に分析し、おおよその水の年齢が把握できるそう。
実は、水の年齢と流れている量が分かれば、地中に含まれている水の量が推定できると。水の少ない国では、地下にどの位水があり、どの程度まで利用できるのかを知る事はとても重要。日本の場合は温泉。温泉を枯れさせずに利用できる量はどのくらいかという事を推測できるという事なのです。
「トリチウムなどの放射性物質は自然界には存在しない、人間が生み出したものです。負の側面もありますが、この様な科学の場などで利用されている面もあるということを知っていただければと思います。」と尾山氏。
※写真は尾山洋一氏からお借りしました。

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