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海底ケーブルを利用した海底地震・津波のリアルタイム観測システム開発(満澤 巨彦編) [varied experts]

写真1:釧路沖、初島沖のシステムのパンフレット表紙.JPG写真2:相模湾初島沖シロウリガイ群集.jpg写真3:初島沖深海底総合観測ステーション.jpg
写真4:DONETの海底ケーブル(竹の子サンプル).JPG海の中は電波が使えないので通信には音波を使っています。
ただ、音波は潜水調査船「しんかい6500」と母船との間の水中通話のような伝送容量の比較的少ない通信、あるいは遅延、数秒の時間遅れがあっても我慢できる範囲では使えるのですが、長距離で高速かつ大容量の通信やデータ伝送を行うためには、ケーブルが使われています。海洋観測で使われるケーブルは海底ケーブルも含めて太いもので直径が3~4cm、深海で使われるのは直径2cm位で、それほど太いものではないそうです。
海底ケーブルは、初期、80年代前半位までは同軸ケーブルが使われていました。同軸ケーブルは今でも通信用の電線、例えばテレビアンテナからの引き込み線などに使われています。
その後、光ファイバが使われるようになり、伝送容量や伝送距離などが各段に向上し、海底ケーブルは、インターネットなどの情報ネットワークには欠かせないインフラになっています。
釧路沖では、JAMSTECが開発した「海底地震総合観測システム」が1999年に設置され、地震・津波の観測が行われているそうですがが、初期の頃はビデオカメラを使い海底の映像による観測も行われていたとのこと。
釧路沖の前段階として最初にJAMSTECが開発に取り組んだのは、神奈川県と静岡県に囲まれている相模湾にある初島沖。
初島は静岡県熱海市の10km程沖にある小さな島、さらに7~8km沖には関東大震災時の震源の一部になったと推察されている西相模湾断層があるのです。
断層周辺の海底では、地下から湧出するメタンや硫化水素をエネルギー源として生息しているシロウリガイという特殊な2枚貝が群集を作っています。
シロウリガイ群集が断層の活動と関係している可能性があるので、シロウリガイ群集を含めた長期的な変化を観測するため、ビデオカメラや照明用の水中ライト等を搭載した観測システムを開発。当時は世界で最も深い場所でも調査可能な11000m級の無人探査機「かいこう」が開発され運用が始まった頃。
「かいこう」は世界最深部の10000mの深海底に到達できる様に、約12kmの光と電気の複合ケーブルで深海に潜航し、ケーブルを介して海底の映像や水温などの環境データを取得。そのデータ伝送のしくみを初島沖の海底観測システムに適用したのです。
その後、これらの経験を活かし、より長い海底ケーブルを使い、室戸岬沖や釧路沖に「海底地震総合観測システム」の構築が進みました。
2000年代に入ってからは、海底観測に関してもネットワークという概念を導入することで線的な観測から面的な観測の可能性が検討され、その考えを実現するための基礎実験的なことを初島沖で実施。海底観測ネットワークという新たなシステム開発が進められました。それが、現在、陸上と同じ様に稠密で高精度の観測を南海トラフの紀伊半島から四国の室戸岬沖で実現している「地震・津波観測監視システムDONET」につながるのです。
※尚、写真は JAMSTEC 満澤巨彦氏からお借りしました。
・写真上(左)は釧路沖、初島沖の観測ステムのパンフレット表紙
・写真上(真ん中)は相模湾初島沖のシロウリガイ群集(水深約1170m)
・写真上(右)は相模湾初島沖「深海底総合観測ステーション」
・二段目の写真はDONETで利用されている海底ケーブルのたけのこサンプル(DONETは2016年に完成後、防災科学技術研究所に移管。)

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