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ディープ・トゥによる深海調査(満澤 巨彦編) [varied experts]

写真1:ディープ・トゥ調査イメージ図.jpg 写真2:ディープ・トゥカメラ.jpg 写真3:ディープ・トゥソナー.jpg
写真4:ウインチとケーブル.jpg英語でDeepは深い、つまり深海、Towは綱で引く、船で曳航するという意味。日本語で言うと深海曳航ということ。
有人潜水船、無人探査機は深海調査システムとしては花形と言えますが、実は、このディープ・トゥは深海調査では
開拓者的な調査システムで先遣隊長の役割を担ってきたそうです。
このディープ・トゥは、曳航体と呼んでいる軽自動車ぐらいの大きさのフレームに観測装置を組み込み、船からケーブルを使って深海まで降ろし、この曳航体を船でゆっくりと曳航するという方法で調査を行いうそうです。
太さ2cm位の丈夫な曳航用のケーブルを介して、観測装置に電力を送り、観測装置で得られたデータを船上に伝送。
ディープ・トゥカメラは海底の映像を撮るために海底上2~5m位の高度で、人がゆっくり歩くぐらいの速度で曳航。
またディープ・トゥソナーは海底の地形、底質を音波を使って把握するために海底から100~200m位の高度を人が早足で
歩く位の速度で曳航。装置として搭載されているサイドスキャンソナーと呼ばれるソナーは、曳航体から下向きに扇状に音波をだすことで、(曳航高度や音波の周波数に寄りますが)数kmの幅で海底面をスキャンし地形等の情報を得ることが
できます。航空写真を音波で取るようなイメージですが、得られるのは音波の反射による濃淡の画像なので、写真とは見え方がだいぶ異なるそう。
ディープ・トゥは無人探査機のように自分で移動するための推進器はついていないので、海底に引っかかった時などは、船の操船とウインチの操作により、離脱を
試みなければならないと。そのような時の船の操船やウインチ操作によって明暗がわかれるので、的確に状況を判断をするための現場経験は非常に重要とのことです。
潜水調査船や無人探査機に比べると船からケーブルで吊り下げて引っ張る、つまり曳航するだけなので、比較的にシンプルでコストがかからない、
また、少人数で調査ができるというメリットがあるそうです。ただ、ピンポイントで海底に着底して作業はできないというデメリットが・・・。
ディープ・トゥは先遣隊長的な役割という事から潜水調査船や無人探査機で調査するための事前調査に多く使われています。
そのため最初にガラパゴス沖で熱水を発見したり、日本でも沖縄トラフ・伊豆・小笠原海域での活発な熱水活動をディープ・トゥカメラを使って発見しているそうです。
実はこのディープ・トゥ、最初は、低レベル放射性廃棄物を海洋処分した後、深海でモニタリングするための技術として米国スクリプス研究所の協力を得て導入したもの。
「幸い低レベル放射性廃棄物の海洋処分は行われることなく国際条約で禁止となりましたが、この深海モニタリングの実証のため、北西太平洋の水深約6200mの海底に
コンクリートを詰めたドラム缶を落とし、ディープ・トゥソナーでドラム缶のエコーを確認し、そこにカメラを降ろして目視で確認するという探査技術の開発・実証を
行ってきました。私がJAMSTECに入所した年に最後のドラム缶の探査実験が行われ、わけもわからずドラム缶探しを行った記憶があります。私の場合、有人潜水船や無人探査機の調査を経験していますが、このディープ・トゥによる調査に係わる乗船がもっとも多く、本格的に深海調査が始まった80年代後半から90年代にかけてJAMSTECが実施した日本周辺のほとんどのディープ・トゥ調査に係わってきました。南西諸島、伊豆・小笠原、南鳥島沖、日本海、南海トラフ、日本海溝、北海道近海では1993年に
奥尻島沖で発生した北海道南西沖地震直後の奥尻島沖の海底、2003年の十勝沖地震の後の釧路沖の海底など、日本周辺の深海底を見てきました。」
ディープ・トゥはおそらく有人潜水調査船より広範囲の調査を行っていて、深探査にかなり貢献してきたシステムと言えると満澤氏。つまり、先遣隊長として深海調査の
裾野を広げるという役割を担っていて、すそ野が広い分、頂上は高くなり、その高みを目指すのが有人潜水調査船や無人探査機と言えるかもしれません。
「地味な調査手法でディープな内容だったかと思いますが、深海調査の基盤的な役割を担ってきたシステムとして紹介させていただきました。」
※尚、写真は JAMSTEC 満澤巨彦氏からお借りしました。
・写真上(左)はディープ・トゥ調査イメージ図(満澤氏手書き)
・写真上(真ん中)はディープ・トゥカメラ〜海底からの高さ(距離)を目視で確認するため前方に3mのチェーンがぶら下がっている。
・写真上(右)はディープ・トゥソナー〜横向きについている黒い装置がサイドスキャンソナーの送受波器(音波を出して海底からの反射波を受信する装置)
・写真下はウインチとケーブル 右側の灰色の重機がケーブルが巻かれたウインチ
参考URL:  https://www.jamstec.go.jp/j/about/equipment/ships/deeptow.html

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