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エゾサンショウウオ 幼形成熟って?(照井 滋晴編) [nature treasure]

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今回はエゾサンショウウオのお話し。全長11cm~20cm程度の小型のサンショウウオです。キタサンショウウオは14cm程度なのでエゾサンショウウオの方が少々大きめ。体色は、背面に金色のラインが入ったりするキタサンショウウオとは異なり暗褐色で目立った斑紋などはありません。決定的な違いは後肢の指の数。キタサンショウウオは4本、エゾサンショウウオは5本。エゾサンショウウオ、日本の固有種で、世界的にみると北海道のみに局所的に分布する種。そのため、国際的な希少性が非常に高い種なのだそう。対して、キタサンショウウオは、国内では北海道の釧路湿原域と上士幌町、北方領土の国後島に局所分布するのみで、非常に貴重な感じがしますが、世界的にみると、6か国にまたがって分布する、世界で最も分布域が広いサンショウウオとのこと。エゾサンショウウオは、周りに落葉広葉樹や針葉樹があり、湧水や沢水が流れ込む池などで産卵。釧路地方では4月上旬~4月下旬頃に産卵するのが普通です。卵嚢は水中の枯葉や枯れ枝などに産みつけられます。卵は、30~40日位で孵化し、13~17mm位の幼生が生まれます。この幼生には、孵化した年の7月中旬~8月下旬に変態・上陸するものと、幼生のまま越冬して翌年の春以降に変態・上陸するものがいるそうです。キタサンショウウオでは、幼生のまま越冬するようなことはほとんど起きません。 
戦前の話になりますが、白老町の俱多楽湖には、幼生の形態を保持したまま成体サイズに達し、成熟する幼形成熟個体が確認されていました。ただ、当時すでに湖に放流されていた養殖魚のヒメマスによる捕食圧によって数を減らし、1932年の発見を最後に絶滅してしまったと考えられているそう。
ちなみに幼形成熟のサンショウウオというとあまりイメージがつかないと思うのですが、実は気づいていないだけでご存じの方が多いはず。ペットショップ等で見かける機会もあるウーパールーパー、あれはメキシコサンショウウオというサンショウウオです。
そして本題。2020年、2021年に俱多楽湖と同じ胆振地方に位置するある池で、幼形成熟した個体が約90年ぶりに発見されたニュース。俱多楽湖の報告が100年年近くも前という事や発見者の方が研究半ばで亡くなり、残された資料も限られていたことから、エゾサンショウウオの幼形成熟現象を疑問視する声もあったようです。今回の発見で、エゾサンショウウオにおいて幼形成熟が生じることが改めて確かめられました。発見したのは北大の研究チーム。ただ単に成熟サイズのエゾサンショウウオ幼生を見つけて、大発見だと言っているわけではありません。大きいだけではなく、本当に成熟しているのかもしっかりと検証。繁殖期である2021年4月に採集された2個体から精液が放出されることを確認し、実際に精子が形成されていることを顕微鏡観察で明らかにしました。さらに、この精液を通常の成熟メスから得た未受精卵に塗り、受精するかを調べる事で、本当に生殖能力をもっているかを検討したのです。そこまですることで、本当に幼生の形態のままで成熟していることを証明し、約90年ぶりの大発見になったのです。ちなみに今回発見された幼形成熟個体はすべてオスだったそうで、メスは発見できていないそうです。
※写真は照井滋晴氏からお借りしました。

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