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厚岸ホッカイエビの資源管理サクセスストーリー〜耳学問2(黒田 寛編) [fun science]

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「個人的には、NHKで昔放送されていたような<プロジェクト〇〇>番組で取り上げられても 良いと思う位の成功事例で、資源管理を徹底するというような精神論ではなく、きちんとした科学的な知見に基づいて漁獲や保護のルールを『自主的に』作り、それが成功したことは本当に評価されるべきポイントだと思うんですよ。」と始まった今回のお話し。
まず、厚岸のホッカイエビの年間漁獲量、2009年以前はほとんど5トンを超えることない不漁状態で推移していました。もう一つの注目点は、2007年の漁獲量はほぼ0トン。これはエビが全く獲れなかったということではなく、2007年のエビ漁の初日に、あるエビ漁業者が使用する加工場に衛生管理指導が入り、班長は2007年のえびかご漁の休漁を決定したことで、2007年の漁獲量がほぼ0になったそうです。
ただし、この2007年の一年間の休漁が大きな転機となるのです。当時の班長が、衛生管理を改善したほか、水産技術普及指導所を訪ね、科学的な知見に基づいたエビの生態や資源管理について学ばれたそうです。そして、2008年から資源管理のための改善策が実施されます。一つ目は、オスの小さなエビ(次の年にメスになる小さなエビ)を残すために、エビ篭の網目と漁獲されるホッカイエビのサイズの関係を漁業者が実験的に調べて、網目の幅を3.3cmにして、それまでよりも1cm網目の幅を大きくしました。二つ目は、エビ篭の数を、一人あたり250篭から50篭に減らしたことで、漁獲圧を下げる取り組みをしたこと。さらに三つ目は、操業期間を見直して、卵をもつメスを獲りすぎないようにしたこと。具体的には、操業期間を以前の5月1日~12月29日の8カ月間から6月20日~8月20日の2カ月間に縮めたこと。すごい決断だと思います・・・と黒田氏。さらに、それまでは「小」「中」「大」という出荷サイズの基準があったのを、「小」サイズは漁獲しないことから、「小」サイズを抹消したことも勇気ある決断だったと。さらにその後は「特大」というサイズが追加されます。その結果、ホッカイエビの漁獲はどうなったか・・・2008年や2009年(改善直後の1-2年)は、5トン未満で漁獲量としては大きく上がりませんでしたが、一方、1キロあたりの単価は1.5倍に。2006年以前は1キロ2000円前後が、2008年以降は1キロ3000円前後に上昇。そして、2012年以降は漁獲量も10トン以上で推移、高い資源水準と単価の高い漁獲が維持されているそうです。
「本当にすごいです。。。とにかく、強調したいのはこのような資源管理を、道や国(行政)から「やれ」と言われて実施したのではなく、漁業者の代表(班長)が考え、専門家の指南を得て、漁業者みんなの同意のもとで協力して資源管理に取り組んでいるところなのです。」
まだ、続きます。「さらに、徹底しているのは、2008年以降、漁期の前と漁期の後に、ホッカイエビの資源調査を漁業者自ら実施していることや、漁業者が操業日誌をつけ、その漁場情報を関係者で共有するなどの取り組みが行われていること。また、ホッカイエビを「大黒しまえび」としてブランドしたことも成功への重要なポイントになりました。」独り勝ちではなく、皆で勝つというこの体制が、共有の水産資源を管理するには大切なことで、なかなかできるようで、できないこととおっしゃっていました。自主的な資源管理がこれ以上ない成果をもたらしたわけですが・・・厚岸周辺のアマモ場は本当に大切な共有財産で、厚岸にそそぐ湿原河川、厚岸湖、厚岸湾があってはじめて成立する自然環境ということは忘れてはならない事実。厚岸湖と厚岸湾の間付近に位置する「あるアマモ場」の中には、全ての成長段階のホッカイエビが生息しているアマモ場もあり、このようなホッカイエビの揺りかごのような生息環境をどのように維持していくのか?が、今後の資源管理の重要なポイントになると黒田氏。いずれにしても、ホッカイエビを持続的に利用するためには、ホッカイエビを獲りすぎない資源管理に加え、厚岸周辺のアマモ場を守る必要もあり、そのためには陸域環境を含めた厚岸周辺の自然環境を大切するそんな取り組みが今後も不可欠であると考えられる・・・ということなのです。
※写真は黒田寛氏にお借りした資料です。
※音声はこちら・・・https://open.spotify.com/episode/7oPOuGRNaLoth6uK9LCADq

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