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アメリカ海軍の有人潜水調査船シークリフで潜航(満澤 巨彦編) [varied experts]

写真1_シークリフの母船.jpg写真2_シークリフへの乗り込み前(格納庫).jpg写真3_シークリフ.jpg
写真4_潜航証明書.jpg1998年に退役したアメリカ海軍の潜水船「シークリフ」(DSV Sea Cliff)で潜航した時のお話しです。
1996年9月、当時アメリカの所有する深海潜水調査船は、ハワイ大学 ウッズホール海洋研究所に1隻ずつ、アメリカ海軍に
2隻と計4隻あったそう。「アルビン」の潜航能力は水深4500m、「シークリフ」は6000m級でアメリカでは一番深くまで
潜れる潜水船だったそうです。その全長は8~9m位、人が入るのは直径が2m位の耐圧殻と呼ばれる丸い球。水圧から中に入る人や機械を守ってくれる役目があるのです。その中に床が作られ、操縦機器などが据えつけられているので空間としてはかなり狭いそう。「しんかい6500」、「アルビン」、そして「シークリフ」もこの中に3人が乗り込みます。
耐圧殻の内部は気圧も含め、陸上と同じ環境が維持されているので、普通の服装で大丈夫。ただ密閉空間なので燃えにくい素材のものが推奨される等の制約や、深海は水温が低く冷えるので防寒対策は必要とのこと。
潜水調査船はバッテリーで動くので長距離の移動はできず、母船で調査海域まで運ばれ、そこで母船から降ろされ深海に潜る。
ところで、なぜアメリカ海軍の潜水調査船に乗船する機会があったのでしょう?「当時、海底の熱水噴出域周辺の温度計測に係わっていたことで、アメリカの海洋地質学者でルトガース大学の教授のピーター・ローナー先生から誘いを受け、彼の航海に参加したというのが理由です。」
調査海域はアメリカ西海岸のオレゴン州沖のファン・デ・フカ海嶺の南端にある海底熱水活動域、音響ソナーを使い、海底から噴き出す熱水を可視化するというのが目的だったそう。海底熱水活動域とは、深海で地下のマグマにより暖められた高温の熱水が噴き出している場所のこと。装置はうまく作動し試験は成功。
ただ、計測に時間がかかる等の課題もあったそう。
さて、アメリカ海軍と言っても、「シークリフ」の母船は民間の海洋作業船。そこに潜水調査船で必要な格納庫などの設備が艤装されていたそうです。
船長含め船員は民間の方で、潜水船のオペレーションチームは軍人という構成。研究チームは満澤氏を含めて6人、日本人は彼一人だったと。
航海は11日間、調査は24時間体制で「シークリフ」の潜航が終わると、深海TVが搭載された無人探査機で海底の調査を行い、研究チームの人数も少なった事もあり、
かなりハードな航海だったそうです「シークリフ」の潜航は7回行われ、満澤氏は最後、7回目の潜航。
潜水調査船は1回潜航するとバッテリーの充電等整備が必要で、その時間は無人探査機で調査を行い、整備が終わると無人探査機の調査は終了し「シークリフ」の潜航が
行われるというスケジュール。JAMSTECの場合は、作業の安全面から「しんかい6500」潜航は日中作業で8時頃から17時頃、長くて8時間程度の潜航が基本。
アメリカ海軍の場合は、だいぶ違ったそうです。「9月11日の夕食後、今日は特になさそうな雰囲気だったの寛いでところ、整備が終わったという事で呼び出され、
潜航中の注意事項など説明を受け、21時半頃潜水船に乗り込みました。海底には翌日の午前1時過ぎに着底。
水深は約2400m、熱水活動域を捜して熱水イメージングソナーで観測、データを取って朝8時過ぎに計測が終了、午前10時過ぎに浮上、潜水船から出たのは午前11時少し前でした。潜水船は人が乗り込むと、ハッチが締められますが、ハッチを締めてからハッチが開くまでの時間は13時間3分でした。「しんかい6500」でハッチ開閉が
一番長かったのは9時間半ほどということなので、「しんかい6500」の最長のハッチ開閉よりだいぶ長かったことになります。」
現在、深海調査に活用されている潜水船については、10年位前から特に海外では民間企業が深海探査、潜水船の開発・運用に参入していて、1人乗りあるいは2人乗りで
全体が透明なアクリル製耐圧殻の1000m級の潜水船や、地球上の一番深い場所まで潜ることが可能な1万メートル級の潜水船も開発されているそうです。
「シークリフでの潜航後、潜航証明書をもらいました。この証明書には海の神ネプチューンレックスの領域に入ることが許される資質があり、シークリフで深海に潜った
という様なことが書かれていました。」写真の雰囲気からも当時の様子が伺えますよね。。。
※尚、写真は JAMSTEC 満澤巨彦氏からお借りしました。
・写真上(左)はシークリフの母船Laney Chouest
・写真上(真ん中)はシークリフへの乗り込み前(格納庫にて)
・写真上(右)は着水作業
・二段目の写真は 潜航証明書

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