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寒い冬に春からの調査研究を考える(照井 滋晴編) [nature treasure]

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この時期は、春からの調査に向けて、一緒に研究をしている研究者の方々と共に春からどのような調査・研究に取り組むかを相談したりしているそう。 打合せでは、まずこれまでの調査研究でわかったこと、そして次に明らかにしたい課題を整理。 要するに、キタサンショウウオの何がわかっていないのか?どんなことを明らかにしたいのか?ということを話す感じと。 よくわかっていないことと言えば、キタサンショウウオはどこで冬を越すのか?ということが一つ。また、越冬に限らず、繁殖期以外の時期にどんな場所を生活の場として利用しているのか?そして、どれくらいの範囲を生活圏にしているのか? そのようなこともまだまだデータが少なくてわかっていないのです。 そのように課題を挙げ、次にその課題を解決するためには、どのような調査をすれば良いか?ということについて話し合いをするそうです。
例えば、越冬場所や行動圏といった課題を解決するためには、どうすれば良いでしょうか? 最も確実なのはキタサンショウウオをストーカーのように追いかけること。 これができれば、越冬場所も行動圏も好きな環境もすべて明らかにできます。その方法の一つに、標識再捕獲法というものがあるそう。捕まえたサンショウウオに標識を着け、捕まえた場所に返し、後日もう一度捕獲することで、同じサンショウウオがどれくらい移動するのかを推定。「この方法だともう2回以上同じサンショウウオを捕獲しなければならないので、たくさんのデータを得ることがなかなか難しかったりします。 もちろん不可能というわけではなく、過去の研究ではこの方法でキタサンショウウオが繁殖池から100mくらい離れたトラップで捕獲されたことがあり、キタサンショウウオが少なくても繁殖池から100mは移動することが明らかになっています。 これはとても大事なデータで、このデータからキタサンショウウオを守るためには繁殖池から少なくても100mの範囲は生活圏になっているので守った方が良いということが言えるようになります。」ただ、この方法では行動圏を推定することはできても、移動のルートや好みの環境など詳細なことはわかりません。この様な問題を解決するためにはリアルタイムで居場所を特定する方法にしなければいけません。そのための方法の一つに発信機調査というものがあると・・・。 ラジオのような電波を発信する発信機をサンショウウオにとりつけ、そこから出る電波を受信器の音の強弱を頼りに追跡するという調査。
「でも、1個あたり数万円と高額なうえに、始めてしまうと電池が切れるまで毎日調査に行かなければならず、労力もかなりかかります。 キタサンショウウオでも過去に実施され、それなりの日数と距離を追跡できていたのですが、あと一歩で越冬場所などを完全に明らかにするまではできず、悔しい思いをした記憶があります。」
それ以降、予算や時間の関係で進めることができていなかったそうですが、次年度は再び発信機による追跡調査にチャレンジしてみようかという話も出たそう。何かもっと効率的にできる方法が見つかれば良いのですが・・・。
※写真は照井滋晴氏からお借りしました。
※音声はこちら・・・https://open.spotify.com/episode/6Bg8VKn0alDM67rjxZXIL9

海の生き物たちの今は、私たちが招いたもの・・・(笹森 琴絵編) [nature treasure]

1  アホウドリの仲間 コアホウ 笹森.png2  コアホウとアホウドリ 笹森.png3  アホウドリの仲間 クロアシアホウドリ 笹森.png
4 ザトウの頭上を舞うコアホウドリ釧路沖 笹森.png「海を見続ける者として伝えたいことは素晴らしさや美しさなど多々あるが、残念ながらそれだけではない。
今では、汚染や水温上昇、中でもプラスチックごみの内容を外すことはできない。」
去年、12月18日付け北海道新聞の一面に大きく掲載されたコアホウドリの記事を読んだ方もいらっしゃるはず・・・北大などの研究チームが2014~18年に小笠原諸島周辺で回収したコアホウドリ約100羽の死骸のうち、9割の胃からプラスチック片が見つかったという内容。
実は釧路市沿岸でも、ゴム手袋を飲み込んだコアホウドリが発見され、別途報道されています。
道内への海洋ごみの漂着量は国内で最も多く、専門家は「北海道を含む日本近海でも海洋ごみの問題は深刻化している」と指摘しているそうです。
コアホウドリは、アホウドリの仲間。小さいアホウドリという名がついているが、翼を広げると2mほどになる巨鳥。繁殖期以外は海上で生活し、北緯20~60度の北太平洋、ベーリング海に分布。
羽毛採取のための乱獲や、繁殖地の消失、延縄漁などの漁業による混獲でアホウドリと同様、絶滅すれすれなのだとか・・・。
実は釧路沖は、アホウドリ、コアホウ、クロアシと、アホウドリの仲間3種全てが集う海なのだそう。
中でもコアホウとは、私たちの秋の釧路沖調査では毎回、出遭ったとおっしゃっていました。
「海面を軽やかに走って風を掴み、ふわりと風に乗ってグライダーのように滑空する優雅な姿を見せてくれる。一見カモメ風だが、目の周りにサングラスをかけたような模様があり、何より体の大きさがカモメとは全く違います。」
餌は海面に浮いている小魚など。そのためレジ袋やプラスチック片、たばこのフィルター、ゴム手袋の破片などが浮いていれば、イカや小魚と間違えて呑み込んでしまうのです。コアホウドリなどの海鳥と同様に小魚などを餌とする鯨類や鰭脚類、さらには餌となる生物もまた、同じ状況に巻き込まれているということ。海では全てがつながり巡るのです。
私たちは今、自然な状態の千倍もの速さで絶滅が進み、生物多様性が急速に失われる、第六の絶滅期を生きているといわれているそうです。その原因は、温暖化やゴミ問題、各種汚染などの人間活動。「私などは、私たちは人間だけの地球にしようとしているのだろうか?と疑ってしまう時があるんです。でも、人間と他の生き物とは一蓮托生。同じ地球で、自然界や生物から恩恵を頂き続ける人類の一人勝ちなどということはありえないのです。」
ゴミの漂着量は国内最多。また、温暖化が原因とみられる気象の激甚化、食べなれた魚が食卓から消えるなどの異常事態がすでに身近で起きています。さらに、ゲリラ豪雨、どか雪、猛暑なども皆さんご存知の通り。海を取り巻く問題は科学者らの予想を遥か超えたスピードで進んでいると言っているそう。これに対する社会の動きが後手後手に回っているのは、素人目にも明らかです。「激変する現実に手をこまねき、そこから目を背けて、これまでと同じ価値観で同じ生活を続けようと、過去にしがみついている私たちを置き去りにして、時間と事態はどんどん進んでいきます。海の変化を目にしている私としては、ひたひたと押し寄せる激動を感じ、身がすくむ思いがします。」
※写真は笹森琴絵氏からお借りしました。
※音声はこちら・・・https://open.spotify.com/episode/2MJ7ulpFr65FBcgFuu9MZA

鳥インフルのことなどなど・・・(齊藤 慶輔編) [nature treasure]

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鳥インフルは今シーズンもたくさん発生しました。今回はタンチョウが死んで発見されることが多かったと。
あまりにもタンチョウが多く運ばれるので、現場はどんな感じなのか出かけてみたそうです。
そこに広がったのは多くのカモとタンチョウがデントコーンを一緒になってついばんでいる姿。
確かに多くのウイルスが広がる・・・感じです。
ただ、今回、オジロワシがどうやら野生復帰できそうだと(収録時)。現在はリハビリ中とおっしゃっていました。
治すことができて良かった・・・・・という単純なお話しでもないのです。
治ることがわかると、次回から全ての鳥においてそれが適用できるかというと・・・・・そう簡単な問題ではないということ。
そして・・・今年もまた鉛中毒の個体が見つかりました。胃の中からこんな大きな鉛が。いつになったら鉛弾を飲み込む鳥たちがいなくなるのでしょう。
北海道ではもうすでに20年以上前から鉛弾は使えなくなっているのですが・・・
※写真は齋藤慶輔氏からお借りしました。
※音声はこちら・・・https://open.spotify.com/episode/0J2m8jwzuuJWm9kf7OxEvV

マリモの授業(尾山 洋一編) [nature treasure]

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マリモ研究室では、マリモを未来に残すために3つのことが重要と。一つ目はマリモの調査研究。マリモがどのような暮らしをしているのか、どういった環境を好むのかなど、マリモのことを知ることがとても重要。二つ目はマリモの保全活動。調査や研究で分かったことを参考にして、マリモにとって暮らしやすい環境を整えたり、支えたりすること。そして三つ目は普及啓発。マリモのことをたくさんの人に知ってもらい、マリモを未来に残すことの大切さを理解してもらうこと。
今回は普及啓発に関わるお話し。まずは、阿寒湖の児童生徒を対象としたマリモ授業について。現在の阿寒湖義務教育学校は、昔からマリモの授業が学校のカリキュラムに含まれているそうです。1994年から毎年5月に、マリモの暮らす阿寒湖北部のチュウルイ湾に行き、船の上からマリモを観察する学習会が開かれています。阿寒湖の中学3年生、現在は義務教育学校の9年生は、卒業を迎える3月に氷の下のマリモを観察する授業を受けるそう。マリモのいる場所の氷をチェーンソーで2m四方切り出し、その下のマリモを観察。阿寒湖は高校が無いので、子供たちの多くは卒業後に阿寒湖を離れてしまう。故郷の自然の素晴らしさを忘れないでほしいという思いから1997年から始まった授業とのことです。
また、最近は、釧路市内の小学生や高校生を対象にマリモの授業をさする機会があるそうです。
11月には釧路湖陵高校の1年生が、スーパーサイエンスハイスクール事業の一環で現地でマリモ生育地巡検や、室内でのマリモ授業を受けたそう。顕微鏡でマリモを観察したり、細胞内の組織を見たりしたとおっしゃっていました。さらに、12月には釧路市立昭和小学校の3年生を対象としてマリモの授業を。
マリモって知ってる?と聞くと、ほぼ全員が知っていたそうで、クラスに4~5人はマリモが家にあると言っていたそうです。マリモを見たことがある人は8割くらいということで、研究で使い終わった阿寒湖のマリモを持って行っていたので、触ってもらったり、においを嗅いでもらったりしたそう。
「授業の最後で質問コーナーを設けたら、時間がオーバーするくらいたくさんの質問をもらったので、少しは興味を持ってもらえたかなと思います。なんと!クリスマスプレゼントでマリモをもらう、という子もいたのでびっくりというか嬉しかったです。」
※写真は尾山洋一氏からお借りしました。
※音声はこちら・・・https://open.spotify.com/episode/7JVtAhp5htIS6kZQdjUG9s

キタサンショウウオの冬の乗り切り方(照井 滋晴編) [nature treasure]

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キタサンショウウオのような両生類は、こんな寒い時期にはまったく動かず、というよりは動けず・・・じっとして春の訪れを待っています。
では、どんなところでじっとしているのでしょう?「 過去の観察記録では、ヤチボウズの中や防風林のコンクリートブロックの下、大きな石の下、大きな倒木の中や下、ヤチハンノキ林の根元などと報告されています。」 照井氏は10年以上前、教育大学の後輩と一緒にキタサンショウウオに発信機をつけて、その発信機から出る電波を頼りにサンショウウオを探すという研究をしていたことがあるそう。その際にヤチボウズの中に入り込んだ越冬中かな?と思われるキタサンショウウオを確認したそうです。ヤチボウズの中とは言え、確実に氷点下まで温度が下がるのに、よく生きていられるものだと思った記憶があると照井氏。
実はそれはいらぬ心配で、キタサンショウウオを含む両生類は意外に寒さに対する抵抗力をもっているそうです。キタサンショウウオは日本よりも北に位置するロシアにも広く分布していますが、当然ロシアの冬は日本よりも厳しいもの。ロシアでの研究成果ではキタサンショウウオは-50℃もの低温下でも生存する能力を持っていることが明らかになっているとおっしゃっていました。
では、なぜそこまでの低温に耐えることができるのでしょう?例えば哺乳類のヒグマの場合、冬になると冬眠穴の中に入ってあまり動かずにエネルギー消費を抑えて冬眠します。冬眠中は飲まず食わずで心拍数や呼吸数を低く保ち、体の脂肪を代謝しながら過ごすのです。この時のヒグマの体温は通常の状態よりも4~5℃程度下がるだけで、32~33℃をキープしているそうです。これが可能なのは、ヒグマが高度な体温調節能力がある生き物だから。キタサンショウウオなどの両棲類は体温が外気温に左右されてしまうので、外気温が氷点下まで下がればそれに応じて体温も低下します。そして、体温が0℃以下まで下がれば体内の水分が凍り始めてしまうはず。でも、実際にはそうはならないのです。「そのメカニズムですが・・・ まず、キタサンショウウオは冬に向けて肝臓でグリコーゲン(糖質)を合成します。越冬場所の温度が氷点下まで下がった時、このグリコーゲンは、グリセロールという物質に変化して、細胞の内部を含む体内のあらゆるところに浸透。これがとても大事。
普通の水は0℃以下で凍結。ですが、塩を混ぜた水は0℃では凍結せず、もっと温度を下げなければ凍結しません。糖分も同じ働きをするそう。体内に糖分を浸透させることで、体内の水分は不凍液のようになり、キタサンショウウオの体内が0℃以下に下がっても凍結しない状態になるのです。その結果、細胞の縮小と死滅を防がれ、-20℃、-30℃の寒さでも体内を凍結させずに生命を維持することができるようになり、釧路湿原の寒い冬をやり過ごすことができるということ。
ちなみに釧路周辺にも分布していて、日本でポピュラーなアマガエルも凍結に対する抵抗性を持っていることが研究の結果明らかになっているそうです。「静岡大学で耐寒性を確かめる実験が行われました。アマガエルを-40℃で6時間凍結させた後、室温で1時間解凍した場合にどれくらいの個体が生き残るかというもの。結果としては、80%以上の個体が生き延びたのです。アマガエルがキタサンショウウオのような凍結耐性を有する種であることが明らかになりました。そのメカニズムは、キタサンショウウオと同じで、血中のグルコースやグリセロールの濃度が高まり、血中糖度が上がることで不凍液のような役割を果たし、冬期の氷点下の環境をじっと耐えることができるようになるのです。」同じ機能を持つ両生類は海外でも確認されていて、両棲類の寒い冬の乗り切り方としては一般的な方法のようです。ただ、中には冬越しをできずに死んでしまう個体もいるそうで、やはり寒い冬というのはキタサンショウウオにとっても重大な試練なのだろうと照井氏はおっしゃっていました。
※写真は照井滋晴氏からお借りしました。
※音声はこちら・・・https://open.spotify.com/episode/1AyDsyIb3yZhdtwfwE1asy

2023年鯨類界そうまくり(笹森 琴絵編) [nature treasure]

笹森① ザトウと釧路.png笹森② マッコウと釧路.png笹森③ キタオットセイ.png
昨年1年を振り返って、何より印象に残ったのは、春に知床羅臼で起きたシャチへの過干渉。
SNSに載ったのを契機に様々な感想が出て、笹森氏も属する日本クジライルカウォッチング協議会が適正な距離を保つこと、人間側からの過ぎた干渉を否定し、非難する旨の声明を出す事態になったこと。
ただ、それで一件落着ではなく、そこからが重要。「これは、私たちにとっての懸案事項の野生動物との付き合い方、距離感について、改めて自制が必要と強く感じる出来事でした。私たちの協議会は、ウォッチングという事業を教育的で環境保全に寄与し持続可能なものにしたいという目的を掲げて設立。野生の鯨類に過剰接近したり飼育下の動物のように扱ったりすることを決してしない、また断固として反対することを基本姿勢としています。シャチを常識的、倫理的に色々な見方が見解もあると思いますが、そういう立場からも、今回は決して軽視すべきでないと感じました。同時に、協議会に名を連ねている団体・組織・事業者全員で鯨類観察方法について見直す上で、とても良い転機となったと私自身は感じています。結果論ですが・・・。」
また、夏にマッコウやイルカの大群、オットセイ等が思いがけない場所に出現、相次いで報道されました。さらに、遊泳場で人と交流するイルカも話題になりました。
イルカが現れた当初は、可愛らしく楽しい遊び相手として歓迎され、たくさんの方がビーチを訪れて一緒に泳いだりしていました。フレンドリーで可愛らしいイメージのイルカも、実は人間の思い通りになる都合の良い遊び相手では決してないという事が次第にあらわに・・・。噛みつかれたり、尾びれで叩かれたりする人が出てきて、危険生物として扱われ嫌われものに。でも、そのようなイルカの行為は、そもそもは背中にのし上がったり、背びれや尾びれを掴んだり、人間の方が過剰な接触を行ったことに始まったのではないでしょうか。相手は野生動物。私たちの価値観や感覚、期待や妄想で都合よく行動したあげく、何かいざこざが起きた時には、その結果を負わされるのは野生動物であることを忘れないでほしいと笹森氏。「とにかく、イルカや鯨がいても、生きていても死んでいても、決してうかつに近づいたりしてはいけないことを忘れないでほしい。」
さらに、11月17日に釧路町のオシャマップの漁港にザトウが迷い込み、話題になりました。「私たちの調査でもザトウクジラは、毎年10〜11月に釧路沿岸ではなく沖合で遭遇していました。つまり、いるのが自然な種なんです。ただし、港に入ったというのは、少なくとも北海度沿岸では見たことも聞いたこともありません。夏の餌場のアリューシャンなどから、繁殖域で越冬域の小笠原や座間味、さらに南方の温かい海へと南下のために通過していくだけなので、長くても数日でいなくなるのです。基本的に北の餌場を離れたら戻るまで断食する。南下の目的は繁殖。直前に大しけが続いたこと、そのあたりはシャチが闊歩する海域であること、これらなどで、何かから逃げているうちに、港に迷い込んだかもしれない。でも本当のところはわかりません。」
最近は、気象と同様、水温だけでなく海象も激化しています。それにより、鯨やイルカが大時化で遭難したり、迷い込んだりといった目に見える変化はもちろん、思わぬ行動変化も・・・。例えば、水温変動で餌とする生物の分布状況が変われば餌場はもちろん、繁殖や子育て海域も換えることを余儀なくされる種も出て来るかもしれないし、すでに起きている可能性もあります。実際に小笠原や沖縄に冬に来遊するザトウは、伊豆諸島辺りに越冬域を変える個体もいるそうです。緯度が高いほど、温暖化の影響は顕著だと言われていますが、北海道も昨夏の暑さは異常と感じた方が多いと思います。当然、その変化は海も同じ状況です。「今後も人間活動が原因でクジラ、海の生き物たちが脅かされる事もあるでしょう。クジラの姿を通して見える海の変化も・・・。今後も彼らから目をそらさずにいたいと思います。」
※写真は笹森琴絵氏からお借りしました。
※音声はこちら・・・https://open.spotify.com/episode/5QLvT05VpiOQsW942d4rY3

最近の出来事(齊藤 慶輔編) [nature treasure]

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IMG_8816.jpg年末年始はいつも忙しいと以前にもお話しを伺いましたが、
今年はとにかくワシやタンチョウの交通事故が多かったそうです。
さらに命を落としてしまっているもの、重症のものが多いとか。
タンチョウが交通事故?出会い頭の事故?ではなく・・・・・
どうやらタンチョウが逃げるだろうと思っていてぶつかったみたいと。
鳥は飛んで逃げていく・・と思っている方が多いと思います。
ただ、車を危ないものとして認識しているかというと?
人間が車から降りるとそれは逃げるそうですが、車は物体として認識している?であれば話は違います。
さらに彼ら、カラダの大きな鳥はすぐには飛ぶことができません。
この北の地に生きている私たち人間も、彼らのことをもう少し思いやる気持ちを持ち、
不幸な事故がこれ以上増えないように願うばかりです。
やはりエサが少ないということがその根底にはある事も忘れてはいけないと思います。
その原因を人間が作り出しているとしたら・・・。
※写真は齋藤慶輔氏からお借りしました。
〜国道脇でエサに夢中になっていたワシ。近寄っても逃げず、窓を開けて声を出したらやっと飛んだそうです。
※音声はこちら・・・https://open.spotify.com/episode/1SxMZZN1Yck9vcPgZ21fBi

今おすすめしたいこの1冊(笹森 琴絵編) [nature treasure]

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エリック・ホイト氏が書かれた「プランクトニア」今春発刊され、日本語版も。邦題は「プランクトンの世界」地球の生態系を支える海中の奇妙な宝石たちの写真と解説です。エリック氏は1950年生まれ。科学者。海洋生物学者。クジラやイルカの調査研究、海洋生物の保護に尽力してきた方。自己紹介では、Whale researcher, ocean lover, runner, father, author。笹森氏にとっては1997年に室蘭のフォーラムにお越しいただいて以来ずっと親友であり、師であり、お兄さんの様な存在と。
彼は、母校のマサチューセッツ工科大学で教鞭を執り、その後アメリカ国立科学財団の博士研究員。
IUCN SSC / WCPA海洋哺乳類保護地域タスクフォース共同議長。環境教育とホエールウォッチングの高品質化のために長年尽力されてきた方だそう。また、IUCNの海洋保護の強化チームで、海域を保護する重要な仕事もなさっているそうです。著書も今までに20冊以上。供から大人まで楽しめる、バラエティーに富んだラインナップで、豊かな好奇心と確かな知識・科学的データに基づく内容を、生き物に対する理解と愛情に満ちたわかりやすい言葉で伝え、世界中に読者がいるのです。「今回のプランクトンの世界は、見て楽しい、読んでうなる、多彩な内容がこれでもかと詰め込まれています。シンプルだったり複雑だったり、多種多彩な疑問やニーズに応える内容だと私は感じました。」 例えば・・・昼は深海で、夜は浮上して一日を過ごす、謎に満ちたその生態や、ベールに包まれていた他の種との複雑な相関関係など、知的好奇心を満たしてくれる知識が満載。また、気候変動や人間活動がプランクトンをはじめとする海の生き物全般に与える影響に焦点を当て、彼らが直面する問題についてインパクトある解説が施されている。さらに、世界で活躍するカメラマンたちが体をはって撮影した目を見張るような写真がページをめくるたびに次々に現れ、海が作った芸術作品のような動植物プランクトンの姿を海に潜らずして楽しめるという贅沢感が味わえる。・・・等々。実はこの本は、アメリカのジャーナリスト&著者協会(ニューヨーク)から、2023年若い大人と子供のための優れたノンフィクションブック部門で最高賞を授与され、<科学、歴史、写真がこのビジュアル的な見事な本で、豊富な教育体験を提供するために科学、歴史、写真をたっぷりと組み合わせたもの>と高く評価されているそうです。
ここでエリック氏がプランクンを愛し紹介したいと考える5つの理由を・・・。
1)私たち自身も海から出てきて、プランクトンと共通の祖先を持っていること。
2)植物プランクトン(植物プランクトン)は、私たちが呼吸する酸素の最大50%を生成している、つまりプランクトンは人類の生存に関与していること。
3) クジラ、魚類、海洋無脊椎動物の助けを借りて、プランクトンは炭素を固定して安全に貯蔵し、大気中から遠ざけて地球温暖化の影響を軽減している。つまりプランクトンは、地球温暖化との闘いにおける私たちの最大の味方であること。
4)プランクトンがいなければ、シロナガスクジラの餌も、ザトウクジラが歌う歌も、海に魚も、全ては存在しえないこと。
5)プランクトンは楽しくて、色とりどりの光が点滅し、奇妙なヒレや触手があり、不思議で美しいが、とても小さいので気づかないこと。
最後に・・・彼からのメッセージをここでご紹介させていただきます。
「プランクトンは進化の驚異を繊細で複雑なディテールで表現しています。高解像度のマクロレンズを装着した夜の海のダイバーによって、ようやく彼らの姿が明らかにされるようになりました。海のプランクトンは、すべての生命の生存に欠かせません。 この非常に小さく、気づくのが難しく、奇妙に美しい生き物についてもっと知りたい方は、エリック・ホイトの「プランクトンの世界」をご覧ください。」この季節、夜長にプランクトンの素晴らしい世界に引き込まれてみませんか?
笹森2 ザトウ.png笹森3 ミンクとミズナギドリ.png
※写真は笹森琴絵氏からお借りしました。エリック氏の写真はご本人からの提供です。
※音声はこちら・・・https://open.spotify.com/episode/70pBVL19TFcxUnmaKQiFBc

鳥インフル・講演会・クラファン・・(齊藤 慶輔編) [nature treasure]

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非常に疲れた様子でスタジオインの慶輔獣医。
「今年は異常だよ。毎日、鳥インフルエンザの検査に明け暮れている感じです。もちろん防護服をきて、息ができない感じの防護マスクをつけて・・・」
カモやカラスではなく、タンチョウにいきなり出たのが不思議。しかも道東・・・と。
いきなりクマタカ、タンチョウ、ハクチョウ等・・・こんなことは今までなかったとおっしゃっていました。
今後どう対処していくのか?検査と会議の連続だそうです。予防策がなかなか見つからない。一つには給餌方法をかえることも考えていらっしゃるそうですが・・・。
話は変わり、そのようなことを含めて大学の講演会で話しきたそうです。母校大学での講演でしたが、高校生もいらしたので、野生動物を相手にする獣医は、ただ治すだけではなく、それ相当の覚悟がいることを伝えていらしたそうです。
「今年もクラウドファンディングを始めました。今まで皆さんにご協力いただきたいと話していましたが、違うと思ったんです。協力ではなく皆さんにも参加してほしい!そう思っています。」
※写真は齋藤慶輔氏からお借りしました。
※音声はこちら・・・https://open.spotify.com/episode/1fZFL0E1TT5jTn4xt8GFc7

マリモ研究情報〜マリモにとって理想的な水温環境〜(尾山 洋一編) [nature treasure]

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今年の10月にマリモの最新研究成果が論文で公開されました。神戸大学、神戸大学附属病院、北見工業大学、釧路市教育委員会との共同研究でタイトルを和訳すると「巨大マリモの理想的な水温環境」
そこで分かったことは主に3つと。マリモは大きくなるほど成長が早くなること。水温が高くなるとマリモが痩せてしまうこと。そして、約35年前と比べてマリモの厚さが減った可能性があること。
まず、「マリモは大きくなるほど成長が早くなること」について。具体的には、直径5cmのマリモが10cmになるのと、直径15cmのマリモが20cmになるのを考えた場合、どちらも5cmの成長ですが、5cm〜10cmに成長するのは約6.6年に対し、15cm〜20cmに成長するのは約4,6年と、2年ほど早いと計算されたと・・・。
また、マリモの年齢を計算できるようになったそうです。例えば、直径5cmのマリモが0歳だとすると、直径20cmのマリモは14歳から18歳くらいであると計算できるとおっしゃっていました。
次に、「水温が高くなるとマリモが痩せてしまうこと」について。直径15cmのマリモを水槽に入れて、暗い場所に約290日間置き、水温はずっと測定。また、マリモは定期的に取り出して医療用のMRIで密度が減っているかどうか計測。そうすると、実験期間中にマリモの密度がどんどん減っていることが分かったそう。さらに、密度の減るスピードは積算水温と関係していることが分かったそうです。
そして、「約35年前と比べてマリモの厚さが減った可能性がある」について。積算水温が高いほどマリモが痩せるということが分かったので、約35年前のマリモ生育地の水温データから、当時のマリモの厚さを推定。その結果、約35年前のマリモは厚さが約4,7cmと計算されたのに対し、近年では厚さが約3.7cmと計算され、1cmほど厚さが減っている可能性が示された。約35年前の夏の最高水温は約23度、現在は25℃から27℃の間を推移していて、今年は27.5℃と非常に高かった。このような水温の違いが、マリモの厚さに現れている可能性が示されたということ。マリモは寒い場所が好きな生き物なのは分かっていたのですが、水温が上がるとどのような影響を受けるのかが具体的に明らかとなったのです。マリモは薄くなって密度が下がると、壊れやすくなったり、強風で打ち上がりやすくなったりします。温暖化の影響で今後も水温が上昇していくと、マリモにとっては厳しい環境になるかもしれないのです。
※写真は尾山洋一氏からお借りしました。
※音声はこちら・・・https://open.spotify.com/episode/3DSf85Y1osUDn2itnD65Qf