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日本の3大深海湾(満澤 巨彦編) [varied experts]

写真1:相模湾初島沖のシロウリガイ群集.jpg写真2:駿河湾松崎沖のリップルマーク.jpg写真3:富山湾七尾沖のオオグチボヤ.jpg
図:3大深海湾の位置.jpg日本にある深海のある湾、日本の3大深海湾について。
釧路沖には山で言うとヒマラヤ級の深海が釧路から距離にして大雪山とほぼ同じ位の場所にあるというお話しを以前伺いました。
釧路沖は千島海溝なので水深は7000mを超えますが、相模湾は釧路沖ほどは深くはないのですが、湾なのに水深が1000mを超える深海があるそうです。一般的には太陽の光が届かなくなる水深200mより深い場所を深海と言いますが、満澤氏は水深1000mを超えるぐらいからが本当の深海といった感じと。
相模湾の他に有名な深海の湾が2つあります。水深1000m以上の深海があるのは、相模湾の西側、伊豆半島を挟んだ駿河湾、そして相模湾と駿河湾の丁度本州を挟んで反対、日本海側にある富山湾。この3つの湾が日本の3大深海湾。
3つの湾が深いのは日本列島を取り囲むプレートの沈み込みと関連しているそうです。太平洋側の相模湾、駿河湾は湾の中央にプレート境界が通っていますが、富山湾については、プレート境界が少しずれています。
3つの湾について、見どころ等ご紹介いただきました。3つの湾の地形的な特徴として、湾の中央にはトラフと呼ばれる溝状の地形が形成されています。富山湾は湾内では富山トラフと呼ばれその溝は富山深海長谷という名前で日本海盆とよばれる日本海の北部の中央付近まで延びているそう。その距離は1000km位。この様な地形は陸上の河川の跡が沈降したのではなく、海底の乱泥流、海の中で起きる土石流で削られ形成された地形と考えられています。富山湾では海底の流れと堆積物の関係を調べるため「しんかい2000」で潜航したことがあるそうですが、トラフの中央部分は一面堆積物に覆われて、海底付近の視程はあまり良くなかったそう。底層流により形成されるリップルマーク、流紋も見つけらることはできなかったと・・・。
一方で、駿河湾は海底には底層流で形成されるリップルマークが観察されています。
駿河湾も湾内では駿河トラフと呼ばれる溝状の峡谷が、紀伊半島から四国沖の南海トラフにつながっています。相模湾も、同じように湾内には相模トラフと呼ばれる溝状の地形があり、千葉県の房総半島沖で、日本海溝、伊豆小笠原海溝がぶつかる三重会合点と呼ばれる場所につながっています。
この三重会合点は、北米プレートと太平洋プレート、フィリピン海プレートの3つのプレートが海溝で接している非常に珍しい場所で、日本周辺では最も深く水深は9200mほどになるそうです。エベレストの高さより深い場所が、房総半島沖にあるのです。
駿河湾は3つの湾の中では最も深く、湾口で水深が2500mくらい。急峻な峡谷地形が特徴で、深海の流れも速く、流れで形成されるリップルマークが広く観察され、深海でも潮汐に起因し周期的に発生する激しい流れがあることがわかっているそう。
相模湾は駿河湾ほどではないそうですが、中央にプレート境界が通っていて、その境界に繋がっている活断層が関東大震災の震源と言われていると。
さて、この3つの湾に共通する3つの特徴があります。1番目はプレート境界と関係していること。2番目は陸側に山地があること。富山湾は立山連峰、駿河湾は南アルプス、相模湾は丹沢山地。そして3番目はこれら山からの土砂を運び海底で乱泥流を起こす河川があること。
富山湾は庄川や神通川、黒部川、駿河湾は富士川、相模湾は酒匂川。
深海湾の3つの特徴に加え、相模湾は富山湾や駿河湾と一味違う特徴があるそう。それは、海底にシロウリガイで代表される化学合生物群集が見つかっている事。
相模湾西側の初島沖や東側の沖の山堆では海底の断層に沿って冷湧水帯があり、その湧水に含まれる硫化水素やメタンをエネルギー源とする生物群集が分布。
初島沖では水深は1100か〜1200mぐらいになるそうですが、海底一面にシロウリガイと呼ばれる2枚貝を中心とした生物群集が見つかっているのです。
駿河湾でもシロウリガイの生息は確認されていますが、ごく小さな群集で相模湾のように海底一面がシロウリガイという感じではないそうです。
※尚、写真は JAMSTEC 満澤巨彦氏からお借りしました。
・写真上(左)は相模湾初島沖のシロウリガイ群集
・写真上(真ん中)は駿河湾松崎沖のリップルマーク
・写真上(右)は富山湾七尾沖のオオグチボヤ
・図は3大深海湾の位置

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