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ストーリーからおう〜小鍛冶(中西 紗織編) [varied experts]

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IMG_5857.jpg 今回は《小鍛冶》をご紹介いただきました。
天下一の刀剣とそれを鍛え上げる二人の登場人物がいわば主役といえるとのこと。
能《小鍛冶》は前場・後場ともに変化に富んだ、見どころの多い能です。
この刀には名前があり「小狐丸」といいます。前場では稲荷明神の化身がシテで童子、少年の姿で登場します。
後場では稲荷明神の姿となって後ジテが現れ、刀鍛冶の名工(この人がワキ)と二人で力を合わせて刀を鍛え上げ、
霊験あらたかな名刀が誕生する内容です。
能《小鍛冶》・・・作者不詳
登場人物・・・・・前ジテ:童子 後ジテ:稲荷明神
         前ワキ:小鍛冶宗近 後ワキ:同人 装束を変えて再登場
         ワキツレ:勅使    アイ:宗近の下人
場所・・・・・京都三條粟田口小鍛冶宗近の屋敷
季節・・・・・季不知(不定)(曲柄:五番目 略初番目物)    
●勅使(ワキツレ)登場、勅諚を述べる:ワキツレの勅使が出てきて名乗ります。「これは一條の院に仕え奉る橘の道成にて候」と。
そして三條小鍛冶宗近に帝の勅諚を伝えに行くところだと語ります。一条天皇(980~1011 在位986~1011)は平安時代の実在の人物。
●勅使は宗近の邸へ勅諚を伝える:一条天皇に仕える勅使は宗近(ワキ)の邸を訪れ、直接勅諚を伝えます。帝が不思議な夢を見、宗近に剣を打たせよとお告げがあったと。
宗近は当代一の刀鍛冶の名工、優れた職人です。ですから勅命が下ったというわけ。帝の命ですから「喜んで」となるはずですが、宗近は大変困った様子。
なぜなら自分と相槌を打てるほどの名人がいない。相槌役の名工がもう一人いないと、帝の意向に値するような刀は作れないという事なのです。
●前ジテ登場:宗近がふと思い出したのは、「あ、私の氏の神、つまり氏神さまは稲荷明神だった!これから直ぐにお稲荷さんにお参りしてお願いしてみよう」と。
宗近が一心に祈っていると、「なうなう あれなるは三條の小鍛冶宗近にて御入りそうろうか」と呼びかける声が。不思議な童子、前ジテが呼びかけてきました。
宗近は驚いて「私を名指しでそんな風におっしゃるあなたはどういう方なのですか」と聞いてみます。
すると、「帝から剣を打って持参しなさいという命がありましたね」と、勅諚のことも知っているのです。宗近はさらに驚き「返すがえすも不審なり」と解せない様子。
●前ジテは故事を引き刀剣の物語をする:昔々……と語り始めた童子は、中国と日本の故事を引いて、霊力をもつ剣の話をします。
我が国では、日本武尊の東征、東の方の蛮族をたいらげたという武勇伝が語られます。敵が四方を囲んで火をかけてきたというのです。そこで日本武尊は剣を抜いて燃える草を薙ぎ払ったと。剣の精霊は嵐となり敵の方へ炎は吹き返されて、ついに敵は滅ぼされたのでした。この霊力あるモノスゴイ剣が、有名な草薙の剣なのです。
その様な故事を勢いよく堂々と語った童子は、祭壇をしつらえて私を待つようにと言います。「通力の身を変じ必ずその時節に参り会ひて御力をつけ申すべし」
つまり、神通力を持つ存在としてその時に現れお力添えをしましょうと言うのでした。そう言うと童子はいつの間にか姿を消します。
●中入り 狂言の語り: ここで中入りとなり、ワキの宗近も一旦退場。アイの宗近の下人が現れ、剣の威徳を称えた物語を改めて語ります。
●一畳台が運び込まれる:いよいよ後場、しめ縄が張られた、一畳台が運び込まれ舞台の正面先のところに置かれます。これが祭壇。
その上に刀を鍛えるための台と槌、そしてこれから鍛えられる刀身がそこに置かれています。宗近は風折烏帽子をつけ正装して再登場します。
●後ジテ稲荷明神登場:神聖な場所で宗近が祈りながら舞っていると、稲荷明神が姿を現します。頭に狐をいただいた冠がのっています。稲荷明神は登場すると囃子の音楽にのり勇壮に舞います。稲荷明神は宗近に向かい、膝をついて深々とお辞儀をする、とても感動的な場面。
●稲荷明神の相槌によって刀が鍛え上げられる:一畳台に宗近と稲荷明神が乗り、二人で交互に相槌を打ちながら刀が鍛え上げられていきます。「表には小鍛冶宗近と打つ」「小狐と裏に」表と裏に二つの名が刻まれた名刀「小狐丸」が完成します。天下一の名工の技と稲荷明神の神様の力が込められた剣です。
完成した剣は無事勅使に捧げられ、めでたしめでたし。それを見届けると、稲荷明神は雲に飛び乗り空を飛び、瞬く間に稲荷山へ帰っていくというエンディング。
見どころも多く、爽快感たっぷりのわかりやすい物語で、歌舞伎や文楽にもなっているという事です。

2022.1014 O.A 「芸術の秋堪能!!」 [varied stories]

菊田真寛さん(会社役員)

東京の美術館巡りpart2、プラス、乗り物好きの菊田氏が初めての成田空港近くの航空科学博物館に行かれたお話しです。
日本黎明期の日本経済発展に貢献された財閥である三井家の三井記念美術館、同じく財閥の住友家所蔵の美術品が展示されている泉屋博古館東京。
そして、東急の創業者である五島慶太氏の古美術を展示している五島美術館。さらに東京芸術大学大学美術館を巡ったそうです。
まず、五島美術館では「禅宗の嵐」という展覧会。鎌倉時代に本格的に伝来した禅宗の高僧の墨蹟、写経などが多数あったそうです。
彼は書道を少し習っているので、禅宗の墨蹟に興味があったそう。
鎌倉時代の蘭溪道隆の「風蘭」という全紙での勢いのある作品が印象的だったと。強くキビキビした筆跡に勢いを感じます。
東京芸術大学大学美術館では、「日本の美術をひも解く」という展覧会、伊藤若冲の代表作である国宝「向日葵雄鶏図」が強烈。
また、日本一有名な鮭、高橋由一の「鮭」。それをモチーフにした「KIRIMIちゃん」グッズも販売していたそうです。
「北海道人としては写真しか観たことありませんでしたが、実際に観ると、なんとも味わいと本物感があり、好きになりました。」
三井記念美術館では、リニューアルオープン第二弾「茶の湯の陶磁器 景色の愛でる」重要文化財の茶碗、楽焼黒茶碗(雨雲)が素晴らしかったとおっしゃっていました。
「以前から焼き物、陶器には興味がありました。この茶碗、形はすこし歪みがあるのですが、黒楽焼という温かみを感じる実に素晴らしい茶碗と感じました。
三井総本家に伝わった光悦の名作とのことです。」
泉屋博古館東京の「古美術逍遥 東洋へのまなざし」では《線刻仏諸尊鏡像》国宝をじっくり鑑賞。
直径15cmほどで、白銅の鏡(8枚の花弁のような縁をもつ鏡)です。釈迦如来が彫刻されていて実に綺麗で繊細な作品だったそうです。
「国宝や重要文化財を直で観る機会がなかなか無いのですが、そのチャンスに恵まれ鑑賞しました。それぞれが凛とした感じがしたり、色や形など、吸い込まれる感じが
する作品もありました。古美術品のいわゆる本物を直で見ることができて嬉しかったです。素人でも素晴らしいと感じました。」
最後は自動車、飛行機を観ることが大好きな彼が、一度行ってみたいと思っていた成田空港近くの航空科学博物館へ行ってきたというお話し。
国産旅客機、YS-11など展示されていたそう。「何がすごいかというと、成田空港から離陸する旅客機の離陸直後の音と姿を下から見ることができるのです。
音を聴きに行ったと言っても過言ではないかも・・・。」なんて。あらためて、すべてにおいて、本物をみること、聞くこと、大事だなと感じたそうです。
※写真は菊田真寛氏からお借りしました。
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