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JICAで研修員と九州へ・・・(照井 滋晴編) [nature treasure]

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長期出張のため、収録時現在は九州、熊本からの電話収録となりました。開発途上国への国際協力を行う組織JICAのが主催する研修にスタッフとして参加しているから。海外から日本に来ている研修員を引き連れて国内のいたるところで研修をしているのです。 照井氏の参加している研修のテーマは「湿地生態系における自然を活用した社会課題の解決」要するに、釧路湿原などの湿地を含む自然環境の持っている色々な機能を生かして気候変動対策や防災減災対策、生物多様性の保全などの社会的課題の解決に取り組みましょうということ。 多様な動植物が生息・生育している釧路湿原は、実は様々な機能を持っていて、私たちの生活を支えてくれています。 湿原に生える様々な植物は光合成をするので温室効果ガスである二酸化炭素を吸収して酸素を出してくれます。また、釧路湿原は冷涼な環境なので植物が枯れた後もなかなか分解されず積みあがっていきます。つまり、植物が体に蓄えた(温室効果ガスになる)炭素を空気中に放出せずにそのまま蓄えてくれるということ。これらの機能は、社会的な課題である温暖化の抑制、要するに気候変動対策に繋がるのです。また、釧路湿原はたいへん高い保水力を持っているので、大雨が降っても一時的に雨水をため込み、一気に下流へ流れ出すことを防いでいます。これは、湿原の持つ防災減災の一つの機能。
熊本県を含む九州各地では、近年、気候変動の影響と考えられる豪雨災害が頻発しています。 2020年には7月3日〜4日にかけて時間雨量30mmを超える激しい雨が降り続き、この豪雨により球磨川という河川流域では甚大な災害が発生。人々の生活に大きな爪痕を残し、3年たった今も復興工事が続いているところもあるそうです。そのような背景から、熊本県では近年「緑の流域治水」という新しい考え方で防災減災対策に取り組んでいると・・・。
「流域治水」ですが、 これまで日本では雨が降った場合、できるだけ早く河川の本流に水を集めて下流に流してしまおうという治水対策を行ってきました。近年は気候変動の影響もあり、一度に降る雨の量が増加する傾向に。これまでに整備していた河川堤防で想定していた流量を越え、堤防を越えて市街地に溢れて洪水被害をもたらすようになってきました。 そのため、今までのように河川区域に堤防やダムを建設したりするだけの対策ではなく、雨水が河川に流入する集水域から河川の氾濫によって浸水が想定される氾濫域も含めた流域全体で治水をしようという考えが「流域治水」。 熊本県では、この対策に環境的な視点を組み込み、環境保全にもつながる「緑の流域治水」という考えのもと、様々な取り組みを行っているそう。大雨が降った際にその水が一気に河川に流れ込まないように、水を貯留できるような環境を作る活動を行っている高校にお邪魔し、その様子を見学させていただいたそう。学校の校内に雨水を一時的にためることのできる環境を一から手作業で作る取り組みをしていたと。 緑のある庭園のようなものです。 そのような環境を「雨庭」といいます。 地上に降った雨水を下水道に直接放流することなく一時的に貯留させ、ゆっくりと地中に浸透させる構造を持っている緑を植栽した空間。 アスファルトなどに覆われた都市部では、地上に降った雨はほとんど地中に浸み込むことなく排水されていきます。そして、排水路を通った水は一気に集まり、排水能力を上回ると洪水を引き起こしてしまいます。 この「雨庭」を高校生たちが「緑の流域治水」や雨水の浸透について県内の大学の専門家とのワークショップを通して学び、自分たちで雨庭をつくる場所の選定やデザインを考えて校内に作っていたとおっしゃっていました。 高校生たちが作った雨庭には、降雨時に高校の屋上から排水される水をそのまま排水路に流さず、雨庭に流れ込むようにしたそう。効果を検証する実験を行った結果、2020年の豪雨災害の際と同等の雨が降っても、その水を貯留し、ゆっくり排出できる能力があることが分かったそうです。
また、 高校生たちは、現在「庭」を作ることができないような地域の民間企業の施設にプランター型雨庭を制作・設置する取組みも行っていて、民間企業、高校、専門家、行政などが協力体制を組み治水対策に取り組んでいるそうです。「 私たちの場合は、すぐそばにあたりまえの様に日本一の湿原があり、湿原が雨水を一時的に貯留してくれ、私たちの生活を守ってくれていることもあたりまえのように感じてしまっているところがありますよね。」
※写真は照井滋晴氏からお借りしました。
※音声はこちら・・・https://open.spotify.com/episode/1mOR0eIITWIdSTFWtnVcEx

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