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難民問題・・・(黒田 理編) [varied experts]

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今回は難民の問題。といっても遠いアフリカ、中東などで干ばつや紛争で命が危険にさらされている人たちのことではなく、日本に逃れてくる人たちの話。自国の政府や軍に迫害され、このまま暮らしていたら命が危ないと主張する人たちです。大人も小さな子ども。中には親が日本に逃れてきて、日本で生まれた子もいるそうです。日本に逃れてきた外国人で、昨年、保護しなければならないと日本の国が正式に<難民>と認めた人は202人。昨年、難民として認定してほしいと申請した人は3700人余り。わずか5%の人が認められたにすぎないのです。アメリカやヨーロッパの国々では1年に数千人、1万人の難民を受け入れています。それと比べると桁違いです。日本の難民認定はきわめてハードルが高いと言われているそうです。たとえば、自国の政府や軍に命を狙われていると主張するのならば、それを証明する書類を見せろ等と言われるそう。難民に認められれば、国内で暮らしていけるように支援を受けられます。日本国内で働くことはできるし、自国に送り返されることもありません。日本語教育も受けられます。しっかりと命、人権、生活が保障されるのです。
問題は難民として認められない大勢の人はどうなるか。日本にいる資格がないため、自分の国に強制送還されてしまいます。でも多くの人は命が危ないと訴えているので、自国に送り返されては困ってしまいます。なんのために日本に来たのか分からなくなる。そこで異議申し立て。再び難民申請。申請中は自国に帰らせないルールがあるので、その人たちはその審査が行われている間、国の出入国在留管理庁、いわゆる入管の施設で留め置かれるとのこと。実は何年も施設に閉じ込められている人も少なくないそう。そのような長期の収容が人権を侵害しているとして国内のみならず国際的にも批判されていると黒田氏はおっしゃっていました。
名古屋の施設でスリランカ人女性のウィシュマ・サンダマリさんが亡くなったのを覚えている方は多いと思います。ウィシュマさんは2017年に来日。難民ではないのですが、別の事情で自国に帰ることができず、3年後に施設に収容されました。そして体調が悪くなっているのに病院にも連れて行かれず、施設のベッドで息絶えました。先日、ウィシュマさんの弁護団が亡くなる直前の彼女の様子を撮影した動画を公表しました。「ご飯が食べられない。医者に診せてほしい」と何度も何度も懇願するのに、入管職員は取り合いませんでした。彼女のように施設に入れられている人は大勢いるそうです。在留資格がなくなり、強制送還を命じられながらも、帰国を拒む外国人は昨年末時点で4233人。このうち日本で生まれ育った18歳未満の子どもは5%弱の201人いるそうです。入管は、逃亡の恐れのない人たちに一時的に施設の外で暮らすことを認めています。これを<仮放免>と言うそうです。それも入管の裁量次第。はっきりした基準がなく、ある日突然、再び施設に収容されてしまうこともあり、しかも仮放免中は働くことが許されず、国民健康保険にも入れません。住んでいる都道府県から外に出るときは届け出なければならないそうです。
「私は3年前に道東に来る前、東京でこのような家族、子どもたちを何人も取材しました。たとえば埼玉県に住む39歳のトルコ国籍のクルド人男性。彼は16年前に家族とともに来日。3人の小学生の息子がいて、うち2人が日本で生まれました。家族全員が難民と認められず、強制送還を命じられていました。それでもトルコに帰れば殺される、と送還には応じませんでした。そうした中、家族の中でこの男性1人が入管の施設に収容されてしまいました。家族と離ればなれです。だれを施設に収容する、だれを仮放免にする、それを判断するのはすべて入管の裁量。その理由も示しません。男性が<仮放免>とよばれる制度で施設の外に出されたのはそれから1年半後のこと。ただ、働くことは許されず、国民健康保険にも入れず、埼玉県から出る時には入管に連絡をしなければならず。それを怠れば施設に戻されます。」
入管に関する法律の改正案が国会で審議されてきました。現在は難民申請を何度でもできますが、それを2回までとするもの。政府はこうすれば、自分の国への送還を嫌がる人も強制送還でき、施設での長期収容はなくなると主張しています。難民認定を求める人の多くは自国に帰れば命がないと恐れています。だから日本に残らざるを得ないのです。たとえ難民の要件を満たさなくても、日本にいるうちに結婚した人もいると・・・。子どもが生まれた人も・・・。どうして1人で母国に帰ることができるでしょうか。日本は<難民鎖国>と言われているそうです。そもそも難民かどうかを審査する方法が妥当なのか、まずは考え直す必要があると黒田氏。
「個人的には、なんの罪もない子どもに対してまでこんな理不尽なことをしなければならないのか・・不思議でなりません。今後も国の動きをしっかり見ていく必要があると思います。」同感です。

2023.0602 O.A 「オーストラリアと日本の医療制度の違い 」 [varied stories]

鈴木雅章さん(翻訳者・ライター)

まず、大きな違いは、日本の国民皆保険制度でしょうか。1958年に国民健康保険法が制定され、1961年に国民皆保険が実現。自営業や無職なら国民健康保険、サラリーマンなら健康保険に加入する必要があります。医療費の自己負担額は最大3割まで。すべての日本国民が公的医療保険に加入して保険料を負担し合うことで、個人に掛かる医療費を軽減しているという訳。
オーストラリアは1975年に国民健康保険制度を導入したそうですが、不人気で1978年に廃止。1984年から現在の「メディケア」制度を導入したそう。これは日本のように全国民(永住権保持者含む)が公的医療保険に加入して保険料を負担するのではなく、個人の所得から一定の割合の税金を納付させることで、医療費の財源を確保するものだそうです。メディケア税の税率は課税所得の2%とのことですが、低所得者は免除または軽減されるそうです。
その医療制度の違いですが、日本の場合、保健証があれば医療機関を自由に選ぶことができ、窓口負担だけで診療や薬の給付など、必要な医療サービスを平等に受けることができることになっています。
ところが、オーストラリアの場合、まずGPと呼ばれる一般開業医、日本で言うところの「かかりつけ医」に行く必要があるそうです。日本のように、最初から耳鼻科や眼科、皮膚科などを勝手に受診することはできないのです。 GPが診断し、さらなる検査・診療・治療が必要だと判断すれば、GPが専門医への紹介状 (Referral Letter)を書き、その紹介状をもとに、専門医(スペシャリスト)の予約を取る必要があるそうです。その予約を取るのが難しく、数週間から数カ月も待たなくてはならないこともあるとか・・・。ですからオーストラリアの医療機関は、 GP・各種検査機関 ・専門医 (スペシャリスト) ・病院 ・薬局 に分かれているということ。 オーストラリアの病院は、公立病院と私立病院に分けられ、日本のような入院病室を持つ個人病院は存在しないそうです。公立病院の場合、入院費や治療費、出産費用も基本的にすべて無料。 検査の結果や専門医の診断の結果はGPに送られるので、再びGPに行き、結果を聞くのです。GPの受診料はメディケアでカバーされているので支払う必要がないそう。歯科や眼科、救急車の利用などはメディケアでカバーされていないので、全額を支払いたくない場合は別途、民間医療保険に加入する必要があるそうです。なかなかGPもたくさんの患者さんがいるので予約を取るのも大変そうです。ですから比較的容易に診療を受けられるように民間医療保険に加入している方もいらっしゃると。ただ、その加入率は55%前後ということですから全員がそういうわけにはいかないみたいです。
「最初オーストラリアでびっくりしたのが、看護師さんがナース姿で通勤していることでした。電車の中や外でも結構見かけます。その理由は更衣室がないからとか・・・。真偽のほどは定かではないのですが。』
※写真は鈴木雅章氏からお借りしました。公立病院、GP、漢方医。
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