SSブログ

能の台詞〜いかに申すべき事の候(中西 紗織編) [varied experts]

IMG_8677.jpgIMG_8678.jpgIMG_8679.jpg
IMG_8680.jpg「あの、申し上げたいことがございます」というような意味。登場人物が改めて言いたい事があるという大事な台詞。
そして、この言葉を聞いた相手が、「何事にて候ぞ」と返すことが多い。
言いたいことは何ですかと、さらなる発言を促すわけ。物語はさらに、重要な場面に迫っていく展開へ。
●《雲雀山》
 前ジテ:乳母の侍従 後ジテ:前ジテと同人 子方:中将ひめ姫 ワキ:右大臣藤原豊成 ワキツレ(前);豊成の従者 ワキツレ(後):中将姫の従者 
アイ:鷹匠、勢子(狩猟の場で鳥獣を追い出したり逃げるのを防いだりする役)、いぬびき犬引(猟犬使い)
最初に右大臣藤原豊成の従者(ワキツレ)が登場し、中将姫の身の上について次のように語る。中将姫(子方)は、豊成公の娘ですが、「さる人の讒奏により」「讒奏」つまり、天皇などに対して讒言を奏する、他人をおとしいれるために偽りの誹謗中傷を言う。豊成は、この偽りの言葉を真に受け、従者に、姫を雲雀山の山奥に連れていって殺すようにと命じる。ところが従者は殺すことなどできず、姫に仕えるめのと乳母の侍従(シテ)とともに、雲雀山の庵に姫をかくまう。乳母は、草花を摘んで里へ行って売り、細々と暮らしています。豊成の従者がここまで状況を語ったところでこの台詞。従者は乳母に対して「いかに申すべき事の候」と。すると、乳母は「何事にて候ぞ」と答えます。従者は「今日もまた里へお出かけください」と花を売りに行くように促す。さらに乳母は「では、姫君に行ってきますと申し上げてきます」と言います。そして再びこの台詞。今度は乳母から姫君へ「いかに申すべき事の候」それに続いて、今日もこれから里へ出かけて行って、用が済んだら直ぐに帰ります・・・と。そして後場となり、乳母が里へ向かう途中で、雲雀山に狩りにやってきた豊成公とその従者たちと遭遇。乳母は花売りとして、花にちなんだ漢詩や和歌を巧みに引きながら、自らの境遇を語る。そのうち豊成は、この女性こそわが娘に仕えていためのと乳母だと気づき、自らの行いを後悔し、涙を流しながら、姫君と会わせてほしいと言う。最後はめでたく親子の再会が果たされ、豊成が姫を連れ帰るというハッピーエンド。
●《三井寺》
 前ジテ:千満の母 後ジテ:同人 子方:千満丸 ワキ:三井寺の僧 ワキツレ:従僧(三人)
オモアイ:門前の者 アドアイ:能力
京都の清水寺の観音様に祈る女(シテ)が登場。この女性は生き別れになった息子千満丸との再会を祈っている。すると三井寺へ行きなさいという夢のお告げがあり、女性は三井寺へ旅立ちます。後場となり、三井寺の場面。寺の住職(ワキ)と僧たち(ワキツレ)が、最近寺に仕えることになった少年とともに月見をしている。先ほどの女性は、物狂となって登場。ここは女人禁制の寺。能力、寺の下働きの男(アイ狂言)の手引きで、女性は寺に入り込み、鐘の音を聴いて益々興に乗り、鐘楼にあがり鐘をつく。舞台上には小さな鐘が吊られた鐘楼の作り物が置かれている。そして、少年がこの台詞「いかに申すべき事の候」と。するとワキの三井寺の僧が「何事にて候ぞ」。さらに少年は「これなる物狂の国里を問うて賜り候へ」。この物狂の女性の郷里はどちらなのかおたずねになってくださいと言います。そして、女性が「駿河の国、清見が関」と答えると、少年は「なんと、清見が関の人ですか!」。その声を聞いた女性は、声の主こそわが子の千満丸ではないかと気づくのでした。再会がかない、二人連れだって故郷へ帰るという結末。
●《野守》
 前ジテ:野守の翁 後ジテ:鬼神 ワキ:山伏 アイ:春日の里人
野守とは、野を守る番人のこと。最初に、出羽のはぐろさん羽黒山からはるばるやってきた山伏(ワキ)が大和国、春日の里に着き、一人の翁、野守の老人(前ジテ)と出会う。山伏が、目の前にある由緒ありそうな池についてたずねると、野守は、これこそ「野守の鏡」だと答え、野守の鏡とは、昔鬼神が持っていた鏡だといわれを語る。そしてこの台詞。ワキの山伏が「いかに申すべき事の候」と。続いて「はし鷹の野守の鏡と詠まれたるも、この水につきての事にて候か」。「はし鷹の野守の鏡」というのは「はし鷹の野守の鏡得てしがな 思ひ思はずよそながら見む」の和歌。山伏が、本物の「野守の鏡」を見たいと言うが、野守は、それは恐ろしい鬼の持つ鏡なので、見ることはかなわないと言い、塚の中へ消えてしまう。舞台上には作り物の塚。そして、後場。山伏が一心に祈っていると、鬼神(後ジテ)が大きな丸い鏡を手に持って塚の中から現れる。野守の鏡は、天界から地獄まで、すべてのものを映し出すのだと鬼神は語り、鏡にいろいろなものを映し出して、山伏に示す。やがて、鬼神は、大地を踏み破って奈落の底へと姿を消す。迫力たっぷりの台詞でこの能は締めくくられます。「大地をかっぱと踏み破って奈落の底にぞ入りにける」。

2024.0112 O.A 「この冬の序盤・・・」 [varied stories]

逸見光寿さん(写真家)
https://coju.info/

暖冬で、コンディションを読むのが難しいと逸見氏。「アイスバブルはかなり苦戦しました。湖が結氷しない上に、結氷するかしないかのタイミングでまとまった降雪が・・・。目先を変えて、こんな時しか撮影できない被写体を探しました。」
1:ヤウシュベツ川河口
国道244号に架かる万年橋から望む風景が美しい。青空を映す水鏡の青も美しいが、夕暮れ時は息をのむ絶景に。この日は夕日だけではなく、風蓮湖側のヴィーナスベルトがすごかったと。ヤウシュベツ川は風蓮湖に注ぎ込み、その河口は別海十景に認定されている。
2:尾岱沼
撮影した日は12月にもかかわらず10度を超える気温。冬霞というより、まるで季節外れの春霞?無風で、ぼんやりした風景が水鏡に映る。この野付湾は「日本のウユニ塩湖」みたい。長時間露光で水面を際立たせた。厳冬期は結氷し、水平線ならぬ氷平線が現れる。
3:阿寒湖
冷え込んだ晴れた日に、空気の温度より水温が高いことで、水蒸気が発生し霧となる現象。けあらし。条件の整った日の夜明け前から撮影し、見事なけあらしを捉えることができた。
4:錦沼
今シーズン、オンネトーのアイスバブルがほぼ全滅だったので、ふと行ってみた場所。するととんでもない風景が待ち受けていたと。一度目は雪が多少降った時期で、倒木と雪のコントラストが絶妙。二度目は雪が積もった状態。雪の白の合間に沼から流れる小川のオレンジ色が鮮烈。
※写真は逸見光寿氏からお借りしました。
1.jpg2.jpg
3.jpg4.jpg