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2024.0425 O.A 河口編 [chord 5]

・Army of Me / Björk
・Hyperballad / Björk
・The Modern Things / Björk
・It's Oh So Quiet / Björk
・Isobel / Björk
~今回は河口氏セレクト、今回はBjörk 特集です。
出演は河口氏&midoriです。

沿岸親潮:道東沿岸を潤す流れ~1(黒田 寛編) [fun science]

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道東の沿岸~大陸棚上を岸を右手に見ながら西側に流れる海流「沿岸親潮」について。「親潮」ではなくて「沿岸親潮」です。
「親潮」は北日本にもたらす「母なる潮」親潮であることは、御存知ですね。正確には親潮は道東の大陸斜面に沿って、水深で言えば500mよりも深い海域を南東方向に流れる海流。ですから「親潮の本流」が道東の沿岸に接触したり、道東の岸近くまで流れ込んでくることはないのです。
他方、親潮と岸に挟まれる大陸棚上から岸の間を流れているのが「沿岸親潮」という流れ(海流)。
一年を通じて、道東の沿岸~大陸棚上(水深200m以浅)を岸を右手に見ながら襟裳岬方向に西へ西へとに流れています。沿岸親潮は、親潮よりも沿岸側を、親潮と並行して流れ、基本的には、親潮と沿岸親潮は、互いに独立した海流であると考えられているそうです。
両者、典型的な季節変化のパターンがあり、親潮は冬に強まり、沿岸親潮は冬と夏、一年の間に2回、強まるとのこと。また、沿岸親潮が輸送する海水は、北海道のオホーツク海沿岸に分布する海水が大半を占め、オホーツク海から太平洋に流れ出るまでの間に周囲の水と混ざった海水、これを沿岸親潮が輸送しているそうです。
「そして、面白いことに、沿岸親潮が運ぶ海水の性質も大きく季節変化します。専門的な言葉を使うと、冬春は<沿岸親潮水>という極低温・極低塩分の海水、夏秋は<宗谷暖流変質水>という高温・高塩分の海水になります。」
夏秋に分布する宗谷暖流変質水、オホーツク海沿岸にはどのような経路でたどり着いているのか?まず、九州の南西沖。そこには暖流である黒潮が流れています。この黒潮の運ぶ海水の一部が、黒潮の本流から分岐して、九州西方の大陸棚を経由、対馬海峡から日本海に流れ込みます。そして、対馬暖流と名前を変えて日本海を北上。北上の仕方は単純ではなく、第一分枝、第二分枝、第三分枝という具合に、複数に枝分かれして北上するそう。そして、枝分かれした流れが合流し、津軽海峡の西口付近に到達すると、対馬海峡から入った海水の内の70%程が津軽海峡から太平洋に流出。残りの30%は、津軽海峡からさらに北海道の西方を北上し、稚内北側の宗谷海峡からオホーツク海に流入。さらに、オホーツク海に流入した海水は北海道のオホーツク海沿岸に沿って、知床方向に流れます。この流れを宗谷暖流と呼び、宗谷暖流が運ぶ高温・高塩分の海水を宗谷暖流水と呼ぶそうです。その宗谷暖流水は、稚内から網走沖を経由して知床まで流れた後、北方四島周辺の海峡を通じて太平洋に流出。その過程で周囲のオホーツク海水と混合して宗谷暖流変質水となり、この水を沿岸親潮が道東沿岸~大陸棚域を輸送するということ。結構な長旅です・・・。
さて、沿岸親潮が夏秋に輸送する宗谷暖流変質水、襟裳岬付近まで輸送されることは観測されているそうですが、その後、どこへ行くのか???そのあたりはまだ、わかっていないそうです。「ちゃんと調べた人がいなく・・・さらに、道東沿岸を流されながら、どんどんもともとの海水の性質を失うので、水温や塩分からだけではこれ以上の追跡ができないというのが実際のところなのです。」
近年は、日本海での対馬暖流の勢力が強くなっているという報告もあり、そうであれば宗谷暖流も強くなっている可能性があり、さらには宗谷暖流変質水や夏秋の沿岸親潮にはすでに影響が出ているかもしれないとおっしゃっていました。
※写真は黒田寛氏にお借りした資料です。
※音声はこちら・・・https://open.spotify.com/episode/2wj7h7FzI0xcVK98q1bXRI

やっとフィールド調査がスタート! [nature treasure]

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春になると、冬の寒さをじっとこらえていたキタサンショウウオたちが動きはじめ、繁殖のために水の中に移動し産卵をします。「それを春先は今か今かと待っているわけですが、毎年毎年気になっているのは、産卵がいつ始まるのか。ここ数年は、釧路湿原周辺域で最も産卵が早い場所で3月末頃にスタートしているのでその頃になるとそわそわしてくるわけです。」昨年は産卵開始が早く、3月20日頃に初めの産卵を確認。キタサンショウウオの調査を始めて20年で最も早いスタートだったそう。
以前はどうだったのか?照井氏は過去に調査をされていた方の話や昔の文献から調査開始。「私が調査を始める以前から調査をされている方の話をきいていると4月中旬頃に始まるイメージだという答えを何人かから聞くことができました。それがだいたい1990~2000年くらいまでのこと。」
それ以前も気になったので、文献を探したところ、最も古い記録は、今から約60年前の1965年。場所は釧路市の北斗のあたりの記録で、今はもう牧草地になってしまっているエリアのものだったそうです。この年の産卵開始日は4月26日。そこから10年分の記録があったそうですが、年によって変動はあるものの4月23日~29日の1週間の間に開始している感じだったとおっしゃっていました。「一概に言えませんが、1960年代から60年間かけて産卵時期がだんだん早くなってきているのは間違いなさそうです。約1か月早くなっていることに本当に驚きました。」
その産卵時期が早まっている要因はやはり地球温暖化の影響である可能性が高いのでは?と。産卵前の月にあたる3月の平均気温について気象台の過去のデータを調べた結果、2024年までの記録では、間違いなく右肩上がりに気温が上昇していることがわかったそうです。このデータのうち、4月下旬頃に産卵を開始していた1960年~1970年代は、20年間の3月の平均気温は-1.8℃。1980年~1990年代は、-1.4℃と約0.4℃上昇。そして、2000年から2019年までは、-0.3℃。1960~1970年代と比べると約1.5℃、1980~1990年代と比べると約1.0℃、3月の平均気温が上昇しているという結果に・・・。
「この1.5℃の上昇が産卵時期をじわじわと1か月ほど早めているのであれば、今後はさらに早まっていくのかもしれません。産卵時期が早まることで、キタサンショウウオにとってどのような影響が生じるのか、今のところわかりませんが、決してよいことばかりではないと思います。」
温暖化の影響については、やはり3月頃の気温と産卵開始時期には関係がありそうな気がしますよね・・。他にも積雪の影響や、何か単一の要因の影響ではなく、気温と積雪量とかの複合的な要因なのかもしれません。今後研究の課題にしていきたいと考えているそうです。
「今年はというと3月の平均気温が-0.8℃と昨年よりも3.2℃も低い結果でした。ということは、昨年の3月20日よりは産卵開始が遅くなるのでは?と推定するのですが、気になって3月22日に現地のチェックに行ってきました。卵嚢はまったく確認できませんでした。それどころか、産卵水域にはまだ雪が残っている状態でした。その後も、2、3日おきにはチェックに行ったのですが、4月1日までに産卵は確認できませんでした。」と残念そうな照井氏。
放送の頃には元気な彼らに会えていると良いですね・・・
※写真は照井滋晴氏からお借りしました。
※音声はこちら・・・https://open.spotify.com/episode/4HAOzyxJ0HK35GfZSLZCR4