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飽和潜水〜その1:仕組み〜(満澤 巨彦編) [varied experts]

写真1飽和潜水実験が行われた「かいよう」の記事.jpg 写真2潜水シミュレータの外観.jpg 写真3潜水シミュレータの内部(居室).jpg 写真4潜水シミュレータの内部(シャワーとトイレ).jpg
今回は「飽和潜水」について。JAMSTEC設立当初は潜水技術の研究に力を入れていたそう。
当時、大陸棚に眠る海底資源の利用や、大規模な海中土木作業が注目されていたという社会的な背景もあり、必要な潜水技術として飽和潜水技術の確立を目指していたそうです。このプロジェクトで、水圧が人体に与える影響や飽和潜水を安全に行うために必要な装置や設備の開発・運用、作業中の支援体制構築などが行われ、ここで得られた様々な知見が、現在の飽和潜水に活かされているそう。
この<飽和>とは、呼吸することで体内に吸い込まれた<気体>が、人体にこれ以上、溶けない、つまり吸収されない状態になること。潜水中はこの飽和した状態を維持することが重要なことから、飽和潜水と言うそうです。
「スキューバダイビングをしている方はわかると思いますが、海の中に潜ると水圧がかかり、体の中に溶け込む気体は陸上に比べ多くなります。溶け込むにはある程度時間がかかるので、すぐに飽和するわけでありません。スキューバダイビングでは、飽和する前に体内に溶け込んだ気体が浮上する時に体の中で気泡にならないように、安全に潜れる深さとそこにいる時間、浮上にかける時間が決まっていて、その範囲でダイビングを楽しむことになります。」個人差はあるものの、このルールを守らないと減圧症という症状が発生し、特に血液中に溶け込んだ窒素が気泡になると、その気泡が血管をふさぎ塞栓を起こし、脳障害やひどい時は死んでしまうこともあるのです。スキューバダイビングは、日常の生活の中で、海の中に潜って、また陸上にもどることができるのですが、レジャーとして安全に潜れる深さは水深30mまで。海中作業などを目的に訓練を積んだとしても水深40mぐらいまでとされているそうです。スキューバダイビングでしょっているタンクの中に入っているのは、圧縮された普通の空気。水深約40mより深くなると、人間の体の中に溶け込んだ気体が体内で気泡にならないように注意しながら何時間もかけてゆっくりと浮上しなければならなくなります。その間、ずっと水中にいなければなりません。これを解決するために、ダイバーに加圧・減圧が可能な円筒形のチャンバーに入ってもらうそう。チャンバーの気圧を作業する海底と同じ気圧、例えば水深100mで作業する場合は、11気圧にして体内に溶ける気体を飽和状態にすることで、そのままの状態で海底で作業をすることができるように・・。チャンバー内には、人が長時間滞在し生活できるような設備は備わっているとおっしゃっていました。
JAMSTECでは水深300mまでの飽和潜水技術の研究開発を実施。飽和潜水を行うための海中作業実験船「かいよう」が建造され、その船内に加圧、減圧ができるDDC(deck decompression chamber)と呼ばれるチャンバーが設置され、そのチャンバーの中で、ダイバーが長時間生活することに。船内の中で、さらに閉鎖されたチャンバー内に入ることになるそう。船内のチャンバーDDCから海の中に潜るには、気密状態を維持し同じ気圧を保ちつつダイバーを海底に運ぶSDC(submersible decompression chamber)と呼ばれる水中エレベータを使うそうです。そのエレベータの床には海中に出入りするためのハッチがあり、海底に着くとダイバーはそのハッチをあけて海に。海底の水圧とチャンバー内の気圧は同じなので、ハッチをあけても海水が入ってくる事はないそう。ただ、人間の体に直接高い気圧がかかるので、その時の人体に異常が無いか等様子をみながら、徐々に気圧を上げ、異常がでたら気圧を下げたりする必要があるのです。飽和潜水を実施している間は、海底で作業する時以外はチャンバーの中に数日から数週間入って生活しなければならなくなり、精神的にも相当な負荷がかかると満澤氏。
「閉鎖された生活空間なので宇宙ステーションと同じですが、船に設置するので、それほど大きな居住スペースではないので、かなりタフな仕事と思います。ちなみに水深100mの海底での作業が終わった後、チャンバーの気圧を陸上と同じ気圧になるまで、ゆっくりと減圧するのですが、約5日〜1週間かかると。
水深300mでは12日くらいも必要だそうですよ。」
※尚、写真は JAMSTEC 満澤巨彦氏からお借りしました。
・写真上(左)は「かいよう」の記事。なお「かいよう」は2016年に退役。
 (Blue Earth, 2009 通巻103号, p26-27, https://www.godac.jamstec.go.jp/doc_catalog/view/metadata?key=be103_all&lang=ja
 参考URL:https://www.jamstec.go.jp/j/pr/blueearth/
・写真上(右)は潜水シミュレータの外観
・写真下(左)は潜水シミュレータの内部(居室、棚のようなのはベット)
・写真下(右)は潜水シミュレータの内部(シャワーとトイレ)
 JAMSTECに保管されている水深300mの飽和潜水の陸上実験に使用された潜水シミュレータ(チャンバー)の写真。
 このチャンバー内に4人が入って2~3週間の高圧環境での実験を繰り返し実施。実際に海域で使用されているチャンバーとほぼ同じ。

2023.0616 O.A 「星降る空を見上げる・・・」 [varied stories]

那良伊功さん(南の美ら花 ホテルミヤヒラ 取締役統括部長)
https://www.miyahira.co.jp/company/

前回お約束通り、星のお話しを伺いました。
石垣島は国内最南端に位置する八重山諸島に属しています。石垣島では観測できる星の数が非常に多く、一つ一つの星がとても鮮明に見えることで国内外から天体観測に人が訪れる有名な観測スポットなのだそう。88星座のうち84星座を観測できるそうですから。
それを証明するかのように、2018年3月30日にダークスカイ協会の星空保護区認定制度で、石垣島を含む西表石垣国立公園が国内初めての星空保護区として認定されたとおっしゃっていました。ちなみにアジアでは2番目の認定だそうです。
それ以外にも<天文学者が選ぶ日本一美しい星空 第1位>や<日本三選星名所>にも認定されているそう。それだけ星空が美しいということなのでしょう。さらに、本来北半球で観ることのできない南十字星なども今の時期は観測できるそうです。もちろん台風がこなければのお話しですが。
なぜそんなに星空が綺麗なのか?空気がきれいで市街地の人工光が少ないことはもちろん。さらに、大気が乱れることも少ないため、くっきりとした星々を望むことができる・・・とのこと。
「カヤマ島という無人島があるのですが、ここで7月7日に星まつりキャンプをやっているんですよ。日没が夜の8時くらい。それまでBBQなどで楽しんで、その後は星空観望会です。石垣島の天文台長の宮地さんにレクチャーしてもらって最高の星降る空を楽しむことができますよ〜」と那良伊氏。
八重山の人が時節を知るのに星を目印にしたそうです。例えば、オリオンの3つ星が登ってきて東の風が吹くようになったらサトウキビのタネをまく時期とか。金星が輝きだすと、仕事が終わる時間だよ・・というように。
また、独特の星の呼び名もあるそうです。スバルはむりかぶし(群れている星という意味)。北極星は、ニシナナティ・ブシ (北の七つ星という意味)。「この様に星にまつわる文化が残っているのは、世界的にも稀なことのようですよ。」とおっしゃっていました。
※写真は那良伊功氏からお借りしました。
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小浜島より!カヤマ島へ出発!!
島の全景。小浜島の北東の周囲2.5kmの無人島。
天の川を独り占め。
ハイ!記念撮影!
奇麗な砂浜でしょう・・・
というコメント付きで写真を送ってくださいました。
「誘われる〜〜〜〜〜〜〜ぅ」