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2024.0207 O.A 市立釧路総合病院 院長 森田研氏 [close to you <dr.編>]

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釧路は以前から地震の多い地域として知られ、1990年代の釧路沖地震から定期的に災害に見舞われています。市立釧路総合病院は昭和59年に建築された当時の建築基準で、比較的新しい「耐震建築」の基準を満たしていて、大規模な損壊は1993年釧路沖地震・2003年の十勝沖地震でも経験していないそうです。
災害により病院の機能が一部でも影響を受けたのは、最近の5年間では・・・
・2018年9月6日 北海道胆振東部地震のブラックアウト(全道停電)
・2020年6月5日 送電線の落雷による瞬電による影響
・2021年9月6日 近隣の高圧電線の断裂による病院停電
ブラックアウトは全道で停電したので、釧路では地震などの直接被害が無い状態で電力だけが止まり、生活上もガソリンのくみ上げが出来なかったり、通信機器の障害が起きました。発災が早朝4時、病院の使用電力が少なく、この時は自家発電装置が無事動き、かつ消費電力が少ない状態から稼働を始めたため、当日の外来や入院・手術を延期できるものは延期し、緊急で必要な医療のみに電力使用を限定することで乗り切ったそうです。
また、2020年6月5日は地震ではなく、大雨・天候不良に伴い、十勝地方で釧路への送電ケーブルが落雷により瞬電(電力の急激な変動により停電はしないものの医療機器に影響が出る)を起こすということが・・・。これも時間帯が早朝で5時頃、通常診療には影響が少なく、維持電力で通電していたMRI装置の電磁ブレーカーが故障したため、そのMRI装置が使用できなくなるという被害だったと。MRI装置は電力使用量が最も大きい医療機器の代表格、強力な磁場を作るために大量の電力を必要とします。ブレーカー自体も修繕に多額の経費と時間を要したとおっしゃっていました。現在の病院は電子カルテをはじめ多くのIT機器が常時動いていて、停電や瞬電で影響を受けます。大きな電力を必要とする医療機器を如何に把握して停電時に休止するかがカギに・・。病院ではその他に、CTや手術室、検査室、エレベーターなどで電力を使っています。自家発電装置は、重油や軽油を用いて発電を行い、48時間から72時間継続して電力を供給出来ますが。連続運転すると一旦止めたりして再起動する必要が。「幸いこれまではその間に電力供給が復旧しましたが、自家発電を一時停止するときにまた停電になるため、その時には人工呼吸器などが止まらないように、そのような生命維持装置には内臓バッテリーで30分から数時間の間は稼働が継続するような仕組みになっています。」
実際の病院の電力使用量は、夜間や早朝では、500kW以下の電力使用量なので、自家発電装置1台700kWの電力で賄えるそう。朝から外来や手術、検査MRIなどが稼働し始めると電力使用量が増加し、平日日中ピークの1400kWを迎えると、1台の自家発電装置では賄えないのです。
また、2021年9月6日、近隣の高圧電線の断裂による病院停電。月曜日の10:02という時間。直ちに自家発電装置を稼働させたものの、再開時の電力が自家発電装置の最大発電量より多かったため、再開直後にまた停電。この時、エレベーターやMRI、CTといった大容量電力装置を全て停止させ、スイッチを切り、もう一回自家発電装置を起動させ、事なきを得たそうです。その間、22分あまり、電子カルテも使用できず、外来はそのまま重症の方を除いて診療がキャンセル。
このような場合に大きな消費電力の医療機器のスイッチを止めてから電力再開を行うことが必要であることを学ぶ貴重な機会になったとおっしゃっていました。
電力以外に、現在の病院は隣の熱供給公社から蒸気ガスの供給を受けていて、これが止まると冬期間の暖房や滅菌装置、高圧ガス装置の駆動が出来なくなるそう。また、透析など大量の水を使用する医療機器の維持は水道の供給が止まるような大地震・津波被害があると、病院自体は水没しない高さにはあるものの病院機能は止まります。「自家発電装置による電力供給により緊急処置や入院中の治療を継続しながら、災害時の医療をどう展開するかについて、防災計画を立てておく必要があると実感しました。」発災時間帯が平日・休日の何時なのか、ということは診療密度にも影響するのですが、重要なのは病院を動かす人材が居るかどうかにも関係します。「今回の能登半島地震で得られた教訓を是非とも釧路でも生かしていくために、災害対策訓練を重ねていく予定です。」

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